第51話 俺に主人公補正なんてものはない


 俺は無事に海と和解して恋人になり、連れ戻すことができた。

 だが、これには一つカラクリがある。

 

 ―――時を少しだけ遡る


 さて、物語の主人公ならこういう時、あいつがいるのは思い出の場所だ! なんて言って簡単に見つけてしまうだろう。

 だが、俺と海にはそんな思い出の場所なんてものはない。

 探しても探しても見つけることが出来ない焦る俺は、切り札を使う為に目的地に移動する。


 俺が向かった先は―――


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……ふぅー……女神様! 助けて下さい!」


 俺は神社に来ていた。以前と同じように御本殿に行き、目を閉じて二礼二拍手一礼をした。


「あっはっは☆ 困ってるみたいだねー☆」


 女神様の声が聞こえたので、俺は目を開く。


「はぁ、はぁ、はぁ……夜分遅くに申し訳ございません! どうかお力をおかし願えないでしょうか!」


「うんうん☆ とりあえず、息を整えようか? ほら、お水とタオルだよ」


 そう言って神様はどこからともなく、水とタオルを取り出し、俺に渡してくれた。


「はぁ、はぁ、はぁ……すみません、ありがとうございます」

 

 俺は水を飲みながらタオルで汗を拭く。


「あっはっは☆ いい飲みっぷりだね!」


「ふぅ……すみません、ありがとうございます。それで「まぁまぁ、そんなに焦らないの☆」……はい」


「それで、あれから楽しく過ごせているかな?」


「えぇ、海と時雨のおかげで毎日が楽しいですよ」


「そっかそっか☆ 毎日気持ち良さそうに搾られてるもんね☆」


「あー! そうですよ! なんで俺の転生特典が以前と同じくらい出せることなんですか!? もっとマシな物にして下さいよ……」


「んー? 別にそれが特典ってわけじゃないよ?」


「えっ、もしかしてちゃんとした特殊能力が!?」


「だから漫画の読みすぎー☆ 以前言った言葉覚えてるかな?」


「以前って……初めて会った時の『その体はあの子の体だけじゃなくて君の体でもある』ってやつですか?」


「そうそう☆」


「……? この体は、前の雪の体であると同時に俺の体でもある?」


「そうだねー☆」


「……いや、全然意味がわかりませんけど?」


「ふふふ☆ じゃあ答え合わせしちゃおうか☆」


「はい?」


「その体はね、前の雪君と今の雪君の体を混ぜて作った物なんだよ」


「……はい?」


「だーかーらー、前の雪君の体に、死んだ君の体をマゼマゼして、余分な部分とか、いらない部分をポイポイ切り離したのが今君が使ってる体なんだよ」


「…………」


「あれー? これでもわからない?」


「いや……なんというか……なるほど……だから俺は他の男の人より多く出せるんですね?」


「そうだねー。あとあと、前の雪君ってゲームが好きで、動体視力とか反射神経がよかったんだよね。だからその辺はちゃんと引き継いでるんだよ☆」


 あぁ……だから先日襲われて返り討ちにした時、異常に反応がよかったのか。


「ふふふ☆ ようやく理解したみたいだねー☆」


「えぇ、これが特典ですか」


「悪くない特典でしょー?」


「そうですね。おかげで助かってます」


「よかったー☆」


「ありがとうございます。それでそろそろ……」


「海ちゃんの居場所だねー。雪君は海ちゃんと会ってどうするつもりなのー?」


「謝ります」


「それは何故?」


「海に……悲しい思いをさせてしまったからです」


「……それだけなのかな?」


「あとは……海にちゃんと俺の気持ちを伝えます」


「なんて伝えるのかな?」


「海が好きだと伝えます。伝えて……海も、俺の恋人になってもらいたいです」


「……うんうん☆ 合格☆ 合格だよ☆」


「? 合格?」


「ちゃーんと女の子と仲良く幸せに暮らそうとしてくれてるから合格☆」


「それはそうですよ。ちゃんと約束しましたから。まぁ、してなくても大切にするつもりですけど」


「うんうん☆ じゃあ海ちゃんを迎えに行ってあげなくちゃね☆ あの子は以前君が親子と一緒にボールで遊んだ公園にいるよー☆」


「ほんとですか! ありがとうございます!」


「いえいえ☆ じゃあ、報酬をもらおうかなー?」


「あっ……報酬……」


 海を探すことで頭がいっぱいで完全に忘れてた……


「おやおやー? 神に対価なしでお願いを聞いてもらうなんて……雪君は悪い子だねー?」


「す、すみません、次回来た時に今回の分も合わせて」


「それでも別にいいんだけどー……気が変わっちゃった☆」


「えっ?」


「雪君に一つ試練を与えようかなって☆」


「試練?」


「うん☆ 高校の入学式が終わって翌日以降の数日以内にまたここに来てくれるかな?」


「……わかりました」


「ふふふ☆ 大丈夫☆ 別に雪君にとって難しいものじゃないから☆」


「は、はぁ?」


「じゃあ、海ちゃんのところに行ってあげなさい? 一人さびしい思いしてるから」


「はい! ありがとうございました!」


 そうして、俺は女神様との会話を終えて、時雨に海の居場所を連絡して、現地で先に俺が海と接触する話をした。

 

 ―――これが今回のカラクリだ。俺自身に物語の主人公のような特殊なものはない。いや、まぁ、女神と会える時点で特殊なのかな? 切れる手札を切って、海を見つけることができた。

 代償に……俺は女神様に何をされるのだろうか……?


★********★

お待たせしました。明日の更新から、しばらくいつもの日常です!


あと、65話まで書いてますが、そこで【Welcome to 貞操観念逆転世界】編は終了です。高校生編も頑張って書きます!


応援、フォロー、星を付けて頂き誠にありがとうございます!

創作意欲に繋がるので応援、星を何卒・・・!

コメントもお待ちしております!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る