第42話 おや? 時雨の様子が……

 

 俺達はパトカーで警察署に来たあと、警察による事情聴取が行われた。

 隠すことは何もないのでありのまま起こったことを話したのだが……


「君は男の子なんだよ? もっと自分を大事にしなくちゃダメじゃないか」

「はぁー、すみません」

「わかってないようだね。いいかい? 昨今の男性が犯罪に巻き込まれる確率は―――」


 警察官からのお説教である。

 時雨を守る為に頑張ったのにあんまりではなかろうか?

 いや、まぁ、大人を頼れってことは分かるけど、状況によるよね?

 仮にあの場で誰かの助けを呼んだとしてもすぐに駆けつけてくれる人はいたのだろうか?

 仮にいたとしても、駆けつけるまでに時雨が怪我をしたんじゃ、元も子もない。

 とは言え、大声で助けを呼ぶということをしなかったのも事実だし、ここは甘んじてお説教を聞こうか。

 そんなことより、時雨の方が心配だ。

 怪我はないと言っていたが、顔を真っ赤にしていたし、どこか具合が悪いのだろうか?

 別の警察官と話をしている時雨を見るが……普通に話してるな。


「ちょっと聞いてるの?」


「え、あ、すみません」


「まったく! 君は他の子と違ってまともに会話できるようだけど―――」


 お説教とはなぜこうも長いのだろうか……

 俺は余計なことを言わず、黙って話を聞くことにした。

 そして、ようやく事情聴取が終わり、解放されることになったら警察が家まで送ってくれることになった。


「なんかどっと疲れたな……」


「そうだねー。今日は早めに寝たいかも」


「それなー。けど、休みの日に早く寝るのってなんか勿体ない感じしないか?」


「その分明日早めに起きたらいいんじゃない? 疲れた状態で何やっても純粋に楽しめないよ」


「あー……そういう考え方もあるか」


「なんかしたかったの?」


「んー? いや、やりたいことは色々あるけど別に急いでやることはないな」


「例えば何やりたいの?」


「単純に映画みたり、ゲームしたり的な? 部屋の漫画読み漁るのもいいな」


「じゃあ明日はお家でのんびりしようね」


「そうだな。ゴロゴロして英気を養わないとやってられん」


「ゴロゴロするならお菓子とか買っとけばよかったなー」


「この間コンビニ行った時に買っといたぞ。少ないけど」


「炭酸は?」


「流石に炭酸はねぇわ。明日スーパーに買いにいくか」


「さっき酷い目にあったのによく外に出ようって思うね……」


「毎回あんなのが起こるわけじゃないだろ。さっきのがあったからって外に出なくなるのは嫌だぞ」


「まったく部屋から出なくなるよりはマシだけど……今後のこと考えると……もう一人家族が欲しいね。出来ればお姉ちゃんがいいな」


「なぜ姉?」


「年が近いお姉ちゃんならお兄ちゃんと同じ学校に通える可能性あるし、学校に行くのも3人になるからね。私は来年までは一緒に行けないし」


「なるほどなー……急に姉が出来ても俺的には困惑するんだが……」


「まぁ、なるようになるよ」


「そうだな。で? 時雨はどうしたんだ? さっきから俯いてるけど」


「えっ!? いや……何でもないわよ……」


「「…………」」


「ほ、本当になんでもないから!」


 時雨の様子があきらかにおかしいんだが……

 俺が話しかけてもなんかダメっぽいし、海に任せた方が良さそうだな。


 そして、パトカーが家の前まで辿り着き、俺達は家の中に入った。

 時雨はこっちの家に来るかと思ったが、自分の家に戻っていった。


「「ただいまー」」


「お帰りなさい。一応連絡はあったけど、怪我とかはないのよね?」


「あー、お兄ちゃんが道端でドロップキックして体が痛いって言ってる」


 母さんは頭に手を当て下を向いた。


「なんでドロップキックなの……? それで痛いの?」


「生活する分には問題ないけど、痛いと言えば痛い」


「そう……それならよかったわ。打ち身……になるのかしら? 今日明日位はお風呂に入らず、シャワーだけにしときなさい。あと冷やした方がいいと思うわ。」


「じゃあ、お兄ちゃんとりあえず冷やそうか。アイスパック取ってくるね」


 海が冷蔵庫に向かった。アイスパックなんてそんな常備してるものなのだろうか?


「あぁ、ありがとう」


「やっぱり、送迎はしたほうが良さそうよね……」


「あー……遠出する時はお願いしたいけど、流石に学校とかなら歩いて行きたいんだけど……」


「……雪がそう言うなら、それでもいいけど、何か起こってからじゃ遅いのよ?」


「大丈夫だよ。一人では外出しないようにするから」


「もう……あんまり心配させないでね? 時雨ちゃんは無事なのよね?」


「なんともないはず?」


「なんで疑問系なのよ」


「んー、よくわかんないから海に任せるつもり」


「?」


「お兄ちゃん持ってきたよ」


「おぉ、ありが……ただの保冷剤じゃないか」


「アイスパック2個しかなかったからね。これ巻いとこ?」


「そうだな。あぁ、それと海」


「何?」


「なんか時雨の様子がおかしかったから、あとで聞いといてくれないか? 俺と目を合わせてくれないんだ」


「……お兄ちゃん何したの? 怒られるようなことした? いくら暴れて興奮してたからって、外で王様鎮めようとしちゃダメだよ?」


「それ海や時雨にだけは言われたくないんだけど???」


「まぁ、聞いといてあげるよ」


「よろしく、じゃあ飯食って風呂入って今日はさっさと寝るか」


「そうだねー」


「風呂は……時雨はこないのかな?」


「あー、聞いてくるね」


 海はそう言うと二階に上がって行った。

 時雨に会いに行くのに俺の部屋を経由するのは共通認識なのだろう。

 ―――――少しして、海が戻ってきたが……


「なんか今日はやめとくだって」


「ふむ? じゃあ飯食って二人で風呂入るか」


「おっけー!」


「ご飯は出来てるから、食べましょうか。そう言えば、ショッピングモールで何を買ってきたの?」


「「…………」」


「ん?」


 俺と海は顔を見合わせ、その場に座り込み―――


「「ごめんなさい!!」」


 母さんに土下座をした。


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