第41話 雪の三分クッキング☆
ドゴォッ!!
「ぐぇぇ!?」
スタンガンを押し当てられようとした直前に何かが女にぶつかった。
女は……3m位吹っ飛んだんじゃないかしら?
そして、飛んできた飛翔物が起き上がった。
「いってぇぇぇ! 道路で全力疾走のドロップキックなんてするもんじゃねぇわ」
飛翔物は雪だった。
「ゆ、雪!?」
「ノコノコ戻ってきた!!」
「こ、こっちにきなさい!!」
私を拘束していた二人が雪の方へと向かっていった。
一人の女が雪に掴みかかろうとするが、雪はそれを斜め後ろに躱し、ドロップキック後、地面に転がった時に拾ったであろう私が買ったフライパンを、女の顔に全力で叩きつけた。
「ぐべぇっ!?」
フライパンを叩きつけられた女は勢い余って近くの電柱に後頭部を打ち付け、倒れた。
「あ、あなた! 暴力系男子ね! 通りで外を我が物顔で出歩いてると思ったわ!!」
「別に我が物顔で出歩いたことないんだが?」
「やさしくしていれば! 大人しく私達についてくればいいのよ!!」
女はポケットからナイフを―――ナイフ!?
「少し痛い思いしてもらうけど、大丈夫よ! 流れ出た血も私達がきっちり飲んであげるから!!」
女は正気とは思えないほど、目が血走っている。
「吸血鬼かな? 生憎、十字架もにんにくも持ち合わせてないんだが。杭とかも効果あるんだっけ?」
なんで雪はこんな状況でもツッコミ入れてるのよ!?
「しねぇぇぇぇぇぇ!!」
「殺す気になってんじゃねぇか!?」
雪はナイフを避けることに集中している。
時折、フライパンで反撃しようとするが相手もそれを避けている。
先ほどの女と違い、こちらは動けるみたい。
このままでは埒が明かない。下手したら雪が怪我をしてしまう。
なにか……なにか戦況を覆せるようになる一手を――――
私は危険を顧みず、ナイフを持った女の足に飛び掛かりしがみついた。
「んなっ!?」
女はうまく動けなくなり―――――
「ナイス時雨!!!」
雪がフライパンをナイフを持っている女の手に叩きつけた。
「いったぁぁい!!」
女は握っていたナイフを落とした。
そのまま雪はフライパンを振りかぶり直し、再度女の顔にフライパンを叩きつける。
「がはぁぁ」
私は女の足を離して女が後ろに倒れるのを見送った。
「時雨! 手錠!」
雪の声にハッ! となり慌てて鞄から手錠を取り出すと雪と一緒に襲い掛かってきた女達に手錠をつけた。
そのまま三人を一まとめにする為、縄で縛る。
「あ゛ぁ゛ぁ゛づがれだーーー」
雪はそんな声を上げながら肩で息をしている。
私も緊張の糸が途切れ、その場に座り込んでしまった。
「ふぅ……時雨大丈夫だったか? 怪我してないか?」
そう言って雪は私に微笑みながら手を差し出してきた。
「な、なんで……戻ってきたの……?」
「なんでって、俺の所為で時雨が危ない目に合ってるのに逃げれるわけないだろ? 大切な人を身代わりにして逃げるなんて俺にはできねぇよ。むしろ普段は時雨に助けて貰ってるんだ。こういう時ぐらい俺に時雨を守らせてくれよ」
さっきまで普段見ない凛々しい顔をしていたのに急に安心させるように微笑みかけてくる。
私の役目なのに―――
私が雪を守らなくちゃいけないのに―――
私はその顔を呆然と眺めていたが……
あれ、何、これ……?
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い―――心臓が張り裂けそう。
まともに雪の顔を見れない。
何これ知らない。こんな感情知らない。
今まで雪を見てそんなことなかったのに―――何、これ?
私はまともに雪を見れなくなり、下を向いた。
**********
<SIDE 雪>
慌てて戻ってきて正解だった―――――
「海! 俺は時雨のところに戻る!」
「はぁ!? 何言ってるのお兄ちゃん!?」
「時雨を置いていけるわけないだろ! 海は警察に急いで連絡してくれ!」
「……怪我したら承知しないからね!!!」
なんてやりとりをして時雨を助けるために開幕から全力疾走のドロップキックをかましたが……さっきまでアドレナリンで痛みが誤魔化されていたのに、今になって地味に痛みが出て来たわ。
にしても、なんか自分の体に違和感を感じるな。
前より反射神経? もしくは、動体視力? が良いように感じる。
ただのアドレナリンの影響なのか……? まぁ、どうでもいいな。
それよりも……時雨が下を向いて反応がないんだが?
「お兄ちゃん!!」
海が戻ってきたようだ。
「今警察がこっちに向かってきてるけど……倒したの? 怪我はない?」
「おう、フライパンで料理してやったわ。怪我というか、開幕全力疾走のドロップキックかまして、体が痛いわ」
「無茶するから……帰って湿布でも貼る? というかそのフライパン捨てなよ。流石にばっちいよ」
「勿体ないけど、流石にこれを料理で使いたくはないな。湿布は……こういう場合って冷やした方がいいんだっけ?」
「そんな場合経験したことないから知らないよ。とりあえず、冷やしてお風呂で揉んで湿布の三連コンボでもしとく?」
「なんか効きそうなコンボだな。今日の夜はそれをオーダーさせてもらうよ」
「承りましたー♪ 帰ったらやってあげる。それで、時雨姉は無事?」
「…………」
「時雨姉?」
「おーい、しぐれぇ〜?」
「…………」
「時雨姉どうしたの? 怪我したの?」
「いや? そんな感じには見えなかったが……?」
反応がない時雨にどうしようかと悩んでいるとサイレンの音が聞こえてきた。
サイレンを鳴らしている車が近くまで来ると音が鳴り止み、二人の警官が出てきた。
「警察です! 誘拐犯は……その縛られている人達ですか?」
俺と海はとりあえず警察に状況を説明した。
警察に先程の三人が連れられていく。
追加でやってきたパトカーに事情聴取の為、俺達は乗り込むことになったのだが……
「しぐれー?」
反応がないただの屍の……いや、そんな訳はない。
仕方ない―――俺は時雨の足に腕を通して背中を支え持ち上げた。所謂お姫様抱っこだ。
「!? ふえぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「お、やっと反応したわ。怪我は……顔が赤いぞ? どこか怪我したのか?」
「へっ!? いや、怪我はしてないけど! な、なんでお姫様抱っこしてるのよ!?」
「呼んでも反応しないからだろ。ほら、警察も待ってるから行くぞ。あ、海、時雨の荷物持ってもらえるか」
「はーい」
俺は時雨をパトカーまで運び入れ、パトカーに乗り警察署に向かった。
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もうすぐ30万行くけど記念SSは……まだ書けていません(急ぎます
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