第39話 フラグを立てたのは俺だったようだ

 

 下着選びが終わり、昼食を取ろうと提案して店を探す為に飲食店がある1階までエスカレーターを降りていく。


「あ、ちょっと待ってもらっていいかしら?」


「ん、この階に用があるのか?」


「そうね、急用ができたわ」


「?」


 そう言って時雨は2階で降り、歩き出した。

 時雨が向かう先は……台所コーナーの様だ。

 俺と海は時雨について行き何を買うのか見ている。

 そして、時雨が見始めた商品は―――


「フライパン?」


「えぇ、どれにしようかと思って」


「時雨姉の家のフライパン壊れたの? それとも、もっといい物が欲しくなったとか?」


「そういう訳じゃないんだけど、なんとなくね?」


「?」


「気にしないで頂戴。ただの勘だから」


「……まぁ、よくわからんがごゆっくり」


 時雨はどれがいいかと悩み、ひとつのフライパンを取りレジへと向かった。

 そして俺の財布から摩訶不思議なカードを使って会計をしている。

 そろそろ返してもらえませんかね……?


「お待たせ、食事に行きましょ」


「あの、そろそろ財布を……」


「今日は私が預かっておくわ。雪が無駄遣いしないように」

「そうだよお兄ちゃん、無駄遣いはいけないんだからね?」


「俺買ったの服だけなんだが? しかも安い運動着とシャツ数点」


「そんなことより、雪は何が食べたいの? 今なら魔法のカードで何でも食べれるわよ?」

「何でもって言っても流石に高級なところはダメだよ?」


「俺をなんだと思ってやがる……普通に庶民が食べる物でいいよ。一人800円~1000円位で食べれる場所でいいだろう。というかナチュラルにマジックカード使おうとしてんじゃねぇよ」


「本当に庶民的ね」

「お兄ちゃんの金銭感覚がまともでよかったよ」


「俺のことバカにしてるよね?」


「「そんなことないわ(よ)~」」


「…………」


 納得はいかんが、どうしようにもないので、あきらめてご飯食べよう……

 俺達は1階まで降り店舗一覧が載っている看板前までやってきた。


「で? 何食べるんだ?」


「そうだねー……オムライス専門店とかどうかな?」


「いいわね。こっちの和食処もおいしそうよ?」


「あー、そっちもいいねー! お兄ちゃんは希望ないの?」


「んー……どうせならジャンクな物食いたいかな」


「ジャンクな物なんてその辺で食べれるでしょー? どうせここまで来たならおいしい物たべたーい」


「そうね、いざとなったら学校帰りにでもバーガーとかいけるし」


「……じゃあ、オムライス専門店か和食処でいいよ」


「どっちがいいの?」


「んー……久しぶりにオムライス食いたいな」


「なら、オムライス専門店行こうか」


 食べる物が決まった俺達は店の方へ向かった。

 店に着くとお客さんは多いようだが、待ち時間なくすんなりと入店することができた。


「どれ食べる?」


「んー、思った以上に種類があるな」


「そうね、どれもおいしそうだわ」


「私これにするー! Mサイズで!」


 海が指差したのは……上にハンバーグが乗ってデミグラスソースがかかっているオムライスのようだ。それでMサイズだと……


「1500円もするじゃないか」


「今日は魔法のカードあるから豪勢にいこうかなって!」


 俺のカードなんだが???


「あら、じゃあ私はこれにするわ、これのMサイズね」


 時雨が指差したのは、チーズがたっぷり乗ったトマトソースベースのオムライスだった。


「……1200円か」


「お兄ちゃんちょっと細かくない?」

「そうよ、たまにはパーッと使うべきよ」


「俺の金だったらそれでもいいが、母さんの金だからな……」


「出世払い、出世払い! どうせ子種提供でお金貰えるんだからいいじゃん」

「そうね、もうすぐお金稼げるんだからそれで許してもらいましょ」


 その方向で謝り倒すしかないか……


「わかったよ……じゃあ俺はこれのMサイズにする」


 俺が選んだのはオムライスの上にカツレツが乗りその上にトマトソースがかかっているやつだ。


「へぇー、おいしそうだね! 一口頂戴ね!」


「わかってるよ」


 そして店員を呼び、注文を伝えた。

 ―――しばらく海や時雨と談笑していると注文した物が届いた。


「んじゃ」


「「「いただきまーす!」」」


 一口食べてみるが……うっま! さすが専門店なだけあるな。


「はい、雪、あーん?」


 時雨がいつものようにあーんをしてくるが……


「ここ外だぞ……?」


「だから?」


「……あーん」


 けっきょくいつも通り、あーんをしてしまった。

 うん、時雨が注文したやつもチーズとトマトが合わさってめちゃくちゃおいしい。


「お兄ちゃん、あーん?」


「あーん」


 海が注文したハンバーグが乗っかったオムライスも絶品だな。


「んじゃ、ほれ、あーん?」


「「あーん」」


「うん! こっちもおいしいね!」

「えぇ、このお店を選んで当たりだったわね」


 俺達はそれぞれ選んだオムライスに舌鼓を打ち、昼食を終えた。

 会計は……もちろん俺の魔法のカードを使うようだ。


「さすがにこれ以上カードを使うのは勘弁してくれ……」


「そうだねー。流石に私達も怒られそうだし」

「じゃあお財布返してあげるわ」


 ようやく俺の財布が戻ってきた。現金は減っていないのに、心なしか財布が冷たくなった気がする。


「じゃああとは適当に見て回りましょうか」

「そうだねー。色々見ようか」

「そうだな、おもしろいもんがあるかもしれないし見て回るか」


 そのあとは特に別段変わったことなく、ショッピングモールをブラブラと歩き回った。

 やがていい時間になったので俺達は帰ることにした。


「いやーけっこう歩いたな」

「そうね、久しぶりに楽しめたわ」

「うんうん! また来ようね!」


 ショッピングモールを出て、帰りもまた二人と手を繋いで俺達は帰路についた時にそれは起こった。


「見つけた!!!」


 声がする方に振り向くとそこには三人の女性がいた。


「貴方がこの辺をウロウロしている男の子ね!」

「噂は本当だったようね。大人しくこっちに来なさい! 悪いようにはしないわ」

「えぇ、とっても気持ちいいことするだけよ! めくるめく愛の楽園へ連れて行ってあげる!」


 なんだこのやべぇやつら……というかあれか? 噂って俺がこの辺出歩いた時のことか?

 というか……あれスタンガンか? 初めて見るが、それっぽく見える。


「雪逃げて!!!」

「お兄ちゃんこっち!」


 時雨は持っていた袋をその辺に捨て、海は俺の手を引いて走り出した。


「まちなさ「行かせないわよ!」邪魔よこの女!!!」


 三人の女と時雨が対峙した。


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