第38話 雪の好みはどれかしら?
俺の財布は戻ってこない……
返してもらおうと話をしたが、ニコニコ笑顔でまぁまぁと宥められた。
今のうちに謝罪の言葉を考えておいたほうがいいだろうか。
そして、俺達3人は下着売り場へと足を踏み入れた。
「あー、俺は外で待ってた方がいいよな?」
「なんで? 普通についてきたらいいじゃん?」
「むしろ、外で待たれると不安になるから傍にいて頂戴な。雪の意見も聞く必要があることだし」
「逃げたら、お母さんにお兄ちゃんが勝手に魔法のカードで色々買ってたって言いつけるよ?」
「鬼かな?」
「妹だよ」
「幼馴染よ」
「……わかったから、手早く済ませよう。そろそろ疲れてきたし、一息入れたい」
「そうね、そろそろいい時間だものね、下着を見たら昼食にしましょ」
「ほら、お兄ちゃん行くよー」
「あいよ……」
俺は諦めて中に入っていく。
周りを見ると他にも女性客がおり、手に下着を持っているので視線を逸らすが……視線を逸らしたところで、可愛らしいデザインからセクシーなデザインまで幅広いデザインの下着が目に入ってくる……
無心だ。無心になるのだ。こんなところでキャンプするなんて冗談じゃないぞ。
「念の為に、サイズ図り直しておこうかしら。最近は雪が遠慮なく揉むから、成長してる可能性もあるから」
「時雨が揉めって脅してくるんだろうが……!」
「優しく揉んでくれたらいいのに、王様になった雪はちょっとだけ乱暴に揉むんだもの」
「……すまなかった」
「謝る必要はないわよ。私を求めてくれてるみたいで嬉しいから、そのままでいいわよ」
時雨は店員さんを探しに行った。
つまり、俺と海の二人になったわけだが……
「お兄ちゃん、こっちとこっちどっちがいい?」
さっそく海は下着を持ってきたようだ。
片方は黒のセクシーなデザイン、もう片方はピンクの可愛らいいデザインだ。
「どっちも海に似合うと思うぞ」
「そういうのいいから、お兄ちゃんはどっちが好きか聞いてるの」
「ん、んー……本当にどっちもいいと思うからなー……実際に着た姿を見ないと判断できんな」
「ふーん? じゃあ両方試着するから来て」
海は俺の手を引っ張り歩き出した。
「えっ、ま、まじで?」
「見ないとわかんないって言ったのはお兄ちゃんじゃん。ちゃんと選んで欲しいからね」
俺は自分の発言に後悔しつつ、大人しく海について行く。
そして、試着室の前に来た。
「じゃあお兄ちゃんそこで待っててね」
それだけ海は言い残し、試着室の中に入り、カーテンが閉められた。
試着室とはいえ、あの薄いカーテンの向こうで海が服を脱いでいると考えると少しドキドキする。
いくら裸を見たからといっても慣れるものではない。
「あら? 海はどうしたの?」
試着室の前で悶々とした気持ちのままボーっとしていたら、時雨が戻ってきた。
「あ、あぁ、海が試着してるから待ってるんだ」
「あぁ、そうなのね。ねぇ、雪、朗報よ。貴方のお陰で1cm成長してたわよ」
「まじか……」
「えぇ、この調子で頑張りましょうね? その方が雪も嬉しいでしょ?」
時雨は驚く俺を面白そうに見ながら、俺の頬を撫でてきた。
「お、おう……」
「でも、この調子で成長するとすぐに下着を買い替えなくちゃいけないから大変よね……アルバイトも視野に入れた方がいいかしら」
「あー、まぁ、俺のせいでもあるし、高校になったら子種提供があるんだろ? それでお金貰えるだろうから、俺も出すよ」
「! いいの? 貴方のお金なのよ」
「いいさ、俺の為に成長してもらってるんだ。協力もするさ。それに……」
「……それに?」
「あー……やっぱ、時雨には傍に居て欲しいからな……」
思わず口に出してしまったが、言っててはずかしくなってきたわ……
まともに時雨の顔を見れる気がしない……
恥ずかしくなり顔を背けるが、俺の頬にリップ音と共にみずみずしい感触があった。
思わず、リップ音がした方向を向くと時雨の顔が近くにあった。
「そこまで言うなら傍に居てあげるわ。雪はわがままね?」
「…………」
は、はずかしい! 言うじゃなかった!
「お兄ちゃんお待たせ! どうかな?」
この恥ずかしい空気を壊してくれた海には感謝だ。感謝だが……
海は黒い下着を着たようだ。黒いブラから溢れる胸の谷間に視線が吸い寄せられる……
ゴクリ……
「そ、そのすごくいいと思います……」
「ふーん? どういいのか、もっと具体的に言って欲しいなー?」
「えっ!? いやーそのー……海のイメージと黒い下着がマッチしてて、下着のデザインと相まって、海の魅力をさらに引き出していると思う」
「やれば出来るじゃん! じゃあ、もう一個の方も着てみるね」
そう言って海は試着室のカーテンを閉めた。
「なるほどねー……私も試着してくるから、コメントよろしくね?」
「えっ!?」
「軽く試着だけするつもりだったけど、雪の反応がおもしろそうだから参戦するわ」
時雨もそれだけ言い残して、隣の試着室に入っていった。
こんなところでキャンプしたくないって言ったよね!?
いや、言ってはないか……言えばよかった……
―――そして、少し待っていると、再度海が入っている試着室のカーテンが開けられた。
「こっちはどうかなお兄ちゃん?」
今度はピンクの下着を着て俺の前に姿を現した。
さっきよりはセクシーな感じは薄くなっているが、それでもかわいい下着を着けたからといって、その魅力が薄れることはない。
「あー……そのー……さっきと違って海のかわいらしい魅力が溢れてるように見えるぞ。やっぱり、こっちもこっちで海に似合ってると思う」
「うーん、そっかー……どうしようかなぁ、どっちも欲しいけど……お兄ちゃんの魔法のカード使って両方買っちゃおうかなー」
「あの……あとでまじで母さんに一緒に謝ろうな」
「しょうがないなー、一緒に謝ってあげるよー! お兄ちゃんの頼みなら仕方ないねー」
なぜ俺が悪いみたいな感じになっているのだろうか。甚だ遺憾ではあるが、余計なことを言うと返り討ちに合うので黙っておくのが正解だろう。
海はまた試着室のカーテンを閉めて元の服に着替え始めた。
そして代わりに隣のカーテンが開けられた。
「雪、これはどうかしら?」
時雨は純白の白い下着を身に着けている。
似合う似合わないかで言えば似合うが……
「さっきのゴスロリと合わせるなら微妙じゃないか? 黒か暗めの赤とかの方がいいと思うが」
「これ普通に着る為の下着なんだけど?」
「…………」
「余程さっきのゴスロリ服が見たいみたいね? 下着の色まで指定するなんて」
「……い、今のはなかったことに……」
「ダメよ。貴重な意見を捨てるなんてできないわ。仕方ないからそっちも着てあげるからちょっと待ってなさいな。流石にガーターベルトは今着けてあげられないけどね」
そう言って時雨は試着室のカーテンを閉める。
……なんだろ、今まで恥ずかしくて言えなかったことが今日は普通に言えてしまっている気がする。それだけ二人に心を許していると考えていいのだろうか。
そのあとは時雨がまた下着を見せてきたので頑張ってコメントし、二人の会計が行われた。
うん、女性の買い物って長いだけじゃなくて、高くつくね。
俺は母さんへの謝罪の言葉を考えながら店を出た。
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