第37話 お兄ちゃんはどれが好き?

 俺の服を購入したあとは、海や時雨の服を見ることになった。

 女性の買い物は長いと言うが、この辺りは問題ない。

 海や時雨が服を見てそれぞれで話したあと、俺に意見を求めてくる。

 うん、俺に服のセンスなんてものはない。素直に似合っているかどうか答えるだけだ。といっても、美少女は何着ても似合うのだから、似合ってると言うだけのBOTと化している。


「もーお兄ちゃんもっと他にコメントないの? どう似合ってるとか、私とこの服のイメージとかさぁ」


「海は美人とかわいいを両立してるから、何着ても似合うんだよ。逆に似合わない奇抜な服を持ってきてくれ。そしたらコメントできると思うわ」


「そう言われると悪い気はしないけど……あ、じゃあこれなんてどうかな?」


 海が俺に見せてきたのは……童貞を殺すセーターだった。


「それは……その……外で着るのはダメだろ」


「流石に外では着ないよ。でもお兄ちゃん的にはどう? 似合うと思う? 着て欲しい? 背中とかほぼ見せてるし、前も谷間と横が見える様になってるけど」


 思わず、海が着ている想像をしてしまうが……うん、破壊力やばそう。


「あー……似合うと思うし、着て欲しいとは思うが……俺の理性が壊れそう……」


「そっかそっか! じゃあこれ買っちゃおうかなー!? これ思うんだけど下ってどうするのがいいんだろうね? パンツを履かないのが正解なの? スカート履くのも違うよね?」


「知らないよ! リアルで見たことないんだから!」


「お兄ちゃんがどうして欲しいか聞いてるんだけど?」


「……海に任せる」


「もーそういうところだよ! どうした方がお兄ちゃんのビーストを目覚めさせることができるか聞いてるんだから、ちゃんと答えてくれないと困るよ!」


「……その服着るとしたらブラは着けないんだろ? スカート履くのも違うと思うし……ここまできたら、あとは何でも目覚める自信あるよ……」


「そっかー、パンツ履くにしても面積少ないやつの方が良さそうだよねー。あとでその辺も見てみようかな」


 海はその服を持って他にもないか探しに行った。

 そして代わりにやってきたのは時雨だ。


「雪、こういうのはどうかしら?」


 時雨が持ってきたのは……ゴシック・アンド・ロリータ、所謂ゴスロリ服だった。

 デザインとしては黒を基調とし、所々混じる赤い部分が服の印象をより際立たせており、胸元は大胆に開き、スカート部分はフリルがついた衣装だ。


「時雨の赤い髪と合わせるとすごい似合うとは思うけど……外で着るのか? というか、時雨がそういう衣装を持ってくるとは思わなかったよ」


「私ってどちらかと言うと大人向けの服が似合うと思うんだけど、たまにはこういうかわいい系で雪に迫るのもいいかなと思ったのよ。外で着てもいいけど、ちょっと勇気いるわね」


「かわいい系というかセクシー系というか両方合わさった感じか? ……まぁ、外で着るかどうかは時雨に任せるが、いいと思うぞ?」


「興奮する?」


「……まぁ……そう……だな」


「イマイチな反応ね?」


「普通に時雨がそれを着た姿を見たいとは思うが、そういう目線では見てなかったよ」


「黒を白に染めたいとか思わないの?」


「……服洗うのが大変だろ」


「なんで現実見るのよ。そこは気にせずに雪がどうしたいか答えなさいよ」


「……まぁ……興奮はすると思う」


「ふーん? じゃあこれ買おうかしら?」


 時雨は徐に服についていた値札を見て顔を顰めた。


「ちょっと予算がきついわね……」


「デザイン凝ってるし高そうなイメージがあるもんな。いくらするんだ?」


 時雨が値札を俺に見せてくれるが……うん、意外と高い。5桁はいかないがけっこういいお値段してる。


「これ買うとさすがに下着とか手が出ないわね……」


「あー半分出そうか? さすがに全額は俺もきついが」


「いいの?」


「……正直、それを着た時雨を見たいし、写真撮影して携帯の待ち受けにしたい」


「あらそう? そこまで言うなら買っちゃおうかしら。最悪下着は雪の魔法のカードを頼らせてもらおうかしらね。この衣装に合わせるならガーターベルトなんかも欲しいし」


「……頼ってもいいが、俺が怒られない範囲で頼むぞ」


「怒られたら、私も一緒に謝ってあげるわ」


「というか、なんでそんな服がこの店あるんだよ。普通の服屋じゃなかったのか?」


「なんか『男性を虜にする魅惑の衣装』ってコーナー見つけて海と色々見てたわ。ほらあれ」


 時雨が指差した方向を見ると確かに、そんな名前のコーナーがある……説明文もあるな、何々……『反応が薄い男性のビーストを呼び起こせ! この衣装なら身近な男性も貴方の魅力にイチコロ♡』……なんでそんなコーナー作った……


「雪の理性壊すのは簡単なんだけど、ビーストにはならないじゃない? だから困ってるのよ」


「それを俺に直接言ってどうするんだよ……」


「妻が困ってるんだから旦那として相談に乗るべきじゃないの?」


「その……頑張るから……ほら、会計に行って来いよ!」


 俺は財布をそのまま時雨に渡し、時雨は渋々会計に向かった。

 なんとか誤魔化せただろうか……?

 遠くから様子を見ているが、海もそこに合流している。

 何を話しているかわからないが、半分出すと言ったのだから現金で支払われると思っていたが……二人は会計をまとめて、俺のマジックカードを使おうとしているように見えるのは気のせいだろうか? 誰かトラップカード使って俺の財布を緊急脱出してくれないか……?

 そして、会計を済ませた二人はニコニコ顔で戻ってきた。


「お兄ちゃんお待たせ!」

「さぁ、雪、次は下着を見にいきましょう?」


「おい待て、さっき会計で俺のマジックカード使ってなかったか?」


「お兄ちゃん、怒られるときは一緒に謝ってあげるから安心して?」

「3人で謝ればきっと許してくれるわよ」


「君達の中で俺が怒られること確定してない?」


「さっ、次は下着見に行こうねー。対お兄ちゃん用にセクシーなの選んであげるから!」

「さっきのゴスロリに合わせていい感じのストッキングも欲しいわよねー。そこまで合わせたら雪のビーストも目覚めてくれるかしら」


 二人は俺の発言を無視して、店の外に歩いて行く……

 俺は肩を落とし、二人の後を追った。


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時雨のゴスロリ……見たくない? 私はみ”た”い”!


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