第36話 お買い物と初めてみた男

 俺と海と時雨はショッピングモールまでやってきた。

 来るまでにチラチラと遠目で見られることもあったが、思ったほど視線が集まることはなかった。やはり、普段男が外を歩くなんてことはないから、意外と気付かれにくいのだろう。


「んで、目的の物はどこにあるんだ?」


「4階よ。ここまで来たなら私も服を見たいから、そのつもりでいて頂戴ね?」


「あいよ」


「私は下着見たいなー。お兄ちゃんに選んでもらいたいかも」

「あら、それもいいわね。雪の好きな物着てあげるわよ?」


「……今日も俺の理性は壊されるのか」


「いつものことじゃん、言葉ではそんなこと言っても、お兄ちゃんの身体は正直だよ」

「いい加減その羞恥心は捨てなさいな。毎日一緒にお風呂入ってるんだからそろそろ慣れるでしょ?」


「……美少女二人に迫られて、反応しなかったら、俺の息子は死んでるよ。そうなったらそうなったで、二人も困るだろ?」


「そうならない様にする為に、下着を買いにいくんじゃん。下手に裸を晒すより、薄着とかの方が男性は興奮するんでしょ? ベビードールとかも今日見てみようか」

「ついでにコスプレショップにも寄ってく? 乳暖簾はないかも知れないけど、普段と違う格好で責められるのもいいでしょ? 雪の好みを教えて頂戴な。ちゃんと着てあげるわよ。」


 ふぅ……今日もダメかも知れないな脳内天使よ……

 最近思うんだが、俺の脳内天使は以前はデフォルメされたかわいらしい天使がイメージだったのに、近頃妙にリアルになってきてないか? 無駄に肉付きも良くて、服の露出が増えてエロくなってるんだが? というか頭の上の天使の輪がちょっと黒ずんでるよね? なんなら羽も少し黒くなってきてるし……

 堕天するまでそう遠くはないのだろう……さっきからチラチラと性の獣のことを頬を赤らめながら見てるし……


「わかった、俺は抵抗しない。抵抗しないからせめて、時間をかけないようにだけしてくれ」


「それはお兄ちゃん次第だよ」

「そうね、お金もそんなにある訳じゃないし、雪が自ら進んでこれって言ってくれたらすぐに終わるわよ?」


「……善処するから、さっさと買い物に行こう」


 そう言って俺は会話を打ち切った。どう足掻いても二人に勝てる気がしないのだからさっさと行ってしまったほうがマシだ。

 そして4階の男性服があると言われるお店にやってきた。


「この店か? 確かに男性物が売ってるな」


 そうして店内を見渡すと、初めてこの世界にきて、男性を見かけた。

 一組は女性二人と男性一人で男性の方は女性が持ってくる服にオロオロしている。女性の方は男性に服を合わせて、似合うかどうか見てるみたいだが、男性はどれも嫌なのか、もしくはさっさと終わらせて欲しいのか、ずっと困っている感じだ。

 もう一組いるが、男性一人に女性三人だろうか? こちらは女性に対して高圧的な態度なようだ。ここまで声が聞こえてくる。


「さっさと持ってこいよ! 服なんてどうでもいいんだよ!」

「でも、お外に出る時に着る服がないと「外なんて本当は出たくねぇんだよ! いいから、適当にさっさと持ってこいよ! グズが!」ご、ごめんね。すぐ持ってくるね!」


 男性一人が女性の一人に檄を飛ばし、その女性が他の二人に急いで指示を出しているようだ。


「本当にあんな奴いるんだな」


「よく見かけるよ。お兄ちゃんはあんな風にならないでね?」


「ならないよ。海や時雨をあんな風に扱うなんて、俺には無理だ」


「そうね、今の雪からは想像できないわね。でも、ベッドの上なら多少強気でもいいのよ?」

「そうだねー、お兄ちゃんちょっと受け身気味だし、もうちょっと野性味が欲しいなー?」


「……スゥー……さて、運動着に使える服はあるかなー?」


 俺はその場を離れる為に店内へと歩みを進めた。


「ヘタレ兄ぃ……」

「まだ時間はあるし、毎日理性壊してあげるから安心しなさいな」


 俺はその言葉を聞こえていないと装い、先へと進み店員らしき人がいたので話しかけた。


「すみません」


「はーい……えっ!?」


「男性用の運動着探してるんですがどこにありますか?」


 俺が声をかけたことに店員は驚いているようだ。俺何かした?


「すみません、この子はこんな感じの子なので、気にしないで下さい。それで、男性用の運動着はどの辺にありますか?」


「この子って俺は時雨の子供みたいな扱いになってないか?」


「今はいいから話を合わせなさいな、余計な波風たてたくないでしょ?」


「まぁ、それはそうだが……わかったよ、時雨に任せるよ」


「そうしなさい。その方が何かと楽だから」


「え、えーっと男性用の運動着だとこちらです。案内致します」


 店員さんに案内され、運動着が陳列されている棚まできた。


「こちらが運動着のコーナーです。失礼ですが、サイズなどは把握されてますか?」


「いいえ、悪いんだけど、メジャー貸して頂けないかしら」


「かしこまりました。お持ちします」


 そう言って店員さんがメジャーを取りに行った。

 その間にデザインや値段など見ておこう。


「デザインはいいとして……値段はピンキリって感じだな」

 

「そうね、ただ女性用と比べると少し値段が高く感じるわね」


「まぁ、男性用で運動用ってなるとあんまり需要無さそうだしな」


「男の人もまったく運動しないわけじゃないらしいよ? どこで運動してるか知らないけど」


「高校とかって体育の時、男はどうしてるんだ?」


「さぁ? 中学は少なくとも運動してる子を見たことないよ」


「……唯一まともに参加できそうな授業なのに出れないのは嫌だな」


「言ったら参加できるんじゃない? 高校に行った時に聞いてみましょう」


「すみません、お待たせしました。こちらをどうぞ」


 店員さんが戻ってきたようだ。

 時雨が店員さんからメジャーを受け取り、俺のサイズをテキパキと測っていく。


「サイズは把握したわ。すみません、ありがとうございました」

「いえいえ、何か御座いましたら、お声掛け下さい」


 時雨がメジャーを店員さんに返すと、店員さんも下手に接客せず俺達から離れて行った。


「なんか意外だな。もっとこっちに絡んできて接客すると思ったのに」


「普通はそうなんだろうけど、男性がいる場合だと絡んで来ないよ。下手に男性を刺激して店の評判に関わったら嫌だろうからね。まぁ、お兄ちゃんの分は私達が選んであげるから、いいでしょ?」


「そうだな、海や時雨に見てもらったほうがセンスがいいだろうからな。任せるよ」


「お任せあれー!」


 そして、海や時雨にアドバイスを貰いながら俺の運動着を選んだあと、ついでに何着か服も選んでもらい、会計を済ませて店を後にした。


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