第28話 そら嫌いになるわこの世界
俺の理性の天使はまたもや蹂躙された。
今日もこの後にあるであろう誘惑に耐えることはできないだろう。
「さ、お兄ちゃん、保健の続きやろ?」
「まだ空白があるわよ?」
「いや、もう無理です。勘弁して下さい」
そう言って俺はプリントを片付けた。
「えぇー、終わっちゃうのー?」
「空白で出すのはよくないわよ?」
「誰のせいだ! 誰の!」
さて、プリントをやっただけで随分と時間がたった。
だいたいはこの2人の所為と言っても過言ではないだろう。
「風呂入るか」
「そうだねー」
「そうしましょ」
「……1人で入るつもりなんだが?」
「今日は私と入るべきでしょ?」
「3人で入りたいけど仕方ないから時雨姉に譲ってあげる」
「……ほんとに昨日と同じことするの?」
「当然でしょ? いい加減あきらめたらどう?」
「俺にも理性というものが「今日は不要よ」……」
「じゃあ、着替え取ってくるから先に入ってて頂戴な」
そう言って時雨は俺の部屋の窓から自室へと戻っていった。
「ヘタレにぃ、もう無理だってわかってるんでしょ? 獣の方はやる気で満ち溢れてるみたいだよ?」
「だからと言ってこれに慣れてしまうと俺はただの獣になってしまう……」
「別にいいんだよ? 私達の前でなら♡」
「……あっ、そういえばさ」
「何?」
「体の相性で結婚相手選ぶのって海はどう思う?」
「別にいいんじゃない? よくある話だし」
「まじか……」
「まぁ、でも」
「ん?」
「その人だけ優遇したら……わかるよね?」
「そ、それは大丈夫です。はい」
「わかってればいいよ」
「なんの話?」
時雨が俺の部屋の窓から帰ってきたようだ。
「お兄ちゃんが結婚相手は体の相性がいい人がいいんだって」
「ふーん、いいんじゃない? ちゃんと私達にも同じようにしてくれるなら」
「まじでそういう感覚なんだな……」
「まぁ、複数娶る時点でそういう人がいるのは一般的だからね。もちろん相性がいいからってその子は働かなくていいって訳じゃないからね?」
「まぁ、そうだろうな」
「全員働けばお兄ちゃん養うのにお金に余裕ができるだろうし、その状態なら仮に何人か同時に妊娠しても、男性保護省からお金貰えて育児にも余裕があるだろうし、最悪お兄ちゃんから搾りまくって売って家事育児代行とか雇えるだろうからね」
「真っ当に働きたいと思う俺がおかしいのか……」
「「おかしいね(わね)」」
かと言って紐になるのは抵抗があるんだよなー……
専業主夫的な役割もちょっと違う気がするし……
「なんでそんなに働きたいのさ? お兄ちゃん社畜なの?」
「雪ってどMなのね?」
「なんでそうなるんだよ! 普通に女性が妊娠したら育児大変だろうし、仮に全員が妊娠だったり、事故だったりで働けなくなったらどうするんだよ。そうなった時の為に手に職をつけときたいんだよ。それに、将来的には最低でも6人一緒に住むことになるだろう? そしたら大きな家とかも必要だし、車も必要だし、子供生まれたら何かとお金かかるだろうし、そんな状況で家でのんびり過ごすとか俺の性分に合わないんだよ」
二人はこちらを見て口を開けてポカーンとしている。
「かと言って専業主夫になるほど家事とか好きでもないし、主夫になったらご近所付き合いとかもあったりするんだろう? 女性だらけの世界で男の俺がそれに参加するのはまずいだろ? 無理に専業主夫にならなくても共働きで一緒に家事や育児こなせればいいだろうって思ってるんだが?」
「えっとー……」
「ちょっとツッコミどころが多すぎてどこからツッコんでいいのかわからないわね……」
「えっ?」
「お、お兄ちゃんはみんなと一緒に住みたいの?」
「当然だろ? なんで妻と離れて暮らさなくちゃいけないんだよ? そうなったら家庭崩壊待ったなしじゃん」
「えっとね、普通は妻1人か2人が男の人と一緒に住むことが多いんだよ」
「えっ」
「男の人が一緒にいるのを嫌がるから、世話するのに1人か2人一緒に住んで他の人は基本別に住んでることが多いんだよ」
「まじかよ……え、その1人か2人が妊娠したらどうなるんだ?」
「他の妻と住むの交代するかな。家具とかそのままで私物だけ持って別の場所に住む。運がよければ、元住んでた妻の家と交代できるし」
「ドン引きなんだが……あぁ、もしかして結婚する相手ってその理由も考えて変な人と結婚するのは嫌だって言ってた?」
「そうだよー。だって育児って大変なんだよ? 夜泣きとかするだろうし、男の人ってそういうの敏感で性欲も少なくなるって聞くし……住む場所追われるんだから仲よくできる人となら家の交代も出来て楽だろうからね」
「妊娠したからと言って妻と離れ離れになるのは嫌だ。育児が大変って言うのは経験したことないから知らないけど、理解はしているよ。それに結婚するってことは苦楽を共にするってことだし、愛する人の為なら頑張るさ。性欲に関しては……経験したことないから知らん」
「ほえ~……」
海は俺の考えに理解が追い付かないのか放心している。
「え、じゃ、じゃあ私も雪と一緒に住めるの!?」
時雨が食い気味にこちらに顔を近づけてきた。
「そりゃ結婚するなら時雨とも一緒に住みたいよ。今後愛を育むんだろ? そんな愛を育んだ人と離れ離れなんて嫌だよ俺は」
そういや、病院で初めて時雨と会った時、一緒に住みたいとか言ってたけどこういうことだったのか。
なんかそう考えると前の雪が言ってたことがわかってくる気がするわ。まじで男のことを道具とか家畜とかにしかこの世界は見てないんだな。もしくはペット扱いか。
「えっ、ど、ど、どうしようかしら! 雪と一緒に居たいけど、みんなで住むってなると色々大変よね……まず大きな土地が必要だし、そのうえで大きな家って……そ、そうよね。最低5人の妻ってことは最低5人は子供できるだろうし、家が大きくないと住めないわよね!?」
「お、落ち着け時雨。とりあえず俺の考えとしてはこう考えてるとだけ理解してくれればいいから」
「えぇー……お兄ちゃん、そんな風に考えてたんだ……だとすると……」
海は顎に手を当て下を向きうーんと考え出した。そして考え付いたのかこちらを見てひとつの解決方法を提示した。
「お金持ちの人と結婚するしかないんじゃないかな?」
「……1回り2回り歳上の人と結婚するのは嫌だぞ……」
「じゃなくてさ、高校行って見つけるしかないよ。もしくは合コン」
「そんな都合よくいるのか?」
「普通の高校なら無理だろうけど、偏差値高い高校だからいてもおかしくないよ。特に合コンなんかは金がないと参加できないから期待していいだろうし」
「うーん……仮にいたとしても、俺のことを好きになってくれるか……」
「お兄ちゃん自分のこと過小評価してるけど、イケメンではないけどブサイクでもないからね? 薄顔でそれなりに顔は整ってるし、少なくとも性格に関してはお兄ちゃん以上の人いないから向こうから寄ってくるんじゃないかな?」
「そんな都合よくいくか……?」
「まぁ、行ってみないとわからないけど、お兄ちゃん以上の男の人なんて滅多にいないから安心していいと思うよ?」
「うぅーむ……まぁ、いい出会いがあるように神頼みしとくわ」
「そうだねー。今度お参りいこうね」
「まぁ、仮にお金持ちの人と結婚したとしても、働きたくはあるけどな」
「え、なんで?」
「養われるって言うのが嫌なんだよ。何かしら問題があるならまだしも、心身共に健康なのに何もしないって言うのが性に合わないからな」
かと言って金を稼ぐ方法が男の場合無いとなると……まじで、女神様が言ってたヤリチンになる選択肢が一番手っ取り早いのか……?
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