第17話 お話し……しよ?

 目を開けるとそこは雪の部屋だった。

 俺はそこで崩れ落ちたのか床に座っていた。


「雪!? 雪!? 大丈夫!?」

「お兄ちゃん!?」


 二人は今にも泣きだしそうな顔で俺の顔を覗き込んでいる。


「……あぁ、もう大丈夫だ」


 俺はフラフラと立ち上がり、自分のベットの上に座った。

 海と時雨も寄り添うように隣に座る。


「そうだ……遺書……」


 開いた手紙に目を通す。


「『母と海と時雨を頼む』か……そっか……」


 信用はしてないけど心配はしてたんだな……


「雪……?」

「お兄ちゃん……?」


「はぁー……」


「……何か思い出したの?」

「…………」

「……お兄ちゃん?」

「そうだな……二人に言わなくちゃいけないこと、伝えなくちゃいけないことができた」

「……その手紙に関係すること?」

「あぁ……」


 そう答えると横から強く抱きしめられた。海だ。海が大粒の涙を流しながらこちらを見ている。


「嫌! 死なないで! 死なないでよ! なんで! せっかく少しは仲良くなれたと思ったのに!」


「海!?」


「記憶なんて戻らなくてよかったのに! 記憶無くしたやさしいお兄ちゃんでよかったのに!」


「お、落ち着けって」


「しんじゃいやだああああああああうああああああああああああああ」


大号泣だ。病院で泣いた時の比じゃない。俺は慌てて海を抱きしめた。


「大丈夫! 大丈夫だから!」


「うわああああああああああああああああああああああああああああ」


 もう伝えるどころじゃないよ……

 俺は海を落ち着かせる為、頭も撫でる。

 これだけの大号泣だ。母親が気付かない訳もなく……


「海!! どうしたの!!」


 母親が扉を壊す勢いで部屋に入ってきた。


「おにいじゃんがしんじゃうああああああああああああああああああ」


「死なない! 死なないから!」


「ほら、海、雪は死なないっていうから落ち着きましょ?」


 そう言いながら時雨は海を後ろから抱きしめる。


「……海が泣き止むのを待った方が良さそうね……飲み物取ってくるわ」


「あぁ、ありがとうお母さん」


************


 あれからしばらく時間経ち、海も落ち着いてきた。


「……グス……お兄ちゃん死なない……?」


「あぁ、俺は死なないよ」


「……ずっと一緒に居てくれる?……グス」


「あぁ、そばにいる」


「グス……」


「それで雪、何があったの?」


「あー……お母さんにも伝えたかったし、ちょうどいいや」


「それは、これに関係するのね?」


 そう言いながら雪の遺書を見ている。


「あぁ、3人に聞いて欲しいことがあるんだ。荒唐無稽な話だけど、真実だから聞いて欲しい。」




 そして、俺は自分自身のこと、この世界の雪と会話した内容を話した。




「「「…………」」」




「だから、俺は雪だけど雪じゃないんだ、黙ってて……ごめんなさい……」


 俺は申し訳ない気持ちでいっぱいになり、頭を下げた。


「頭を上げて雪」


 母親に言われ、俺は頭を上げた。

 母親は今にも泣きだしそうな顔をしている。


「……雪は……雪はもういないのね……」


「あぁ……あいつに何があったのか、知らない……けど、もう限界だったと思う……」


「そう……雪の気持ちを聞いてきてくれてありがとう……」


「俺にはあいつの気持ちを晴らすことは出来そうになかったから……それぐらいしか……」


「それは……私たちの所為だから……貴方が気にすることじゃないわ」


「……そう言ってもらえると助かります」


「ふぅ……ごめんなさい……先に休ませてもらうわ……」


「えぇ……お休みなさい」


「……雪?」


「はい?」


「貴方はここに居ていいんですからね?」


「……いいんですか?」


「えぇ、あの子が貴方に託した命だもの、貴方まで居なくなってしまったら私はどうしたらいいか……」


「……ありがとうございます」


「これからも、私たちの家族でいてね?」


「……うん、これからもよろしく」


 そうして、お休みなさいと言いながら母親は部屋に戻っていった。

 そして横で、はぁーっとため息をつきながら時雨が話しかけてきた。


「まるでおとぎ話ねぇー……」


「まぁ、そういう反応になるよな」


「えぇ……それにしても信用されてなかったって言うのはちょっとショックよねぇ……」


「……時雨が悪い訳じゃないだろ」


「そう……かしら……」


「あぁ、それに関しては自信持って言える。この世界の所為であいつはおかしくなったんだ。時雨はいつも助けてあげてたんだろ?」


「えぇ……」


「だから、遺書にも時雨を頼むって書いてあったんだ。時雨は何も間違ってなんかないよ」


「……ありがとう、雪」


 俺は無言で時雨の頭を撫でた。


「でも、これでよかったのかもしれないわね。相手が望まない結婚なんてつらいだけだもの」


「そうだな……」


「えぇ、だから代わりに、責任は雪に取ってもらうからね?」


「あぁ……あぁ?」


「頼むって書いてあるからそういうことじゃない。何よ、私との結婚嫌なの?」


「……時雨みたいな美人に結婚してもらえるなら俺は幸せだよ」


「そう♪ 今後は貴方の言う、愛を育んでいきましょうね?」


「あぁ、改めてよろしく頼むよ」


「ふふふ、じゃあ私もそろそろ帰るわ」


そう言って時雨は帰って行く……俺の部屋の窓から


「いや、そこから帰るんかい!?」


「明日も朝貴方の顔を見に来るからこっちからでいいわ」


「さいですか……お休み、時雨」


「えぇ、お休みなさい」


 そうして、俺と海が部屋に残った。


「……お兄ちゃん」


「なんだ?」


「私と……お話し……しよ?」


「おう」


「お風呂で」


「おう……おぅ!?」


「言質とったからちゃんと来てね! お兄ちゃんの着替えは脱衣所にあるから! 先にお風呂入ってて!」


 そう言い残し、海が去って行った。

 ……え、え、まじで一緒にお風呂に入るの?


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