第15話 雪と雪と世界の話


 まばゆい光に思わず目を閉じたが、もう大丈夫だろうか?

 目を見開くとそこは真っ白な空間だった。

 何もない空間には1人の人が立っていた。

 俺だ。俺が立っている。


「あー……初めまして、僕」


「……お前はこの世界の俺か?」


「うん、そうだね」


「そうか、あー……じゃあ初めまして俺」


「うん、よろしく」


「あぁ……」


 え、何これ、唐突すぎて会話に困るんだが……? とりあえず……


「あー……これはあれか? 記憶……というか前の魂?的な物が元に戻る的なイベントか?」


「……いや……そうじゃない」


「ん?」


「あー……どこから話をしようか」


「……」


「うん、まずね、僕はこの世界が嫌いだ」


「そうか……」


「うん……色々あったんだ……色々……」


「海とか時雨が言っていたがトラウマ的なやつのせいか?」


「そうだね……それもある……」


「それもか」


「うん、僕はね、この世界の在り方が嫌いなんだ」


「在り方?」


「この世界って男性の数が極端に少ないのはもう知ってるよね?」


「あぁ、知ってる」


「そんな状況でどうやって人を増やすと思う?」


「……男が頑張るしかないんじゃないか?」


「そうだね、だからこの世界では男は人を増やす為の道具でしかないんだよ」


「……悲しい考え方だな」


「君にとってはそうだろうね。でも、この世界の男はほとんどそう思ってると思うよ」


「なぜだ?」


「ほとんどの男性が子種を提供するだけになってるから」


「子種を提供?」


「そう。男性保護省ってあるでしょ?」


「あぁ」


「男性を女性から保護する為ってのは間違いではないんだろうけど、本質としては子種を独占させない為のものなんだ」


「子種の独占?」


「うん。君にとってはもうすぐ始まることなんだけど、男性が優遇されるように男性保護省が動いているけど、それは見返りありきの話なんだ」


「あーそれが子種の提供か」


「正解。今後君は高校生になってから、定期的に子種を男性保護省に提供しなくちゃいけないんだ、恋人やお嫁さんがいたとしても」


「ふーん」


「嫌だと感じない?」


「……いくつか聞いていいか?」


「僕に答えれることなら」


「そうか。まずどれぐらいの頻度で提供しなくちゃいけないんだ?」


「基本は最低1ヵ月に1回かな、人による」


「人による?」


「この世界の男性ってほぼ2種類しかいないんだ、傲慢な奴か臆病な奴。傲慢な奴は……まぁ、それなりに提供してるんじゃないかな?」


「疑問形かよ」


「僕もこの世界で他の男性にほとんど会ったことないんだから、それに関しては推測するしかできないね」


「そうなのか」


「うん、でね? 傲慢な奴は知らないけど、臆病な奴……僕とかがそうなるんだろうけど、臆病な奴って過去にだいたい何かしらあった人だと思うんだ」


「ふむ、それで?」


「そんな人ってだいたい女性が怖くて、子種の提供とか難しい状況なんだよね……恐怖の対象であそこが元気なるかと言われればできないでしょ?」


「そう言われると、そうか……」


 人によって恐怖の対象は違うだろうが、恐怖で性的興奮するやつはまずいないだろう。


「うん、だから人によるんだ、小学生の時に聞いた話だけど、人によっては半年に1回とかの人もいるらしい」


「ふーん、そうなんだな」


「うん、だから男性保護省も人によって、そういう人もいるから仕方ないと考える反面、差別化も必要だから提供することによって金銭的なメリットがあるようにしてあるんだ」


「あー海が言ってたが男性は将来働かなくていいって言ってたのはこれか」


「そうだね、多く提供する人はそれなりにお金が貰えてると思うよ」


「ちなみにいくら貰えるんだ?」


「1回の提供で5万」


「んー……少ないと考えるべき……なのかな……」


「そうだね。そもそもこの世界の男性って性欲がそんなに強くないから、一回出したら次はちょっと時間が必要なんだ。それに女性恐怖症の男性にとって5万とは言え、難しい問題だから」


「だな。んで、それが女性に提供されて、妊娠に使われるってことか」


「うん、とはいえ人工授精の確立もそこまで高いわけじゃないから数が必要なんだ」


「数撃ちゃ当たるってことね」


「そういうこと」


「で? 撃ってればそのうち当たるんだろうが、当たった場合どうなるんだ?」


「? どうにもならないよ?」


「……できた子供を認知しなくちゃいけないってことはないのか?」


「それはないね、男性保護省で集められた子種は誰の物かまでは管理してないみたいだから」


「そうなんだな」


「うん。あっ、女性に関しては妊娠した場合、働けなくなるから保障が出るらしいよ。一定の金額が貰えるし、仕事もお休みになるから安心して妊娠していいみたい」


「そこは女性にやさしい世界でよかったよ」


「……君はやさしいね」


「そうか? 妊娠したら大変だろ。当たり前だと思うんだがな」


「うん、その考えが既にこの世界ではおかしいんだけどね」


「……そんなものなのか」


「だって女性ばかりの世界だよ? みんながみんな妊娠したら社会が死んじゃうって考えない?」


「あー……男性は少ない上に、貞操観念もおかしいから働けないんだもんな」


「そういうこと、でもそんな保証もないと人口が減っちゃうからね」


「男女比がおかしいだけでここまで変わるんだな」


「うん、だから僕はこの世界が嫌いなんだ、そして女性が嫌いなんだ」


「……母親や海や時雨もか……?」


「……そうだね。あいつらもいつ他の女性と同じようになるかわからないから……正直、信用してない……というより信用するのが怖いって感じだね」


「……裏切られると?」


「そうなってもおかしくない世界だから」


「……お前の過去に何があったかは知らんが、いくらなんでもそれはひどいんじゃないのか?」


「君に僕の気持ちはわからないよ……」


「……ま、そうかもな」


「……」


 こいつは俺だけど俺じゃない、こいつが経験してきたことで抱いた気持ちを俺がなんとかできるとは思わない。トラウマなんてもの、簡単になんとかできたら苦労しない。俺に出来ることなんて何もないだろう。


「それで? お前がこの世界が嫌いなことと、俺がここにいる理由ってどう繋がるんだ?」


「あぁ、都合がよかったらしいよ」


「都合がよかった?」


「うん、この世界から消えたい僕と、死んで後悔している君」


「どういうこと?」


「この世界の管理者……神様が入れ替わらないか提案してきたんだ」


 神ときたかー……


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