第6話 海のインプリンティング①

 家に帰ってきた。


 母親が家の敷地に車を止めたので、車から降りて家の外観を眺めた。


 男性優遇なんて世界だから、もしかしたら家も男性が住んでるからものすごく大きかったりするんではなかろうかと少しワクワクしていたが、割と普通の家だった。


 いやまぁ、普通の家よりは大きいけどまだ常識の範囲内の大きさと言ったところ……少なくとも豪邸ではない。


 母親が玄関のカギを開けて中に入っていく、続いて海も入っていったので俺も入っていこうとするが……


「お兄ちゃんは10秒そこで待って入ってきて」


 そう言って扉が閉められた。


「?」


 疑問に思いながらも10秒経ったので玄関の扉を開いた。


「「おかえりなさい! 雪(お兄ちゃん)!」」


「ただいま!」


 家に帰ってきておかえりなんて言われるのはいつぶりだろうか


 前の世界では大学に入ってから一人暮らしをして、実家に帰った時以外言われることはない、まして玄関でお出迎えなんてすごく新鮮な感じだ。


「お兄ちゃん、お帰りのハグしよ?」


「え? 帰ってきたらいつもハグしてたの?」


「……うん! そうだよ! いつもしてたよ! お兄ちゃん外に出ないからお帰りのハグする機会はあんまりなかったけど」


「ふーん、はい、ただいまのハグゥー」


 海を抱きしめると海も抱きしめ返してくる。それで終わりかと思えば追加攻撃があった。


 チュ♪


 頬からリップ音がなり、海からゆっくり離れると海はにっこにこで片頬をこちらに向けている。


「ほら、お兄ちゃんも私にして?」


「……キスもしていたのか?」


「うんうん♪ そうだよ! ほらほら早く早く!」


 違和感を覚えながらも、海の頬にキスをした。


「えへへへへ♪」


「ゆ、雪! お母さんにもほら!」


 お母さんにも海と同じようにハグとキスをする。


 お母さんもにっこにこになり、海を連れて離れていく。


(よくやったわ海!)

(えへへ! でしょー!)

(お小遣いアップしてあげるわ!)

(やったー!)


 よく聞こえないが、二人で喜んでいるようだ。


「ほらお兄ちゃん、玄関で突っ立ってないで、リビング行こう?」


「そうだな」


 リビングに行き、適当にソファーに座るとすぐさま海が俺の肩に肩をくっつけて座ってくる。


 自分の家なんだろうが俺としては知らない家なので落ち着かない……


「どうお兄ちゃん? ここがリビングだけど、何か思い出せる?」


「うーん、何にも思い出せないなー」


「ここで私とお兄ちゃんでTV見たりしてたんだよー? 私を抱きしめながら」


「抱きしめながら!? 俺と海はそんな身体的接触多かったのか?」


「うんうん、私達仲良しだったんだから♪」


 そう言いながら今度は海が腕に抱き着いてくる。

 まぁ、仲が悪いより仲が良い方がいいか。


「雪、海、コーヒーと紅茶どっち飲む?」


「私紅茶」

「俺はコーヒー」


 お母さんが飲み物を準備してくれるようだ。


「それで、俺は普段他にどんなことしてたんだ?」


「さぁ……?」


「わかんないのかよ」


「そりゃお兄ちゃん引きこもりだったし、あんまり部屋から出てこなかったから」


「ん? 俺は海を抱きしめながらTVを見てたんだよな?」


「……たまにね? たまに」


「そっかたまになのか」


「そうそう」


 ピンポーン


「はーい! 海ちょっと行ってきて」


「はーい」


 海が玄関にパタパタと走っていった。


 俺はその間にもう一度辺りを見渡す……TVは50インチ位だろうか? かなり大きい。

 近くにBDプレイヤーなどは無さそうだが、ネットに接続したりできるだろうか?

 前世の一人暮らしの時は、PCの24インチモニターで映画を見ていたりしたからこの大画面で映画など見たら迫力がありそうだ。

 他には観葉植物なども置いてあり、おしゃれなリビングである。


そんな風に辺りを見渡していたら海が帰ってきた……しかめっ面で。


「やっほー雪! 遊びにきたよー」


「おっす、時雨」


 来客は時雨だったようだ。


「いらっしゃい、時雨ちゃん、紅茶とコーヒーどっちがいいかしら?」


「こんにちは秋さん! 紅茶でお願いします!」


「なんで来るかなー? いいところだったのにー」


「なんで来ちゃいけないのよ? 雪が帰ってくるんだから来るに決まってるでしょ?」


「ムー」


 そう言いながら海は先ほどと同じように俺の隣に座ってくる。

 もちろん抱き着きながら。


「へぇー……」


 ニヤリとこちらを見た時雨は俺の空いている隣に座ると海と同じように腕に抱き着いてきた。


「チッ……無駄に勘がいいよね、時雨姉って……」


「ふふん♪ それで何度か雪を助けて来たんだから文句ないでしょ?」


「ソウダネー」


「俺は何度も時雨に助けられてるのか?」


「そうよー、まぁ雪のトラウマを思い出させたくないから話さないけど」


「そんなLvの話なのか……」


 この世界の俺はどんな目にあっていたのか、ちょっと気にはなるが触れないでおこう。


「うん、だから学校だったり外に行くときは私と一緒に行くようにしてね?」


「あぁ、わかったよ。時雨いつもありがとうな」


 素直にお礼を言うと、時雨は目を大きく見開いたがすぐに悪いことを考えてる顔にした。


「お礼は言葉じゃなくて、私は行動で貴方を守っているのだから行動で返して欲しいわ」


「何をしたらいいんだ?」


「私と結婚して♪」


「いきなり結婚はさすがに……」


「じゃあ、私とキスして?」


「キスぐらいならい「もちろん、マウストゥマウスだからね? 頬とかなしよ」口かぁ……」


「いやいやお兄ちゃん、時雨姉のドアインザフェイスだから騙されないで」


「ちょっと黙っててよ海ちゃん、今いいところなんだから」


「まぁ、さすがにファーストキスは恋人の為にとっときたいからなー……頬じゃだめか?」


「「えっ……あー……」」


「え、何その反応」


 この世界の俺のファーストキスどうなってるの……?


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