第3話 母&妹

「先生から話を聞いたけど本当だったのね」

「ぐす……本当の本当に海のこと覚えてないの……?」

「うん、ごめんね……ほとんど覚えてなくて……」


 本当は覚えてないじゃなくて知らないんだけど……


 号泣して抱き着いて来た二人が泣き止むまで背中や頭をナデナデし、やっと二人のことを聞くことができた。


 大人の女性は大淀 秋(おおよど あき)俺の母親らしい。


 控えめに見てもかなり美人に見える。

 少なくとも二児の母親にはまったく見えない。


 もう一人は黒色のポニーテールの女の子は大淀 海(おおよど うみ)俺の妹らしい。


 母親に似て美人でクールな雰囲気を感じるが、顔をぐしゃぐしゃにしてまだ俺の胸に抱き着いている。


「その様子だと母親のこともほとんど覚えてなかったようね」


 小鳥遊先生もいつの間にかに部屋に来ていた。


「えぇ、残念ながら……このあと私はどうなるのでしょうか?」


「長くても1週間は入院してもら「たったの1週間ですか!?」三戸さん、静かにして下さい。」


「そんな……私の癒しのオアシスが長くて1週間……? 私はそのあとどこで癒しを求めればいいんですか!? 1ヵ月……いえ、1年入院していて下さい!」


「何バカなこと言ってるのよ……三戸さん? 貴方、大淀さんに何して貰ったの……?」


「何って……えへへっ……名前で呼んで貰ってぇ、握手してぇ、頭ナデナデ付きのハグして貰いましたぁ!」


「「「はぁぁぁ!?」」」


 ぎょっとした目で3人から見られる。


「大淀さん、貴方女性に対して恐怖はないのですか?」

「雪! どういうこと! 説明して頂戴! 貴方あれだけ女性が怖いって言ってたのに!」

「お兄ちゃんどうしたの!? 私が近づくだけでも、少し怯えてたのに!」


「どうって言われても、そのまんまとしか言いようがないんですけど……? というか今、海ちゃんをこうやって抱きしめてるでしょ?」


「「確かに……!」」


「お兄ちゃん~♪」


 海はよほど嬉しいのか頭をグリグリ俺の胸板に押し付けてくる。ちょっと痛い。


「あ、あの私にも同じようにできるかしら……?」


 ちょっと上目遣いで小鳥遊さんがこちらを見ている。


「もちろんいいですよ? ほら、海ちゃんちょっと離れて?」


「エェー……ちょっとだけだよー……」


 不満そうな顔をしながら海が離れていく、最初のクールな雰囲気は勘違いだったのだろうか?


 今の海は完全に甘えん坊である。


 海が離れて小鳥遊先生がゆっくり、ゆっくりと近づいてくる……じれったい!


「えいっ!」


「はぅぁぁぁぁ!?」


 あまりにもゆっくり近づいてくるもんだから、こっちから抱きしめてあげた途端悲鳴をあげていた、強く抱きしめすぎただろうか?


「どうですか? これでも女性に対して恐怖を抱いているように思えますか?」


 ついでに頭をナデナデしてあげる。


「いえ、しょんなk……も、もっと試さないと判断できないわ! このまま10分間! いいえ! 5分間!」


「ハイハイ」


「必要ないでしょ?」

「必要ありませんね」

「小鳥遊先生より、私で試して下さい!!」


 無慈悲にも他女性3人により引き剝がされていく小鳥遊先生はヤダヤダと駄々こねている。


 そして引き剥がしたことにより、生まれた隙を埋めるべくすばやく母親が抱き着いてきた。


「お母さんも抱き着くんですか?」


「お母さん!? 小さい頃しか呼んでくれなかったのに!」


「……私は普段お母さんを何て呼んでいたのでしょうか?」


「「おい」とか、「お前」とか……」


 以前のこいつは母親をどう扱ってんだ……


「今後はお母さんって呼んでもいいですか?」


「もちろんよ! 雪! それと変な敬語もやめて頂戴、家族よ?」


「あぁー……ごめん、ちょっとまだ慣れなくて気を付けるよ」


「えぇ、そうして頂戴。家族から敬語でしゃべられると距離を感じて傷つくわ」


「私も敬語とかいらないからね! あとちゃん付けも禁止!」


「わかったよ。二人とも」


「ということでお母さんも終了のお時間でーす」


「イヤァァァァァァァ!」


 こちらも先ほどと同じように女性三人による強制引き剝がしが行われ雄叫びがあがった。


「はい、お兄ちゃん次は私の番だよ?」


「いや、さっきまでずっとやってたからもういいだろ」


「と”ほ”し”て”そ”ん”な”こ”と”い”う”の”ぉ”ぉ”ぉ”!!!」


 この家族は雄叫びを上げるのがデフォルト仕様なのだろうか


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本日は一旦ここまで4話以降は明日更新します。

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