第73話 企業案件がやって来た
『はい、始まりました。よい子のみんな、こんアゲー!モグライブ2期生、Gemmyの揚戸メノウですっ!今日は私らバリキャリ部隊が企業案件を華麗に捌いてくぜー!』
:メノたそ〜!
:たそ最近アクティブだな
:バリ…キャリ…?
:こんアゲー!
:納品よ〜
:高性能お婆ちゃん見参
こんアゲー!
いやはや、こうしてダンジョン探索配信に加わるのも久しぶりな気がするな。
ここのところ、マリカとかアヴァロン村とか、ダンジョン外で行う企画が多かったし。
お嬢様は自己紹介の順番を待ちながら、静かに微笑んでいる。
先日巻き込まれた強盗騒ぎは、まだお心に暗く陰を落としているはずだが、少なくとも私やネイリストたちの前では、不安などおくびにも出さなかった。
気丈なお方だ。
いかなる手段をもってしても、私が守りお支えせねば。
『どもっす!!!!3期生、
:どもっす!
:ちゅばああああ
:相変わらず声でけえwww
うるっっっさ!!
いったい何デシベル出てるんだ!?
お嬢様が難聴になるといけないので、ボリュームをちょっと下げさせてもらおう。
…さて、仕事の話に戻るとしようか。
2期生の揚戸様とはマリカ企画でも共演したが、3期生の鳳様とは今回が初絡みだ。
お嬢様ほど長身ではないが、鳥の翼をイメージした、全身を取り巻くように長い髪パーツの影響で、とにかく輪郭の圧が強い。
『ハイホー!皆様こんリッパー!モグライブ4期生、とーめんたーずの
:こんリッパー!
:今日はどんなグロシーンが生み出されるかな
:ころせー!斬り裂けー!!
なんか、お嬢様はすっかりリスナーからそう言う方向性の期待を向けられる立ち位置に収まっとるな。
ご本人が割と乗り気だから、別に良いっちゃ良いんだけどさ…
ともかく、本日お嬢様たちは、エアポケット探索と呼ばれる少々特殊な手法で、企業からの納品依頼をこなす事になっている。
例え探査済みであったとしても、ダンジョン内にはどうしても、納品トロッコの駅を長距離に渡って設置できない区画と言うものが出てきてしまう物だ。
そうやって生じた、どの駅からも遠いエアポケットに配備された物品やガーディアンは、効率的に回収する事が出来ないため、探索者から敬遠される運命にある。
結果として、特定の素材が供給不十分に陥る事態がまま発生するため、一部の企業はそのようなダンジョン内のエアポケットに運搬車両で乗り付け、そこから最寄りトロッコ駅までのピストン輸送を行う事で、仕入れの不足分を補おうとするのだ。
これが、エアポケット探索。
必然的に機体備え付けのカーゴスペースでは容量が足りなくなるため、私たちゴーレム組は各機、武装用のハードポイントを流用して増設カーゴコンテナを装備している。
『こんブスで~す!って、誰がブスやねん!4期生、とーめんたーずの
:ベノちゃ!
:やつベノてぇてぇ
:この2人が揃ってる時の安心感よ
:圧倒的正妻感
せやろ、お嬢様と附子島様は配信内外どっちでも仲良しだからね。
以上4名でイポーリ・ダンジョン中のエアポケットを探索し、納品ノルマの達成を目指す。
もちろん、それだけでは味気ないので、道中の小粋なトークが配信者としての腕の見せ所だ。
『4期の子たちって、ツバサとは今回が初絡みだよね!声かけてくれてありがとー!』
『ですねぇ、よろしくお願いします〜』
『あっ、ツバサ先輩、今日は来てくれて助かりました。ありがとうございます。』
早速、お嬢様たちが、今回はじめましての鳳様と挨拶を交わしている。
過去配信を見た印象では、声も動きも大きい元気印という印象だったが、まあパッと見は評判通りだな。
通信越しでも音圧を感じるくらい声がデカい。
中の人のお姿を拝見した事は無いが、ひょっとしたらお嬢様のようなストライダー族とは体の作りが異なる人種なのだろうか?
私たちゴーレムも含めて、関係者みんなが正体不明のまま協働してるの、考えてみれば不思議な世界だよなー、バーチャルって。
『それでは、ポイントにはもう到着してるんで、早速お仕事初めて行きましょっか!全機出撃ーっ!』
揚戸様が号令をかけると、運搬車両の後部荷台の扉が開いた。
いつもほど厳密な前衛後衛の区別はなく、私たち全員が一丸となってノルマと闘う遊撃部隊だ。
はぐれると時間のロスになるので、そこだけは気をつける必要がある。
「それでは、行って参ります!」
お嬢様に体を操って頂けるのも久しぶりだ!
なんかテンション上がって来た!
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