第60話 続・焼肉回
「やっぱりツラミですかね。」
「タン塩お願いします。」
「あたしハラミ!塩ダレで!」
また肉だかモツだか判断に困るラインだな!
どれも枝肉には含まれないので、分類上はホルモンだったはず。
現在、お嬢様は4期生のご同僚と共に、マリカ交流戦の打ち上げで、焼肉を食べに来ている。
ちなみに、タン塩を頼んだのがお嬢様だ。
なんでもグレープフルーツサワーに合うんだとか。
「あーあ、いい線行ったと思ったんだけどなー」
お嬢様が頬杖をついてグラスの氷をカラカラ言わせている。
今回のマリカ対戦の結果について思う所があるようだ。
人気の先輩方とのコラボと言う事もあり、チャンネル登録者は増えたが、やはり負けたのは素直に悔しい。
まして最後に逆転された理由が運ゲーと言うのでは、納得しかねる部分もあろう。
私も正直、実力では負けていなかったと自負している。
「あはは、決勝ベビパは流石に…でも第1と第2レースでは、ヒーちゃん大活躍でしたよね。」
「さーせんwwwあたしは逆にベビパが1番の見せ場でしたwww」
とはいえ三者三様、皆様にとっては今回の企画を通じて、自分の配信者としてのセルフブランディングと向き合う良い機会にもなっただろう。
お嬢様のヤカラ路線は正直どうかと思うが、これもこれで個性。
実力の伴ったヒールは、様々な企画で重宝される物だ。
この方は一体どこを目指してるんだろう?
そして、そうそう。
今回の企画を通じてひとつ嬉しい事があった。
「ありがとー、ディアちが息あわせてくれたおかげだよー」
「いえいえー、ヒーちゃんのつよつよフィジカルへの信頼あってこそですとも。」
お嬢様と炎城様の中の人、ホーエンハイム様が以前より打ち解けたように感じられるのだ。
なんかお互いの呼び方も変わってるし。
模擬戦と言う適度な緊張の中、互いを生かすための駒として献身を示しあった経験が、2人の間にあった遠慮を払拭したのだろう。
そして、もう一つ。
『イヴ殿のクサリガマも見事でしたね。有効さもさる事ながら、よくぞ、あのタイミングまで気付かせなかったものです。』
『それな。いきなりチェーンデスマッチが始まった時は度肝を抜かれたぜ。イヴやん、何か心境の変化でもあったのかい?』
隠密あるいは狙撃手として、これまで接近戦は選択肢の外に置いてきたイヴが見せた、あのアグレッシブな戦い方に、ベノ民のみならず4期生のリスナー達はさぞ鮮烈な驚きを刻み付けられた事だろう。
『…別に深い理由はない。ただ、貴機らが前で戦っている間、某だけが後ろにいては、画面構成に余白が過剰と考えたまでの事。』
な、なるほど…!
流石に個人勢の頃から人気だった配信者のゴーレムは視点が違う。
勉強になります、イヴ師匠!
デビューから2ヶ月ほど経ち、お嬢様たちも自己紹介はいい加減済んだ頃合いだ。
我々もそろそろ、新たな一面を見せていくべきフェーズか。
「…戻りました。あとの2人も着いたみたい。今メール来た。」
おっと、お手洗いに立っていたメイザース様が戻って来たか。
揚戸様と米良様の中の人たちもそろそろ合流するようだ。
「おーす、盛り上がっとるかー、チビっ子ども!」
「みんなお待たせ〜」
揚戸メノウことスカーレット・ケリー様と、米良ルリ子ことアズール・ド・ネルヴァル様。
もちろん姿形はアバターとは異なるが、やはり細かな所作に配信の面影がある。
こうして本体同士が直接会って交流できる点だけは、少しだけ有機生命体が羨ましくなるな。
コアと体が別々になった、私たちゴーレムには縁遠い話だ。
はたして、先輩方の中の人たちはどんな方なのか、まずは肉の頼み方から見極めさせてもらうとしよう。
「あ、私冷麺たべたい!」
「コムタンクッパで。」
まさかの初手汁物!!!
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