第29話 第3暫定ルート②
:ホムちが1箇所目の安全地帯見つけてた
:第四資材倉庫のデカい奴のすぐ先だって
『マジで?ホムラちゃんはっや!』
「こちらも負けていられませんね。ボーナスを稼ぎつつ、先を急ぎましょう。」
さーせん、実は私だけ別窓で見て知ってました。
放火魔のロイが予想以上に強くてビックリしております。
ネイリスト達は盛んに鳩行為を行って、我々を焚き付けて来る。
大分奥まで来たつもりだが、深度は依然として500。
それどころか、進むにつれて少しずつ上昇してすらいるようだ。
その証拠に、傾斜をつけて荷物を自重で流すローラーコンベアが、所々に設置されている。
どうもイズミールは、垂直よりも水平方向に長いダンジョンらしい。
:上の方から細かい部品が流れて来てたんかな?
『そだねー、ローラーコンベアって、あんまり重い物運ぶのには使わないから。箱詰めされたネジとかじゃない?』
ここまでの探査結果を見るに、第3ルートはこの工場で製造された機械製品の搬出口から、上流工程へと逆走するルートだ。
組み立てラインを抜けた先に、部品・部材の運搬通路が現れるのは至極当然だろう。
炎城様の大暴れが遠ざかったためか、持ち場に戻ったガーディアンの姿もチラホラと確認できる。
早速接敵した。
アタッカータイプ!
『あっ、バルクヘッドやん!エデンの方ではよく出るって聞いた事あるけど、国内では初めて見るねー』
お嬢様がリアルとアバター両方で舌なめずりをする。
暗がりの向こうから現れたのは、ゴリラを思わせるシルエットの近接格闘型ガーディアンだ。
その名もバルクヘッド。
手足に用いられている人工筋肉が現代の技術では再現困難な代物で、人気が高い。
四肢をもいで皮を剥ぎ、中身だけをこそぎ出せば大分かさが減るので、お土産としてカーゴスペースに入れておくのにちょうど良いだろう。
:ハルやんの雰囲気が何か怖い
:やつざきから悪影響を受けて…
:家庭環境が招いた悲劇
『おー?やんのかー?お前ら隙あらば人をサイコ扱いしやがってよー』
まあ、お嬢様の影響と言うのも、あながち間違いではないか。
おかげですっかりガーディアン相手に物おじする事がなくなった。
「BBUOO!」
こんな奴ら、私から見れば全て、お嬢様に献上するための供物でしかないからな!
バネ仕掛けのように跳ねて飛びかかって来たバルクヘッドを、パルスブーストで左に回避。
敵機の背中に私の右肩から射線が通る。
ライトショルダーユニット起動。
風精スピンニードルミサイル。
爆発を伴わない、コバルトハイス製の螺旋型弾頭に、風の術による高速錐揉み回転で貫通力を付与する、言わば徹甲ミサイルだ。
本来の用途は装甲や電磁シールドの突破だが、爆発しないという特性が、狩りのお供にもありがたい。
『肩を抉らないように気を付けてねー!』
「承知いたしました。腰部ジョイントを狙います。」
SMASH!SMASH!SMASH!
ニードルミサイルがバルクヘッドの身体を掠める。
直撃させる必要は無い。
外装に裂傷を入れて、動きを鈍らせれば十分だ。
せっかく爆発しない武器を使ったのに、下手に胸部の動力炉を傷つけて、人工筋肉が焼けてしまっては元も子もない。
「『止まりなさい!警告が聞き入れられない場合は発砲も辞さない!』」
「GYYY!」
オートボウガンで弾幕を張り、跳躍を誘う。
素直にニードルミサイルで貫き易い高さに飛んでくれればよし、さもなくば…
「GYSSSH!」
『流石に、そう上手くはいかんよねー!!』
地を削るようなヘッドスライディング!
更にそこから信じがたい速さで跳ね上がって来た巨大を、電磁クローでパリィする。
所詮はこちらが与えた2択。
どちらを選ぼうが結局は私の掌の上だ。
体制を崩した所に再びニードルミサイルを撃ち込む。
大きく腰が抉れた。
ここまで持ってくれば、後は…
『こっちだよノロマ!』
「GBGG GB…!」
お嬢様はゆったりと巡航ブースターを噴かし、私をバルクヘッドの背後に滞空させる。
敵機が跳ばざるを得ないように。
果たしてバルクヘッドは、こちらに向き直る時間を惜しんで、身体をひねりながら、高速で斜めに跳び上がった。
今にも千切れそうなほど深く裂けた腰を、更にねじって。
そんな事をすれば、結果は自明だ。
「GPBBYYIEE!?」
ゴギン、と嫌な音を立てて、バルクヘッドの上半身と下半身が真っ二つに割れる。
ズタズタに痛んだジョイントが、自分自身の人工筋肉が生み出すパワーに耐えきれなくなったのだ。
:うわエグ
:グロ注意
:やつざきの配信は毎回どっかしらR18Gなんよ
『これが一番パーツが傷まないのー、バルクヘッドの人工筋肉、四肢ひと揃いセット!こりゃ10万は行くね!うひひひ』
ま、一応うちらも地獄の拷問官って事でやらせてもらってますんでね。
ブランディングですよブランディング。
アタッカーの巡回ルートがあるのでは、この付近にトロッコは通せない。
もう少し先まで行くとしよう。
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