第28話 第2暫定ルート①
『どうせ、ゴーレム一機のカーゴスペースに積める金目の物なんてタカが知れてるであります!狙うは一点!トロッコ駅候補地の発見インセンティブのみ!進めーーッッ!!』
また思い切った戦略だなおい!
炎城様は狩りを一切せず、進路場の敵をことごとく燃やし尽くして最短距離を突き進んでいる。
確かに、ルールに照らせば理屈は間違っていないが、本企画において第2・第3ルートのトロッコ路線延伸成功は、半ば確定事項だ。
同じ条件なら、プラスアルファの無い炎城様は、お嬢様に確実に負ける。
勝負を捨てて笑いを取りに来たか、あるいは…
「ボス、爆雷じゃ火力が足りませんぜ!今日中に新駅を2箇所作ろうってんなら、1グループ1トリガーで吹き飛ばして行きませんと!」
やはりそう来たか!
探索者としては少し落ち着けと言いたいが、配信的には悪くない筋書きだと言える。
トロッコ駅候補地のインセンティブは、さっきお嬢様が最良に近い状態で狩った、大型ガーディアン丸ごと一体分の買取金額より高いのだ。
それを2回獲得されれば、こちらの逆転の目は薄い。
成功すれば勝ち確、失敗すれば負け確。
単純明快で分かりやすく、それでいて運頼みにはならないため、中弛み無く盛り上がる。
ディテールにこそ付加価値を見出すお嬢様の配信とは対極に位置する発想だ。
『承認!肩部大口径榴弾砲の使用を許可する!埒を開けよ、ロイ!』
『あ゛ ーーーっひゃっひゃっひゃwwwホムち節全開wwwww』
『ひぃぃぃ!?ホムラちゃん!その炎ぜったい第3ルートの方に持ってこないでよ!?』
他の2人も一瞬にして、このホムラ劇場の登場人物に仕立て上げられてしまった。
特にお嬢様のリアクションは、炎城様にとっては美味しいだろう。
:まーた炎城が炎上しそうな事やってる
:炎城組とネイリストで全面戦争になるぞwww
:これで壁は燃やしてないのマジ職人芸
コメント欄のテンションも目に見えて高い。
ちなみに炎城組と言うのは、ここのリスナー達のファンネームだ。
反応を見るに、こう言う無茶苦茶には、もう慣れっこなのだろう。
『むむっ、進行方向右手に開けた構造を確認!これはディフェンダーの予感!炎城組の諸君、松明は持ったな?』
:持ったどー!
:火を放てー!
:魔女狩りだー!
おい、最後のやつブーメランが推しに当たってんぞ。
中の人の素性を知らないから、仕方ないんだけども。
ともかく、炎城様の見立て通り、第四資材倉庫と書かれた広大な空間の出入口を守るように、大型ガーディアンが立ちはだかっていた。
『トライアングラーか。本来はエルドラド大陸のダンジョンによく見られる機種なのですが、流石は万魔殿イズミールでありますな!』
トライアングラーのモデル生物は、かの有名なトリケラトプスだ。
ずんぐりした四足歩行のボディに、首周りを守る襟飾り状の実体シールド。
更にそこから突き出た3本の角は、先端から雷の術で電撃を放射する半魔力兵器となっており、本機を攻防一体の移動要塞たらしめている。
:なんだこれ初めて見た
:炎城は詳しそう
:どうやって対処すんのー?
ふむ、私なら飛行能力に物を言わせて、めくりからバックスタブを入れる所だが、重量フレームのロイにそこまでの機動力はあるまい。
お手並み拝見といこう。
『まずはその厄介な角をフッ飛ばしてやるであります!ロイ、大口径榴弾砲で攻撃開始!』
「ラジャー、ボス!」
ロイがブーストを噴かすのとほぼ同時に、トライアングラーも動いた。
3本の角それぞれの頂点が蒼白く輝き、電光で結ばれた三角形を空に描き出す。
本来は非効率で実用的とは言えない空中放電を、飛び道具として運用するための簡易増幅魔法陣。
トライアングラーと言う名前の由来だ。
ZAAAAAAP!!!
来た!電撃はその名の通り電気の速度、すなわち光速の一撃だ。
あらかじめ遮蔽物を用意しておかない限り、回避のしようがない。
我々ゴーレムの外装材も主流は金属だ。
クリーンヒットしてしまえば、いかな重量機と言えど、内部機構に無視できない損傷を受けるだろう。
果たしてロイは…
「悪いが、それの躱し方は知ってるんだな、これが。」
…無傷?
ロイの右手から吹き出している火炎に吸い寄せられるかのように電撃の狙いが逸れ、その先で焼き焦がされているガーディアンの残骸をバチバチと苛んでいる。
「知ってるかい?炎ってのは大気よりも電気が通りやすいんだぜ。なんたってプラズマだからなぁッ!」
言うが早いか、今度はロイが右肩部から恐ろしい太さの榴弾を、トライアングラーの顔面めがけてブッ放した。
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