【029】これじゃあまるでゲーム廃人だ。
「――って、これじゃあまるで、ゲームしてるのに暇だって言ってたゲーム廃人さんみたいじゃないか……」
ずっとゲームをしているに等しい現実が訪れたとは言え、砂月は今度こそハッとした。そして、気合いを入れ直す。
「ゲームとして考えるなら、遊んでるんだから、楽しまないと、全力で!」
そう口にし、砂月は出来ることを考える。
「まず【真世界】まで全然動いてなかったものとして、【オープン機能】があるじゃん、俺! 【オープンチャット】と【掲示板】。どこにいてもみんなと話せるんだから、落ち着こう」
ブツブツと口走った砂月は、視線操作で【menu】を開いた。
そしてまずは【掲示板】を見てみる。
「ええと……」
よく見てみれば、そこには、半チュートリアル世界までとは比べものにならない数のスレッドが並んでいた。どうやら、匿名でもキャラ名でも書き込みが出来るようで、キャラ名の場合は、名前のところからメール機能の宛先に遷移できるようだった。それはオープンチャットの発言者欄も同じらしい。
発言があるとスレッドの位置が上下するようだった。
「一番活発なのは……」
砂月は上から順番に見ていくことにした。
◆◇◆
1:今日倒したフィールドmobの数を書き込むスレ
2:フレンド募集総合
3:うちのギルドのここが嫌!
◆◇◆
等など。
「なんだか三番目のところは匿名専用設定になってるな。うーん。名前からして闇が深そうだから見なくていいかな」
砂月は乾いた笑い声を発した。
元々ぼっちだったのは、こういった暗黒面に近づくのが怖いというのがあったからだったようにも思い出す。いや、本当にそうだったのだろうか? 考えてみると思い出せない。
「だけどここのスレッドを見てるだけでも一日は潰せそうだな」
新発見した事実に、砂月はひとまず胸を撫で下ろす。
続いて、オープンチャットを見てみた。こちらはリアルタイムで話せる場所で、カテゴリわけがされていた。砂月は、【ジャンル】を【雑談】にして見た。
◆◇◆
1:今暇な人喋ろうぜ!
2:おすすめの料理レシピ
3:【葉竜オホシサマ】までクリア済みのガチ専用
◆◇◆
等など。
「【葉竜オホシサマ】かぁ。優雅くんと出会ったのが懐かしいな。だけど、ここを倒すとガチ勢扱いなんだ、今……なんだろうな、本当に俺が知ってるのとギャップが……」
砂月は笑ってみたが、その表情は引きつった感が否めない。
『砂月、いるか?』
その時、視界の下に活字が流れた。ギルドの文字チャット欄だ。
『いるよ!』
即座に砂月は反応した。名前を見れば、静森からで、ギルメン一覧を表示させれば、静森の名前が光っていた。
『どうかしたの?』
『なにもなければ話しかけてはダメか?』
『ち、ち、ち、違うよ! 嬉しいよ! どんどん頼む!』
『冗談だったんだが、そんなに慌ててどうしたんだ?』
『別に! ところで本当に用件は無いの?』
これまで静森が連絡を寄越したのは、定期連絡以外では、本当に大至急の緊急的な、物資の支援希望などだった。それこそ、誰かが死にかけているから、強力な回復アイテムをわけてほしいというような、そんな話題ばかりだった。
『実はある』
『……そっか』
そう言われて、砂月は寂しくなった。用件が無ければ声をかけてくれないのだと思い知らされた気がしたからだ。
『ギルド同盟機能についての話だ』
『うん……うん?』
『今、【胡蝶の夢】は【LargeSTAR】と同盟の話が出ているが、俺はその前にどうしても、【おどりゃんせ♪】と同盟を組みたい。その話だ』
『どういう事?』
『会って直接話したい。【福成亭】に来られないか?』
『分かった。何時?』
『誘ったのはこちらなのに悪いが、十六時以降が望ましい』
『いいよ。十六時に行くけど、二十時までに来なかったら帰るからね』
静森が遅刻しがちだという事は、砂月はよく分かっている。例外的に会う場合は、八割は遅刻してくるからだ。それだけ予定がつまっているらしい。
『分かった。では、十六時過ぎに……遅くとも二十時までに俺は福成亭へと向かう』
こうして、本日は第三木曜日ではなかったが、砂月は約束を取り付けたのだった。
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