【028】今日は何をしようかなと考える

 瞼の向こうを陽光が照らしだしたようで、温かい光に体が包み込まれている気分だ。毛布を抱きしめて眠っていた砂月は、体を起こして欠伸をした。


「今日は何をしようかなぁ」


 努力する事が日課だった砂月であるが、その目標は、【真世界】に来た時に、備えがあるようにであった。しかし自分が考え得る限り万全の現在、新しい出会いを得ること以外には、既にいくつもの新実装のボスなども確認した今、次にまた街掲示板にお知らせが来るまでは、なにもやる事がない。


「……」


 目標が消えてしまったような、ゴールを切ったような。

 本当はスタートラインに立って間もないはずなのだが、何故なのかやりきった感がある。


「本当……何をしよう……」


 考えてみると思いつかないままで、砂月は顔を洗った。洗面所で、水で顔を洗ったが、しゃきっとしない。


「なんだかやる気が起きないなぁ」


 やろうと思えばなんでも出来るはずで、その時間もある。上手くいくか失敗するかは兎も角、挑戦は可能だ。なのにそれをする気が起きない。何故ならば、ある程度やってしまい、なんとなく結果の想像もつくからだ。


「……」


 一緒に過ごした静森と優雅が多忙なだけに、自分の暇さがいやでも目につく。


「ううん、予定は自分で立てるものなんだし。比較してネガってても仕方ないだろ、俺!」


 砂月は気合いを入れ直してみたが……なんとも空しかった。

 今後、死ぬまでこんな感じなのだろうかと思えば、憂鬱ですらある。


「……おかしいな? ボスを倒してるだけで楽しかったはずなのに」


 【真世界】に来た当初もそうだった。だが、やはり大多数の者がいる事により、砂月には変化があったといえる。比較対象が出来てしまったことだ。多くの者は、レベルや装備の充実度などを他者と比較したりするのかもしれないが、砂月の場合は違った。ここに来て、改めて気づいてしまったと言える。


「やっぱり俺、ぼっちじゃん!」


 完全に孤独では無い。恋人の静森も、親友と言っていいだろう優雅も、最近知り合ったプリン評議会の面々もいる。だが、何故なのか関係性の希薄さを感じた。そう、自分は……あまり、頼られたりしない。先方から構われたりしない。


「優雅くんは、連絡しにくいって言ってて、実際これまでそうだったと思うけど……はぁ。今ならいつでも連絡が欲しいよ。だけどこれまでいらないって言ってたのに、急に欲しいなんて言い出したら、俺都合良すぎだ……。暇になったから構ってくれって、俺それどうなんだよ!」


 つらつらと言いながら優雅を、そしてすぐに静森を思い浮かべた。

 どこかで、【真世界】に来たら、毎日静森と一緒だと、思っていたようにも感じる。だがそんな現実はない。


「俺……静森くんともっと一緒にいたかったのか……いや、まぁ、それはそうだけど」


 こうして悶々と、朝から考え込んでしまった砂月だった。

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