【017】恋人になる

「せ、静森くん、あ、あのさ」


 夜。

 二人きりで寝台に上ったところで、砂月はシーツの上に正座した。


「なんだ?」

「あ、あ、あの、あの! あのですね! お、俺ですね、そ、その!」

「ああ」

「俺も静森くんが好きなようです!」

「――そうか」


 するとその言葉に目を伏せ、嬉しさをかみしめるような顔をしてから、優しく静森が砂月を抱きしめた。そして頬にキスをしてから、目を開けてじっと砂月を見る。


「砂月。俺と付き合ってくれるか?」

「はい!」

「幸せだ」

「う、うん。俺も」


 そのまま静森は、砂月の体を優しく寝台に横たえて、抱きしめ直した。


「今日は疲れているだろう? ゆっくり眠れ」

「うん」


 頷いた砂月は、そのまま睡魔に飲まれた。実際日中体を重ねたことでの疲労が、まだ全身に残っていたためだ。静森の体温が横にあると、意識もするのだが、安心してしまって眠くなる。それも手伝い、この日砂月は爆睡した。


 翌朝目を覚ますと、やはり腕枕をされていた。


「静森くんって早起きだよね」

「そうか?」

「俺が起きると、いつも俺のこと見てる。先にベッドから出ていていいけどな?」

「可能な鍵お前のそばにいたいし、ずっと砂月を見ていたい」

「……っ、あ、はい」


 静森の言葉にいちいち照れてしまうようになった砂月は、そんな自分にちょっと呆れた。


「今日の朝は何が食べたい?」

「砂月の作った品なら全て俺は食べられる」

「おっけー! キャロットライスにするね!」

「俺は何かお前を怒らせたのか?」

「べ、別に! 全てって言うから……――あ!」


 その時静森が、砂月の体を押し倒した。そして意地悪く笑う。


「キャロットライスでも構わないが、その前に砂月が食べたい」

「ッ」


 静森が砂月の首筋にキスマークをつける。そうしてあっさりと砂月の服を開けた。


「ま、待って。まだ朝だし!」

「夜ならいいのか?」

「う……」

「そういうことだな?」

「え、えっと……分かったよ……静森くんが好きなオムライスにするから、だから、あ、あの……」

「嫌か?」

「……今からしたら、朝ご飯作れない……」

「俺が作る」

「……っ、ぁ……もうずるい! ずるすぎる! ずるすぎるだろ! 嫌なわけがないだろー!」


 真っ赤な顔で叫ぶように言った砂月の姿に、笑うばかりだ。砂月はそのまま服を全て脱がせられていく。


 その後抱かれて、砂月は瞳を艶で濡らした。

 事後。


「砂月、休んでいろ。俺が作る」

「ん……」


 砂月は素直に頷いた。全身が弛緩していて、事後の余韻が抜けない。

 そのまま静森が寝台から降りて出て行くのを見送り、砂月はふと思いついてステータスを表示した。


「HPが減ってる……! SEXってHP使うのか!」


 衝撃の事実に唖然としながらも、ならば回復スキルを使ったらすぐに元気になるのだろうかと考えて、試してみた。するとHPは全回復したのだ、が。


「……駄目だ。気持ちよかった感覚が抜けない……元気は出てきたけど、腰がまだ変だ……!」


 呟きながら砂月は真っ赤になる。最近自分は赤面症気味だと思ってしまった。


「静森くんが格好いいのが悪いんだ。上手いのが悪いんだ。全部静森くんのせいだ。静森くんが悪い。静森くんを大好きな俺は悪くない!」


 普段、人の静にはしない砂月であるが、今回ばかりは別だった。

 このようにして、二人の関係性は、恋人に変化したのである。


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