第4話

いつも通り、あたしは職場に着き、朝の回診の準備をする。


「おはよう。松村さん。」


常駐のドクターの西村先生だった。


「おはようございます。」

「僕がいない間に鈴木さんを病院に連れて行ってくれたみたいだね。ありがとう。」

「いえ。大事にならなくて良かったです。」


西村先生はコーヒーを入れる。

西村さんは30代後半くらいのメガネに優しい笑顔が特徴の先生だ。


「前の人が辞めちゃって、すぐに松村さんが入ってくれたから、助かったよ。」


西村先生コーヒーは飲みながら笑顔で言う。


「タイミングですね。」


あたしも笑顔で答える。

そこへ三戸さんが出勤して来た。


「おはよう。松村さん。来月くらいに松村さんの歓迎会やろうと思うんだけど、どう?

こんな事があって、なかなか言いだせなかったんだけど・・・でも、ずっとやってなかったし。」

「ありがとうございます。是非、参加します。」


◇◇◇◇◇


それから1ケ月がたった。

坂田さんの件は、結局、自殺という事でおさまり、あたし達は通常の日常を取り戻した。


今日は職場の人達が、あたしの歓迎会を開いてくれた。

松田さん行きつけの居酒屋さんだ。


「あまり飲みすぎるなよ。」


非番の令音れおが車で送ってくれた。

あたしは車から降りて、開いた窓から小声言う。


「わかってるって。ねぇ、帰ったらヤル?」

「お前の酔い方しだい。」


チュッ


「あ、早く行って!みんなに令音の事知られたら面倒くさいから!」

「了解!」


「松村さ〜ん!」


松田さん、三戸さん、兵藤さんが手を振る。


「今行きま〜す!」


あの時の事情聴取の刑事が彼氏って知られなら、なんかね・・・

嫌な事聞かれた人もいるかもしれないし。


「あの無能な刑事が、あなたの彼氏?」


はぁ?


村松だ。

お前も来たのかよ。


「無能かどうかは、わかりませんけど。」


人の彼氏を無能って、なんなんだよ!


「無能じゃない。結局、わからないままなんでしょ?坂田さんの件。」


なんなんだよコイツ、あったまきた!


「あなたね!ずっと思ってたから言わせてもらいますけど!そういう物の言い方、やめた方がいいですよ!

人の彼氏の事どうこう言って、自分はどうなんですか!?」


村松は睨んでくる。


「あたしも言っておく。

あなたも、あたしが嫌いかもしれないけど、あたしも、あなたが大嫌いだから、嫌い同士仲良くする必要も無いし、近づく必要も無い。

今後、一切あたしに近づかないで。」


なっ・・・


なんだコイツ!?


ドンッ!


あたしはビールをテーブルに置く。


「あたしが何かしましたかぁ〜?

村松さぁ〜ん!」

「ま、松村さん、ちょっと離れて飲もうか。」


三戸さんが、あたしと村松の間に入る。


「あんたの態度は、ほんっっと気に入らない!新人ですけどぉ〜、ハッキリ言いますよ。」


怒りに任せて飲みまくって、あたしはベロベロに酔っ払ってしまった。


「あんた、ムカつくの!」


バシャ!!


「松村さん!!」


みんなが驚く。


あたしは村松の顔にビールをぶっかけた。

みんなが慌てて、村松におしぼりを渡すが、村松は、そんな事には御構いなしに、スマホを持ち、警察を呼んだ。

あたしはパトカーに乗せられ、彼氏の職場に連れて行かれた。




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