悪神と護神
ふわりと浮かんだ雲の上に創神はポフンと現れた。
「わっ。な、なに?」
その上から大気の神、さらにその上からまりあが落ちてきた。
「いでっ」
「きゃっ」
「むぎゅ!」
鳥の神は難無く綺麗に着地している。
「?」
「あっ火の神〜!」
「どわーっ何じゃい一体!」
「いったぁ!」
続々と神様たちが雲へと降ろされる。
「ここは……
祠雲?……一体何で…」
神様たちの集う場所、馴染みのある場所…
祠雲に突然集められ動揺を隠せなかった。
ーー良かった。皆無事で……
「!」
創神は微笑むが…
ピシッ……!
そんな張り詰めた空気が神様たちを襲う。
そして一点へと視線が集まる。
御霊の神、音波の神、死神
全能神。四人が祠雲の建物の上に立っていた。
(御霊の神…)
大気の神はやはりと眉根を寄せて見上げていた。
(御霊く……御霊の神
それに…あの女…!!
けど……)
どの神も思う事は一緒だった。
あの男から発せられるオーラは……
あの男から目を離す事が出来ない…!
全能神へと向けられるものだった。
全能神は変わらない笑みで見下ろしていた。
青ざめたり、冷や汗を浮かべたり…敵意を剥き出す者達の中、
創神とまりあは違っていた。
まりあはピアスを揺らしながら眉下げ全能神を見つめていた。
御霊の神が一歩前へ出る。
「皆さん、お久し振り…」
「御霊の神…やっぱり君も関わっていたんだね」
創神が言うとすぐ近くから男の猫なで声が聞こえてきた。
「ウフフ…☆
アナタとっても素敵ね〜」
「!!!」
声の方へと顔を向ける神様たち。
そこには熱の神の顎を掴んで、至近距離で物色している死神がいた。
「貴様」
熱の神は鋭い眼光を死神へと向ける。
それには死神は恍惚の表情を見せた。
「ゾクゾクしちゃう、その瞳♪」
「離れて下さい」
夜の神は死神の腕を掴み、熱の神から引き剥がした。
「見ていて、気分が悪いですよ?」
「ウフ、怖いのね。
でもアナタも好きだわ〜♪」
ふわりと死神は元の場所へと戻っていく。
「余計な事を。お前が邪魔しなければ消していたものを…チッ」
「熱は野蛮ですね〜」
腹の虫が治まらない熱の神に対して夜の神は笑っていた。
「♪」
「…何やってるんだい、勝手な行動を取るんじゃないよ。」
音波の神は呆れながら死神に言う。
「ウフフ…、あの二人はアタシの獲物よ。手出しちゃ嫌よ」
そこへゆっくりと全能神が顔を少し上げた。
「クック……久し振りだなぁ…
創神……」
「初対面だよ。君のことは、私は知らない…」
その返答に不服だったのか御霊の神は見下した様に創神を見やった。
「言葉を慎むが良い、創神。
こちらの御方は、全能神とあらせられるぞ」
「…私は、全能の神を知らない。
君達は一体何者なの?」
創神も皆の長。肝は座っていた。
「俺達はお前達を護る神、
護神と呼んでいる。」
全能神は空を見つめ続ける。
「なら俺達は……
悪神と呼ぶべきだろうなぁ…クック
死神、音波、そして御霊…
俺の…悪神の幹部だ…」
「ふ、護神だの悪神だの随分安直だな」
火の神が言うと隣にいた花の神は彼の名を呼びながら服を少し掴んだ。
「安直だが……分かりやすいだろう…?」
「……」
火の神はそれ以上何も言わなかった。
「全能様に変わり俺が貴様等に説明してやろう。
こうして穏やかに目の前で話すのはこの先一切無い。良く心して聞く事だ。」
皆の視線は御霊の神へと集まる。
「我ら悪神は奇襲期を終え本格的に動く。
この世界を全て我らのモノにする
邪魔立てしようなどと感がない方が身の為だな」
「……貴様ら言ったっスよね。俺らは護る神だと
世界を滅茶苦茶にされ何もしないでいるのは、護る神でも何でもないっス……」
大気の神は敵意を露わにして声を張り上げる。
「全力で邪魔立てするっスよ…!!!」
「ならば消すしか無いようだ
だが、俺達と対峙する前に異界の者に消されない事だな」
御霊の神は蔑んだ様に大気の神へと向けた。
「理解出来たか…?」
全能神は煙管を取り出しながら声を発する。
「……。
……どうして、こんな事を?」
創神の問いに全能神は煙管を口元にやる。
「貴様の創った世界が気に食わなかったからだ…
ククク…鮮やかな世界は要らない…
全てを飲み込む黒だけでいい……」
「創神様の創ったこの世界は…」
「!」
突然話す、まりあに大気の神は焦りを感じた。
しかし彼女は真っ直ぐ全能神を見ていた。
「とても素敵です。
全能様もちゃんと見てあげてください
キレイな世界ですよ」
全能神はまりあを見る。
何を考えているのか解らないが、一瞬、ほんの一瞬だけ張り詰めた空気が和らいだ気がした。
「クック……
せいぜい足掻きなぁ……
早々とやられてくれるなよ…
つまらないからな…」
その言葉を皆に残し全能神達四人はスゥ……と消えていった。
四人が居なくなると緊張の糸が切れ、花の神や魂の神達はその場にへたり込んでしまった。
「何故……
全能神は私に【久しぶり】と言ったんだろう」
創神は視線を落としていた。
「貴様、まりあと言ったな」
熱の神は唐突に彼女の前へと行く。
「あ、はいっ」
「何故、臆すること無く悪神の長と話せた
まるで友人以上の様に接している様に見えた。」
それに、と熱の神は続ける。
「そのピアスからは悪神のオーラを感じる。
貴様、本当にただの人間か」
「出しゃばった真似をしてごめんなさい…。
でも、私…ただの人間です…。全能様に会うのも初めてです」
「止めなさいよ、気配で分かるでしょ。熱の神」
水の神が止めに入る。
「じゃ、また異界の者狩りと悪神探しですね
皆さん死なない様に健闘を祈りますよ
行きましょう、熱」
夜の神はニコリとした表情で祠雲を後にする。
「皆また行ってしまったの…
まりちゃんは私が守るから安心して欲しいの」
「鳥の神様…」
ーーどうか、
またこの祠雲に全員集まれますように…
不安そうに創神は、皆の消えていった空を見つめていた。
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