本性


魂の神達が祠雲へ向かっている頃、鳥の神とまりあも浮雲で同じ場所へ向かっていた。






「あれ?」




不意に下を見たまりあが何かを見つけた。




「どうしたの、まりちゃん」






「あそこに倒れているのは花の神様じゃ…」




鳥の神も見て無表情で呆れた声を出した。




「本当なの。あんな所で寝るなんて汚いの」






地上へと下りて、花の神を抱き上げ浮雲に乗せてやる。




「祠雲へ行くの」




「祠雲?」




「皆が集う創神の居る所なの。」










ーーーーー






「異界錠の鍵を盗まれた…?」






大気の神は眉間に皺を寄せる。






「何やってんスか、アンタ」






俯く魂の神。






「まぁまぁ!魂の神も攻撃受けて大変だったんだ!責めてやんないでくれっ」




オロオロしながらも海の神は庇っている。






「で、今誰か門の見張りをしてるんスか?」




「あ。


忘れてたな」






(呆れて言う事なしっス)






「御霊の神はどうした」






火の神も呆れつつ魂の神へと質問を投げかけた。






「………。


御霊くんは…朝起きたら居なかった…」






「じゃあ犯人は御霊の神なの?」






戻ってきた鳥の神と、まりあ。


まりあは心配そうに花の神を見ていた。






「花の神!?」




「…!」






創神が名を言うと、火の神も反応した様に花の神をその視界に入れる。






「花…っ」




魂の神も心配そうに眉を上げた。






「花壇の所に倒れていたの。」








大気の神は目を伏せてから皆を見る。






「三組になって動くっス。


御霊を探す組、ここに残る組、異界の門を見に行く組。


異界の門を見に行くのは俺と、火の神、熱の神、夜の神。


他の人選は任せるっス。」






淡々と言うと大気の神達は祠雲を後にした。






「まりちゃんはここに居るの。花の神もいるし、私が守るの」




「は、はい」




まりあは小さく頷いた。




「海!私と来て!心当たりがあるの!


御霊くんがいる所っ」




「えぇ?!薬の神は?行かんのか」




「花の神を見なきゃ」




「何だよー」






慌ただしく魂の神達も出ていく。


それを見送り、まりあは小さく




「皆さん…無事に戻れますように…」




そう呟いていた。








「チッ」




「アンタのせいじゃないスよ」




火の神を宥める大気の神。




「だが我の管轄内で起きたこと。


我の責任だ」








ーー火の神ー!ーー




花の神のふんわりした笑顔が脳裏を過ぎる。




ーーあの女に限って…






火の神は目を伏せた。








ーーーーー






「お、おおおおっおい!


もしそこに御霊の神が居たら私達だけで何とか出来るのか?!」




「うっさいなー…」






魂の神の横顔は焦りと不安でいっぱいだった。






ーー御霊くん…!!






着いた場所は湖雲の屋形船。






「み…」






柔らかく細い薄紫の髪が夜空になびいていた。








「御霊くん…!!」






こちらを見る御霊の神は変わらずの表情だった。




「魂の神、良くここに俺が居ると解ったね」




「この屋形船を褒めていたから…!


今までどこに居たの?!」






二人は屋形船に降り立ち御霊の神を見ていた。






「もう、必要無いか」






そう、彼が言うとゾクリと冷たい空気が当たりを覆っていく。




「!?」






「魂の神が俺を探せて礼と別れが一応言えるな


色々と護神の事を教えてくれて、少々助かった」






下を向いていた御霊の神が顔を上げると冷徹な表情になっていることに、二人は息を飲んだ。






「花の神からも念の為に探りを入れたが…無駄に終わっただけだった。」




「冗談だよね?!


ねぇっ御霊くん!!


戻ろう!?天別室凄いことになってるの!御霊くんが居ないと大変なんだよ?!


ねぇ!戻ろうよ!」




悲痛な魂の神の叫びに無表情で見ていた御霊の神はスっと黒く歪な鍵を持って見せた。






「それは…」






わなわなと震える魂の神。






「な……んでっ


あんたが持ってるのよ!!!」






「必要だったからな」






魂の神の激昂にも動じない御霊の神は鍵を二人の足元へと投げる。






「だがもう、必要無い」






「仲間だと…思っていたのに…!!」






涙を溢れさせる魂の神に、御霊の神は口元を緩めた。






「ふふ…


哀れだな。さようなら」






「ちょっと待ちな。


お前が一体何者か解らんがな、魂の神を傷付けるのは許さんぞ、一発殴っていいか」






海の神は笑ってこそいたが眉根を寄せていた。




「海…」






そんな海の神を見やってから、ふわりと体を宙に浮かせる御霊の神。








「生憎俺には時間が無くて。殴られるのは次にしておこうか。


いや、次も無いかもしれないな」






言うと、満月の夜空へと御霊の神はスウっと消えていった。






「……!!」




見送るしかできない二人。








「アイツ…浮雲無しで空をとんだぞ…」




「そこ?」




「それに私たちのこと護神って…


護神じゃないのは何て呼ぶんだ?」




「コンランしてんのね」




けれど魂の神は海の神が居てくれて良かったと心から思っていた。




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