変動






「う〜気持ち悪〜い」






よろよろと歩く花の神。






「うええ…」




こてりと横になってしまった。


どうやら二日酔いの様だ。










「花」




「…!」






頭上から降ってきた声は愛しい人の声。








「地べたで横になるな」






顔を上げれば眉根を寄せた火の神が立っていた。






「火の神〜




うっ」






勢い良く顔を上げたのが良くなかった様だ。










「ごめんね〜…


火の神ぃ」






「我に吐きかけるとはいい度胸だ」






全く、と呆れながらも火の神は花の神に膝を貸していた。








「心配して来てくれたの〜?


ふふ、膝枕〜」




「断じて違う」




「え〜?本当?」






嬉しそうな花の神。




火の神は勢い良く立ち上がった。


その拍子に花の神は地面に頭を打ってしまった。






「ここは我の管轄だ!貴様の心配などしない!


ただの伝達に来ただけだ」




「いった〜い


え?伝達?」






「御霊の神


奴には用心しろ。


以上だ。我はもう行く」






言うとさっさと行ってしまった火の神。






「火の神行くの早い…」








花の神は寂しそうに見送るが、背後から聞こえる足音に振り返る。








そこには穏やかに笑う御霊の神が居た。








「あれっ御霊の神〜」








ーーーーー








小さな浮雲うきぐもに乗った神様が二人、天別室へと向かっていた。






「いや〜昨日は楽しかったなぁ」




「飲んだ後にまた酒の差し入れって魂の神嫌がらない〜?」




金髪をぱつっと揃えていて細目の薬の神が苦笑いをした。




それに対して前髪を上げている海の神はニカリと笑ってみせる。




「大丈夫だ!」






どこからそんな自信が来るのか、薬の神は肩を竦めるが天別室を見ると怪訝そうにした。








「あれ?


天別室の入口から人魂が溢れてない?」




「本当だ」




二人は中へと入る。






「何じゃあ?!こりゃあ!!」




「うわぁ」






「魂でごった返しになってるではないか!!」






ふわふわと人魂が天別室の中に溢れかえっていた。






「魂の神はサボっているのか?!さては!!


仕事そっちのけで一体全体…!」






ズカズカと中へ入る海の神に薬の神はついていく。




そして突然立ち止まった彼にぶつかり薬の神はおでこを擦る。






「どうしたの?急に止ま…」




「魂の神!!!」






海の神は叫んだ。


駆け寄った先には魂の神。




吹き飛ばされたのか、机が粉々になり、その上にぐったりと倒れ込んでいた。


額と口元から血が流れていた。






「薬の神!早く治療を…!」




「う、うん!」






薬を飲まされた魂の神は薄らと目を開けていく。






「ん…、…はっ」




勢い良く起き上がる魂の神。




「大丈夫か?何があったんだ」






海の神と薬の神の心配を他所に、魂の神は着物の胸元を開けて何かを探していた。






「…ない!


無くなってる!!」






青ざめて魂の神は冷や汗を額に浮かべた。




「どうしよう……」




「ここで、一体何があったんだ?」




「…っ」






魂の神は俯く。








「女が来たの…。


赤い目をした…不気味な女が


それでいつの間にか気を失っていたの。異界錠いかいじょうの鍵を取りに来たんだ…


多分…ううん、きっとそう」






「鍵って重要なのか?」




「僕も知らない」




「は?何も知らないの?」






魂の神は少し呆れてしまう。






「薬の神はまだ創られていなかったから仕方ないけど…


ずっと昔、幻獣と呼ばれた生物がこの星を支配してた」




「幻獣?ドラゴンとかペガサスとか架空の?」






魂の神は薬の神の問いに頷く。






「そのまま地上や海を支配されていては人間が滅んでしまう。


だから創神は異界の世界を創り、その中に幻獣達を住まわせる事にしたの。」






「つまり、その世界の門を開けたら…人間たちは…」






「そういえば昔、海の中も荒れていたなぁ


私も思い出してきた…」






「解った?


一刻も早く創神と大気の神に知らせなくちゃ


祠雲へ急ごう!」






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