動く者達



祠雲から地平線を眺めている大気の神。


まりあは心配で見つめていたが、少し笑みを作って彼を呼ぶ。



「大気の神様」


大気の神は振り返る。


「大丈夫ですか?」


「大丈夫スよ」


大気の神は優しく返し、まりあに向き直る。



「それより、まりあ…

巻き込んでしまって申し訳無い。」



「そんな…

実は火の神様に言われたのですが…私も気になっていて」



まりあは笑いながら俯く。


「何を言われたんスか?」



「このピアスから発せられるモノが御霊の神様と似ているって…」


まりあはピアスに指を添えて話す。

そして顔を上げ大気の神を見る。



「だから、一緒に行かせてください」



真っ直ぐに見つめてくる、まりあに大気の神は是非も無かった。


「過酷な度になりそうっスけど…

アンタは必ず俺が護るっスよ」


「はい」



まりあは微笑んでみせた。



「二人とも、準備は出来たの?」


声を掛けてきたのは鳥の神。

隣には創神も立っていた。



「他の皆はもう行ってしまったの。

早くしないと悪い神や異界生物が世界を壊してしまうの」


「暴動が激しくなる前に止めないとね」



「そうスね。

異界門の中はもぬけの殻だったが幸いなことにまだ動きがない。早めに手を打てそうで良かったっス。

それじゃあ、俺達も地上へ行くっスよ」



大気の神達は地上へと降りていった。




ーーーーー



明け方の空を優雅に飛んでいるのは御霊の神。


彼は何も無い空にトン…と降り立った。

ゆっくりと空を押すとそこには扉が現れた。


中は黒の世界だった。


蝋燭が両側に置いてある長い廊下を御霊の神はカッカッと靴音を鳴らして歩いていく。



ーー護神自体、大した事は無いな

しかし、あの人間の女は…



御霊の神は眉間に皺を寄せる。


ーーあの感じは…

いや…一体何者なんだ…?




「御霊ちゃーん」


名を呼ばれハッとして視線を向ける。



そこには赤いソファに座り塗ったマニキュアを乾かしている者がいた。

この黒い空間には酷く生える白髪を一つに結っていた。


「おつかれさま〜」


彼はフリフリと手を振っている。



「死神か。音波の様子はどうだ?」


「上々よん」



死神と言われた彼は、御霊の神にピッタリとくっついて上機嫌そうだ。



「さっきはアタシ達頑張ったでしょ〜?ご褒美は?」


口を尖らせて口付けを求める死神に御霊の神は嫌悪感を見せる。


「気色悪い事をするな。」


「あん、ツレないのね〜」




「音波、こっちは終わりそうか」


一つの部屋の扉を開ける御霊の神。


中には女性がいた。毛先がカールしてる髪は右側が水色で、左側が桃色だった。



振り返る彼女の目は赤く、口元は笑みを見せていた。



「ったく…、ノックもしないのかい

さっき終わった所だよ。

もうアレらは、洗脳済みさね」


音波の神が言うと、御霊の神は満足そうに息を着く。



「そうか、事は計画通りと言う訳か。

ふ…ふふ…

無慈悲な殺戮が始まる…」



凄惨な表情を見せる御霊の神。


(その顔もステキ、御霊ちゃん)


死神は嬉しそうに見て、音波の神は複雑そうな表情を浮かべた。




そんな二人を残し御霊の神はゆっくりと目的地へと足を運ぶ。



目の前には襖が。


その襖を先程とはうって変わり酷く優しい表情で見つめていた。



「もう少しで御座います…」



そう、小さく黒い廊下に響いた。




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