263 劇場版カードで世界が(略)繚乱和国、筆滅の文豪決戦! ⑤
俺がダザイと決着をつける頃、ヤトちゃんとナツメさん。
それからハクさんとレンさんもそれぞれのファイトにけりをつけようとしていた。
「これが我々の! 決意と!」
「開放感の!」
「違う!!!!! こほん! 一撃だああああああ!」
解放と言おうとして開放感といい間違えたハクさんと、真面目にやってるレンさんの一撃がアクタガワを撃破し。
「ふむ、後で貴方の”ぱんく”とやらについて教えてほしいものだ」
「こっちこそ、貴方の作品、読ませてちょうだい」
すっかり意気投合したヤトちゃんとナツメさんがオーガイを撃破した。
「……終わったか」
「みたいだね」
そして、ダザイから少しずつ終焉カードの気配が抜けていく。
「あんたは、これからどうするんだ?」
「どうしようかな……まぁ、そろそろ罪を償って、一から出直してみるのも悪くは――」
その瞬間だった。
「――ぐう!」
「ダザイ!?」
ダザイがうめいて、終焉カードの気配が膨れ上がっていく。
なんとなく終わった感が出ているこの瞬間は、一番油断しちゃいけないタイミングだ。
案の定、終焉カードが暴走を始めている!
「ダザイが自分を拒否したことで、暴走が始まったのか……!」
「……さい、ごまで、すまないね。めいわくを、かける」
「いや、いいさ。それを煽ったのは俺だ。後のことは任せろ」
手短に会話を済ませ、俺は紙飛行機を暴走する終焉カードへと向かわせる。
なぜ手短かといえば、そろそろ尺がなくなってきたからだ。
そんな気がする。
「店長、アレは!?」
「終焉カードが暴走したんだ。ダザイが終焉カードを拒否した結果だね」
「天の民貴様、煽ったな!?」
いやだって、あんなふうに色々と抱えてるとアドバイスとかしたくなるだろ。
これは店長としての悲しい性なんだよ。
俺じゃなくたって、店長なら誰でもあそこでアドバイスすると思うね。
それはそれとして。
「暴走した終焉カードが、和国大樹を覆おうとしているな。これはまずいぞ」
「どうするんですか?」
「とにかく、ここは終焉カードを攻撃するしかないだろうな。リアルファイト重視で行こう」
「我々に物理的な攻撃手段はなーい!」
終焉カードは、先程のダザイの敗北でカードとしてはすでに負けている。
だからファイトで決着を付ける必要はなく、直接攻撃で何とかできるはずだ。
とはいえ、この場に攻撃手段を持っているのは――
「……某に、任せてはくれぬか?」
「私も一つ、やってみたいことがあるの」
ナツメさんと、ヤトちゃんか。
ナツメさんは見るまでもなく、何をするかが解る。
腰の刀に手をかけている彼女は、剣客文豪なのだ。
「某ならば、あれを一刀両断できるやもしれん。だが、足がない。紙飛行機では速度が出ぬのだ」
「その足を、私が解決するわ」
「とすると問題は――」
その瞬間である。
和国大樹を覆い尽くさんとしている終焉カードの黒い影。
その影から、こちらを攻撃する怨霊みたいな影が飛び出してきた。
すごい勢いだ。
「そもそも近付くことも難しそうですよ!?」
「っくう! まとわりつくなー!」
これをどうにかしないことには、接近すらままならない。
そんな状況で、しかし。
「でしたら、私達が力を貸しましょう!」
不意に、声がする。
後方から凄まじい勢いでブースターが加速する音がして、俺達の上空を一つの影が飛んでいく。
「――エクレルール・パンチーーーーっ!」
完全武装モードのエレアだ!
エレアがブースターをふかして、影にパンチを叩き込んでいる。
そんだけ武装積んでるのに攻撃手段パンチなんだ……
「エレア!」
「もう! 私だけ仲間外れなんて、寂しいですよ店長! ヤトちゃん!」
「ごめんね、ありがとう!」
だが、それだけではない。
「俺達もいるぜ! 行くぞ”ネバーエンド”!」
「ふん、ついてこれるか? ネッカ! 唸れ、”ソウルブルー”!」
「そっちこそ! 行くぞクロー!」
ネッカ少年とクロー少年だ!
彼らが乗り込んでいるのは、ジョンさん謹製のアルケ・ミストだろう。
もちろん、続けざまに援軍はやってくる。
「さぁ行くぞライオ王子! 蒸気と火札の”最強”をここで見せつけよう!」
「ああ、しっかり掴まっていてくれ、ダイア!」
ダイアとライオ王子が、ライオ王子の獅子心王リチャードに乗って参戦した。
リチャードが飛び回り、ダイアが拳で影を打ち払っている。
なんかおかしくない? 後最強は俺だから。
そこから続けざまに、援軍はやってくる。
「やっほー、異世界に初めてやってきたよ! ほらナギサも手を振って」
「遊びに来てるんじゃないからキア! あ、ミツルやっほー!」
ナギサとキアが何やかや遊びに来たり。
「あはははは! 異世界でも私の素晴らしさを見せつけてあげる!」
珍しく暇だったのだろう、わざわざシズカさんが駆けつけてくれたり。
「久しぶりに三人でマジカルファイターしますわ!」
「が、頑張ります」
「こ、ここが和国世界、この頃はこんな感じなんですね……」
マジカルファイター三人組、アロマさん、アウローラさん、それからキリアさんがやってきて。
キリアさんが意味深なことを言ってたり。
「メカシィに乗ってください、ジョンさん! ピガガピー!」
「応! そのスペック、見せてもらうぞ!」
ジョンさんがメカシィバイクルモードに乗ってやってきたり。
それはもう、いろいろな援軍がやたらめったらやってきてくれた。
うーん、豪華だ。
「――ヤト!」
「待ってたわ、ショルメ」
そして、最後にショルメさんがやってくる。
その表情は、なんだか不安そうだ。
「アンタなら、持ってきてくれると思ったわ」
「……やはり、またこれに乗るのかい?」
「見せてくれた時に言った通りよ。私は怪盗ヤトではないけれど、ヤトだから」
何やら、色々とある様子。
とはいえ深くはここでは聞くまい。
ヤトちゃんが話してくれる時を待てばいいのだから。
「何を持ってきたのだ、ショルメ殿」
「――アンタを、あそこに届ける翼よ」
「……まさか!」
ハクさんが目を見開く。
俺もピンと来た。
ここで出てくるヤトちゃんに関係する”翼”なんて、一つしかない。
「そうそのまさか。さあ、もう一度私に力を貸しなさい! <アルケミスト・アメイジング・アルセーヌ>!」
ショルメさんがカードをヤトちゃんに手渡し。
それをヤトちゃんが掲げる。
するとその場に、一機のアルケ・ミストが出現した。
見た目は、黒い翼の飛行機といったところ。
「乗って!」
「うむ!」
ヤトちゃんが乗り込み、飛行機を駆動。
その飛行機にナツメさんも乗って――勢いよく飛行機は飛び出していった。
そこでふと、俺は飛行機から終焉カードの気配を感じた。
おそらくは絢爛世界の終焉カードの影響をうけているのだろう。
非常に強力だが、リスクのある装備ってところか。
「ヤト……」
「安心してくれ、ショルメさん。ヤトちゃんは……つよい」
「そうですよ、ヤトとナツメさんならやってくれます!」
俺とハクさんが心配そうなショルメさんを慰める中、ヤトちゃんは征く。
多くの人達の助けを受けて、一直線に。
そして、人々が見守る中、飛行機の上で立ち上がったナツメさんが刀を構えた。
「――どうやら、我々は運が良かったようだ。悪いが、和国世界に終焉は必要ない!」
その言葉とともに、世界に刃が閃いた。
終焉カードが、切り開かれたのだ。
「……美しいな」
「そうだね」
レンさんがこぼす。
ナツメさんが終焉カードを切り裂いたことで、その破片がまるで桜吹雪の様に和国世界を照らしている。
終わったのだと、確信できる光景だった。
そして――
「……あれ、俺の手元に来るのか」
俺は、一枚のカードを手にする。
終焉カードだ。
てっきり、ナツメさんかヤトちゃんの元にやってくると思っていたが。
ともかくこれで、最初の予定通り終焉カードの入手に、成功したわけである。
――さて、どうしてくれようかなぁ、これ。
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