第71話 トーナメント表
「……エリアス様、何をニヤニヤしておられるのですか?」
「ん? いや、なんでもない。それより二人の初戦の相手は誰だったんだ?」
「私はリッキーさんと言う方ですね。聞いたことがない相手です」
「私はレックスという人物だ。こっちも聞いたことのない相手だな」
二人共に初戦は有名ではない人を引き当てることができたようだ。
本戦に出れているということは弱い相手ではないだろうが、まぁ今の二人なら余裕で勝つだろう。
「それでエリアス様のお相手は誰だったのですか?」
「ジュリアって人だ。俺の方も聞いたことがな――」
「ジュリア? ……えーっと、ジュリア・エリザベス・ベル・ドラグヴィア。聞いたことがあると思ったがこの国の皇女様だろ」
「……エリアス様。もしかしてニヤついていたのは、一回戦の相手が皇女様だからでしょうか? 試合前から現を抜かすなんて!」
「そんな訳がないだろ! 皇女ってことは知らなかった!」
「嘘だな。鼻の穴も大きくなっていた」
そう言われたことで俺は慌てて鼻を隠したのだが、その様子を見たギーゼラはニヤリと笑った。
「鼻の穴が大きくなったのは嘘だが、その行動を取ったのが何よりの証拠だな。私とクラウディアがいて、別の女に興味を持つなんてなぁ」
「エリアス様、嘘はいけませんよ。嘘は」
顔は笑っているが、目が笑っていない二人。
ニヤついてしまっただけで、まさかここまで詰められるとは思っていなかった。
確かにジュリアと話せるのを楽しみにしていたが……これは完全なる誤解。
「そ、それよりもティファニーとデイゼンの対戦相手は誰だろうな?」
「エリアス様、誤魔化すことはできませんよ。皇女様とはどういったご関係なのですか?」
「流石のエリアスでも知り合いってことはないだろうから、どこかで一目みて気になっていたとかだろう。皇女様は美人で有名だしな」
「なるほど。それであのニヤけっぷりですか。分かりやすくて可愛くもありますが、誰彼構わずにほの字になるのは感心できませんね」
「えーっと……えっと……。ティファニーの名前はっと」
クラウディアとギーゼラがよからぬ話をしているのを聞きながらも、俺は話題を変えるために必死に二人の名前を探す。
そして、ようやくティファニーとデイゼンの名前を見つけることができた。
「見つけた! デイゼンの相手は……アーシュラ。ティファニーの相手はエドワード・サマースケールか。うっわ……どちらも難敵だな」
話題を変えるために調べたのだが、想像していた以上の難敵だった。
デイゼンに関しては、一回戦敗退もありえるかもしれない。
「ん? どちらも聞いたことがないが有名なのか?」
「かなり有名だと思うぞ。アーシュラはグルーダ法国の第六席次。エドワードはドラグヴィア帝国内ではめちゃくちゃ有名な剣士だ」
「へー。私も聞いたことがありませんでした。ティファニーさんと帝国で有名な剣士との試合は流石に面白そうです! 初戦から白熱した試合が見られそうですね」
どちらも『インドラファンタジー』に登場したキャラのため、一回戦からティファニー、デイゼンと当たるのは俺的に激熱。
アーシュラは名前ぐらいしか覚えていないほど影の薄いキャラだが、エドワード・サマースケールは第百回の神龍祭に参加していたキャラであり、中々の強敵だった。
……ただ、今のティファニーには勝てないだろうな。
そう断言できるくらいには、両手剣ティファニーは化け物染みた強さを持っている。
「ちなみに順調にいけば、ギーゼラは準決勝でティファニーと。クラウディアは三回戦でデイゼンと当たるぞ」
「うわー……私が勝ち進めるのは準決勝までか」
「私も三回戦までが濃厚です……」
ちなみに俺は二回戦でアダムとぶつかる。
初戦でジュリア、そした二回戦でアダムという連戦に更にニヤニヤが止まらない。
「あれ……? エリアス様がまたニヤニヤしてます!」
「ん? また可愛い女を見つけたのか?」
「違う! 俺の二回戦の相手がアダムだったんだ。それが嬉しくてな」
「アダム? アダムは聞いたことがある!」
「私もあります。教国の英雄アダムさんですよね?」
「ああ、そうだ。ギーゼラが予選の第一試合で戦った相手は、アダムの付き人だったらしいぞ」
「そ、そうだったのか。道理で強い相手だと思った」
それからノンソーの話となり、予選後にアダムと会ったことも話しながら、試合会場であるコロシアム内へと向かった。
ちなみに本戦はコロシアムとコロシアム内の訓練場の二ヶ所で行われ、準々決勝からはコロシアムのみで行われる。
まぁシード選手はコロシアムでの試合だろうし、俺はここから常にメイン会場であるコロシアムで試合だと思うが。
それから受付にてエントリーを行い、選手控え室で試合の順番が回ってくるのを待った。
スムーズに一回戦が執り行われていき、クラウディアとギーゼラは予選同様、危なげない戦いで一回戦を突破。
クラウディアは弓を使わず、ギーゼラはスキルを使わずの勝利。
そして次の試合はなのだが……ティファニーがコロシアムで試合であり、同時間にデイゼンが訓練場で試合。
どっちも見たい試合だったのだが、両方見ることは物理的に不可能な試合時間となっている。
「エリアス様、どちらを見ますか?」
「最高の剣士同士の戦いか、グルーダ法国の元第五席次と現第六席次の戦い。本気で悩ましい」
「見学ぐらいは別れてもいいのだから、せーので見たい方を言わないか?」
「いいですね! せーので言いましょう!お二人とも決まっていますか?」
「ああ。俺は最初から決まってる」
「私も決まっているぞ」
「なら、せーので言い合いましょう! せーの!」
「「「ティファニー」さん!」」
デイゼンが0票という悲しい結果だが……まぁ予想通り。
やはりティファニーの試合が見たい。
「デイゼンさんにとっては悲しい結果ですが、やっぱりティファニーさんの試合が見たいですよね!」
「私は準決勝で当たるしな。一試合でも多く見ておきたい」
「俺は単純にティファニー対エドワード・サマースケールの試合が気になり過ぎる。一回戦にして今大会屈指の名カードだろうからな」
三人の意見が纏まったということもあり、俺達はティファニーの試合を見学しに控え室からコロシアムへと向かった。
観客の盛り上がりは凄まじく、帝国一と名高いエドワード・サマースケールと、元王国騎士団団長のティファニーの入場に割れんばかりの歓声が巻き起こっている。
エドワードは二つの剣を持っており、対するティファニーは聖剣クラウソラスを担いでいる。
どちらも場馴れしており、入場から非常にカッコいい。
「エドワードさんも流石に風格ありますね!」
「エリアスはどちらが勝つと予想しているんだ?」
「忖度抜きでティファニー。最初から全力なら……圧勝してしまうくらいの力量差があると思う」
「私もティファニーさんが負けるところが想像つかないが、やはりティファニーさんはそんなに強いのか」
「うぅー! ワクワクしますね!」
クラウディアのそんな声と同時に、審判が現れて簡単なルールの確認を行い始めた。
そしてティファニーとエドワードが定位置についたところで――試合が開始されたのだった。
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