第3話 三人の使用人
地下水道を後にした俺は急いで家まで帰ってきて、なんとかバレずに自室まで戻ってくることができた。
めちゃくちゃハラハラしたが、そのお陰で街にあるアイテムの回収に成功。
チート級の性能を持つエンゼルチャームも手に入れることができたし、リスクに見合った収穫があったと言える。
まずはベッドの上に回収したアイテムを並べ、改めて確認作業から。
金貨一枚、薬草三つ、どくけし草一つ、魔力の種一つ、力の種二つ、七色草一つ、いかづちの玉、幻魔石。そして――エンゼルチャーム。
エンゼルチャーム以外はパッとしないものが多いものの、いかづちの玉、幻魔石辺りは貴重なものだし需要もある。
無償で手に入れることができたことが大きい訳で、この二つの使うタイミングは既に考えている。
……ただ、今は何と言ってもエリアス自身を何とかしなければいけない。
ダイエット、筋トレ、それから剣術と魔法の指導をつけてもらうこと。
糞of糞の悪役貴族に転生したことも駄目なことばかりではなく、周囲から期待されていないというのは平和な日本からやってきた俺にとっては非常にありがたい。
まぁ良い点がこの点ぐらいしかないのは問題と思うが。
そんなことを考えながらも、俺は自室を後にして使用人たちがいる離れへと向かう。
オールカルソン家には十数人の使用人がいる。
基本的には身の回りの世話をしてもらうために雇われた人達なのだが、強さだけを基準に雇われた使用人が三人いる。
一人目は女性ながら若くして枢機卿まで上り詰めた元シスター。コルネリア・ハインベル。
年齢は三十歳中盤ながらも、ゆったりとしたシスターローブの上からでも分かる凶悪すぎるボディを持っており、色気に満ち満ちている女性キャラ。
そんな見た目とは裏腹に戦闘では非常に厄介極まりなく、複数の回復魔法を使いこなす凄腕のヒーラー。
『インドラファンタジー』でのエリアス戦では、一番最初に回復役のコルネリアを仕留めるというのが定石だった。
二人目はグルーダ法国の元第五席次。デイゼン・アワーバック。
年齢は六十近いお爺ちゃんであり、第一線から退いてはいるものの魔法のスペシャリスト。
攻撃魔法と補助魔法を一人でこなす超人であり、戦闘での立ち回りも非常に巧者。
魔法以外の知識にも明るい人物という印象が強い。
そして三人目はナイルス聖王国の元王国騎士団団長。ティファニー・マーティンデイル。
綺麗な赤いショートカットにこちらも凶悪ボディが特徴的で、まさしくボンキュッボンという擬音にピッタリのスタイルをしている。
ゲームではそこまでの活躍はなかったものの、制作者の思い入れがあるのか顔も非常に美人に作られていて、若干吊り目ながら大きな目に桜のような小さな口がマッチしており、『インドラファンタジー』のキャラクターの中でも一、二を争う好みのデザインだった。
年齢は二十五歳と非常に若いながらも、聖王国の王国騎士団団長にまで上り詰めた超のつく天才。
なぜ超がつくほどの美人で、剣術の天才であるティファニーが悪役貴族であるオールカルソン家に仕えなくていけなくなったかというと……。
ティファニーは、聖王国の副団長を含む騎士を七人斬り殺した事件を引き起こしたことで追放されたから。
いくら優秀であろうと、凶悪な事件を起こしたティファニーにはどこにも行き場所がなく、雇ってくれるところがこのオールカルソン家しかなかった――との裏話が公式で明かされていた。
結局、ティファニーはエリアスも背後から刺し殺し、汚名を被ったまま姿を晦まし、その後のゲームでの登場はなかった。
女性で容姿も非常に優れていた上に、憎たらしい悪役貴族をその手で仕留めたこともあってプレイヤーからの人気は非常に高かったんだけに再登場がなかったのは非常に惜しいキャラ。
DLCでも追加のストーリーは来ることはなく、俺自身もガッカリしていたプレイヤーの一人だった。
そんな俺イチオシのキャラであるティファニーだが、今の俺は悪役貴族のエリアスであり、ティファニーに背中から刺し殺される相手でもある。
一応主人公が来るまで刺し殺されることはないはずなのだが、それでも恐怖の対象であることは間違いない。
死なないことを考えるなら仲良くなることすら避けたいところだが、実力がある三人であることは間違いないため指導をお願いするつもり。
この指導を切っ掛けに、三人と友好的な関係を作ることができるかもしれないしな。
まずはこの体をどうにかしないといけないため、本当に怖いのだが……まずはティファニーに指導のお願いをしに行こう。
何度も深呼吸をして覚悟の決めた俺は、使用人たちの住まう離れへと向かった。
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