第3話

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 ちょうどそれから数日後ほんとにたまたまの偶然で石田と

帰りの電車で一緒になった。


 百子の帰宅方面とは反対方向だったのだが、友人と待ち合わせをし大阪に行く為百子はその電車に乗ったのだ。



 プラットホームで互いに気付き、一緒に電車に乗り込み隣同士に座った。


 百子の友だちは百子の左側、石田は右側で、百子……両手に花だった。



 隣に友人がいたのも良かった。

 落ち着いて石田と彼が電車を降りるまでにこやかに話ができた。


 石田は途中下車し、「「お疲れさまでした」」と言い、互いに別れた。



 友人は百子に何も訊いてこなかったし、百子も『会社の上司で

一緒に働いてる』と説明したのみで、それ以外余計な話はしなかった。


 この日の僅かな時間が石田の気持ちの中に、ほんのりほのかに百子を住まわせたことを百子は知らなかった。




           ◇ ◇ ◇ ◇



 当時旧姓で秋野だった百子には支店に同期が女子3人男子4人がいた。


 

 今でこそ、同期入社の女子たちから誘われることもほぼなくなっている

けれど、入社直後にあった同期会には百子も2~3度参加した記憶がある。



 その時前の席になった日比野隆太とは、緊張なく無邪気に話せ、

それがきっかけで彼とだけは今も社内外で会ってもお互い少しなら立ち話

できるくらいの距離感がある。



 これまで日比野と一緒に仕事をしたことは皆無だった。


 それが入社して一年過ぎた頃、どちらも上司に付いての営業で

泊まりの出張で一緒になることに。



 総勢6人で出掛ける営業の仕事となった。




 同期同士は最初の同期会が有った時に互いに各々メルアド交換を

済ませていた為この時の出張先で仕事が終わった後、日比野から

『暇だから部屋に遊びに行ってもいいかな?』というようなメールを

もらった。



 一瞬躊躇したものの、日比野くんなら大丈夫っていう安心感と

最悪何かあっても後悔はしない相手というのが自分の中での異性を

部屋に入れてもいいかどうかの基準になっていて、日比野くんは

許容範囲だったので私は『いいよ』と返事を返した。



 そうは言っても、彼ならいきなりそんなことにはならないだろうという

自信めいたものはあったからなのだが。

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