化石
さいきんたてつづけに何人か親族の火葬に立ち会い、灰色の遺骨を箸でつまみながら、自分の死後について考えた。といっても天国とか地獄とか、そうした死後の世界のことではなく、自分のからだのこと、死んだあとのわたしの遺体についてである。
日本では死ぬと、遺体はだいたい火葬される。いつから火葬が主流になったのかは知らないが、効率的な火葬炉がなかった時代は火葬するのも大変だから、むかしは土葬が多かったはずだ。しかし土葬は場所をとるし、伝染病とか土壌汚染とか衛生的にもあれだということで、人口の増加や技術の発達とともに変わってきたのだろう。
もしわたしが死んだら、火葬とかせずに、そのまま土に埋めてもらいたいと思う。
棺とかそういうのもなしでそのまま地中深くに埋まって、何十万年か何百万年か長い時間をかけて砂や土に押し固められ、最後は立派な化石となる。
化石のなかには、まれに、宝石になるものがあり、そうなったらもっとうれしいけれど、ぜいたくは言うまい。ただの化石でもじゅうぶんだ。
そしてそんな未来には人類はとっくに絶滅しているだろうから、イルカか、昆虫か、別の種類の生物か知らないが、わたしは未来の知的生物に掘り起こされて、博物館みたいなところに展示される。
しかし、石から完全に掘り出されて骨格標本のように飾られるのは、わたしの望みではない。それだとただ骨が石に変わっただけで、わざわざ化石になった意味がないじゃないか。
それよりは映画「スターウォーズ帝国の逆襲」に出てきたハン・ソロのように、石に半分埋まった状態で展示されるのがいい。重量感があって迫力も出るし、石と一体化していることで歴史の厚みを感じさせられる。
化石になるときの姿勢にも注意を払いたい。ただまっすぐに寝ているだけというのも芸がない。自然で、さりげなく、見る人に深い印象を与えるポーズ。すぐには思いつかないが、古代ギリシアやルネサンスの彫刻なんかを参考にするのがいいだろうか。
けれど化石になるには、ものすごい力がかかって押しつぶされたりねじ曲げられたりするはずだし、けっきょくは成り行きまかせというか、あんまり細かいことを考えても仕方がないのかもしれない……。
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