氷
夜中に氷のような手でわたしを触るものがある。
びっくりして飛び起きると、なんのことはない、それは自分の手だった。ずっとそちらを下向きにして寝ていたので、血の流れが阻害され皮膚の感覚がなくなってしまったらしい。
ぬるっと汗ばんで爬虫類の皮膚のように冷たくなったそれを、反対側の手でしばらくもんでいると、血が流れ込んでだんだん温かくなっていくのが分かる。ピリピリした痺れが、チクチクしたかゆみに変わり、それが過ぎると、手はふたたびわたしの一部に戻った。
謎は解けたが、自分のからだの一部が自分のものではなくなってしまう感覚というのはおそろしい。いつか、からだの一部が反乱を起こして独立をくわだてる日がやってくるかもしれないと思うとゾッとする。
しかし今回はひとまず、反乱の討伐に成功した。そんな妄想をいだきながら、わたしは安心してまた眠りにつく。
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