人魚

 ざっかけない海沿いの食堂に入り、日替わり定食をたのんだ。


 今日のおかずは、人魚の尾の煮付けとのこと。けさ揚がったばかりだという。

 人魚は痛むのがはやいから、港の近くでしか供されない。わたしも食べるのは初めてだ。


 運ばれてきたものは魚の切り身にしか見えないけれど、食べてみると(人魚の肉を食べると不老不死になるというのはただの迷信らしい)肉とも魚とも違う、なんとも不思議な味がする。

 けっして不味くはないが、やみつきになる味というほどではない。好んで食べたいかと言われれば微妙だ。まあ食べ慣れていないからなのかもしれないが……。


 ふと思いついて、上半身はどんな味がするんだと尋ねると、あんなものは臭くて不味くてとても食べられません、と店員は怒るようにいった。

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