第20話


 ――私達は、望まれ生まれて来たモノではない。

「お願い、通して?」

 だから死脳喰らいに埋められた兄弟の最期の言葉を断った。

「母さん……、母さん……」

 だから影喰い沼に埋められた姉妹が伸ばしたその手を断った。代わりに私が彼ら二人に与えたのは、永別の刃と言葉だ。

「……せめて、安らかに眠れ我が血族よ」

 元来、私は言葉を持たない存在である。喉を震わせても唸り声しかならないが、血を分けた彼らとだけは語り合う事が出来たのは何の因果か。……それでも今は言葉を喋れない事を感謝している。

「女を何だと思ってる。人を、子供を何だと。違う、あれは……あれは、私の子じゃない。私の子じゃないッ!」

 その小さすぎる身体、母と呼ぶには余りにか細く弱々しい姿。けして、彼女にだけはこの正体を明かしてはならないのだ。きっと、彼女は私の正体を知った瞬間殺すだろう。何故なら、私は彼女が忌み嫌うホムンクルスの最後の一匹なのだから。

 私の名はファングイン。魔術師アスフォデルスの血を受け継いだ、望まれぬ最後の仔。

 私は、けして人間じゃない。

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