5.勇者たち

 さてタクヤが現れてから一年。

 彼がなにをやったかといえば、最初は内政ばかりだった。


「下水道を作ろう。スライムを使うんだ」

「トイレですね、水洗トイレ」

「そうだ」


 とまあまずトイレが出来た。

 それ以前ではトイレはあまり整備されておらず、町は不潔だったのだ。

 これでだいぶ綺麗になった。

 ついでとばかり病気も減って、死亡者が減少した。


「確かに生活は改善されましたが、魔王軍の脅威は減っていません」

「まあ、慌てない慌てない」

「そうですか……」


「聖女だけじゃダメだ」

「ダメですか?」

「女賢者と女魔法使いが必要だ」

「左様で」


 ふむ。タクヤはハーレムを作るつもりのようだ。

 さすがゲームオタクだけはある。

 理想の勇者像というのがあるのだろう。


「神託とかしなくていいのか、アイテール」

「まあ、いいんじゃないなのです?」

「そういうならもう少し見ているか」

「うむ」


 俺たち神は寛容だからな。

 まあハーレムくらいはいいだろう。


「勇者様、聖女に賢者に魔法使いが揃いました」

「うむ、苦しゅうない」


 お、やっとやる気になったようだ。

 勇者一行が王都を離れ、実地訓練としてモンスター退治を始めたぞ。

 さぁどんどんレベルを上げるんだ。

 頑張れ、頑張れ。魔王が生まれたときはどうしようかと思ったけれど、大丈夫そうだ。


「おい、ルンガ。大丈夫なのじゃ?」

「どうした」

「勇者一行な、みんな妊娠してしまい、引き返してきたなのじゃ」

「あぁ、ダメだったか」


 残念ながら旅先でハッスルしてしまったらしい。

 窮屈なお城生活と違い、パーティーだけで自分たちのテントや宿で生活したらそうなるものだ。

 まったく自制くらいはするべきなのだろうな。


 さてちょっと時間を飛ばそう。

 普通に勇者一行はこの後も子育てに忙しくて、ろくに働くことが出来なかった。

 王国の内政などはどんどんよくしていくようだが、戦闘回数はめっきり減り、もはや中年では戦えまい。


「こいつは勇者はクビだなクビ」

「しかし、聖女との間に生まれた、息子のカウル君なんかどうなのじゃ?」

「ああ、血と知識を受け継いで、なかなかいい感じだな」

「よし神託なのじゃ!」


 こうして勇者は引退して、息子カウルが神殿に呼ばれた。


「カウルよ」

「はは、女神アイテール様」

「父、タクヤはもう全盛期を過ぎて戦えぬだろう。代わりにカウルが勇者なのじゃ」

「俺が勇者を受け継ぐんですか?」

「そうだ。頼んだぞ。旅先ではゆめゆめ自制するように」

「分かりました! 女神様!」


 こうして息子カウルが十五のとき、神託を下した。

 カウルは聖女、女神官、女魔法使い、女賢者を連れ、旅に立った。


「お、ルンガ。いいじゃんカウル」

「だろう。まあ見てみよう」

「んだんだ」


 カウルは村々で話を聞き、問題を解決して、暴れ回るモンスターを退治した。

 時には盗賊退治で山狩りをした。

 地方で悪徳領主がいると話を聞けば、すぐに駆け付け、お縄にする。

 メキメキと成長したカウルは王国一の勇者になることができた。


「いよいよカウルも魔王領へ行くのですね」

「はい、行ってきます」


 王国の姫様と面会して、出発の挨拶をしていた。

 どうやらカウルは連れている美少女たちがいるにもかかわらず、メインのターゲットは姫様らしかった。


 魔王領へと入ると魔物は途端に強くなる。

 オーガなどは当たり前でストーンゴーレム、ガーゴイル、サイクロプス、ワイバーン、そして千年生きるドラゴン。

 巨大な敵、狡猾な敵、空を飛ぶ敵。


「くぉそう、もっともっと力が欲しい」

「勇者様、がんばりましょう」

「まあ頑張るしかないか、えへへ」


 聖女たちの応援に鼻の下を伸ばしながらも、頑張る勇者カウル。

 まだその若い肉体には強い力が眠っているのだ。


「ついに魔王城だ」

「きましたね」


 勇者一行が魔王城にたどり着いた。

 数々のモンスターを倒して、ついにその玉座へと向かう。


「よくきた勇者よ。我を倒して見せろ」


 そこにいたのは巨大な魔族の王、魔王であった。


 キン、キンキンキン、キンキン。


 剣で戦うも、魔王も剣で応戦してくる。

 まったく勝てる気がしない。


 聖女、女神官、女魔法使い、女賢者たちと力を合わせ、やっとのことで魔王を封じることができた。


「ついに、ついに勝ったぞ」

「「やったあああ」」


 こうして人類には一時の平和が訪れた。


「ふむ、まあまあよくやったんじゃないかな」

「ルンガの評価は、まあまあなのじゃな」

「まあねぇ。もっとカッコよく勝って欲しい。それに封印しただけで倒していない」

「そうなのじゃ、まあ次復活するときまでは平和じゃな」


 こうして時間が進んでいく。


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