第94話 酒盛り 見た目は王妃 中身は……
ジャスティーネ王妃のカミングアウトで女神以外が驚いている間に、お酒やジュースにおつまみを用意する女神。
その間にそれぞれ挨拶を済ませると用意が終わり
「今日はお酒以外にも色々用意したよ〜 空いてる所に座って飲まなきゃ損だし〜 酔うことないしょ」
既に座っている
「んぐ、んぐ……プッはぁ~! ひっさびさのビールさいっこー!」
右手で持ったジョッキの生を一気飲みして左手で膝を叩くジャスティーネを、女神とシンヤ以外は唖然と見ていた
「あの……ジャスティーネ殿下。失礼ながらお聞きしますが、殿下の生前は男ですか?」
「ちょっとーアリュード君〜それは女性に失礼よ。私は今も昔もれっきとしたお・ん・な・です。
と、言っても転生前の名前は覚えてなくてね。
覚えてるのは共働きのOLだったことね。死んだのかどうかは覚えてないわ〜
それと、さっきも言ったけど公衆の面前などで無いときは呼び捨てで良いわよ」
言って空のジョッキにいつの間にか注がれたキンキンに冷えたビールを一口飲んでスルメの足を食べて ”く〜!“ と嬉しそうに体を震わせる姿を見て
(((……おっさんだ)))
「ジャスティーネさんはお子さんとか居なかったんですか?」
「子供? 居なかったよ。ってか、私が子供が産めない体だったのよね。」
「えっ……あっ、ごめんなさい!」
「いいよ、いいよ、ヒカリちゃん。昔の事は記憶に残ってるぐらいだし。今はローザリンデが居るからね」
手をひらひらさせてジョッキを空にさせて “次は芋焼酎!” とリクエストを言うと、ジャスティーネの望んだ状態でグラスに入った芋焼酎が出てきた
嬉しそうに飲む姿を見て
(((……やっぱりおっさんだ)))
と思う三人だった。そこで、真剣な表情になったアリュードが
「ジャスティーネ王妃……楽しく飲んでる所申し訳無いのですが、真面目な話をしてもいいですか?」
「……分かりました。お聞き致します、アリュード殿下」
アリュードの真剣な表情に対して、酒飲みの顔から王妃の顔になり姿勢を正すジャスティーネ
ジャスティーネの雰囲気に思わず背筋を伸ばすユイナとヒカリ。
座ったまま頭を下げて考えを話し出したアリュード
「……なるほど、そうですね。帝城奪還の援助と援軍は喜んでさせて頂きます。
ただ、パールド王国も王位交代に謀反を起こした貴族達の処遇などしなければなりません。援助は少しずつ出来ますが、援軍は直ぐに動けないと思います。その時は娘のローザリンデを総大将にして援軍を編成して派遣します」
「ローザリンデ王女ですか?」
「はい、あの子は頭の回転も速いですし、戦術をよく学んでいます。魔法が使えて実戦形式の訓練に魔物との戦闘も経験があります。ただ近接戦闘は少し不向きなので、そこはご容赦下さい
ですが、実力は軍の者も認めております。援軍に向かわせる時は補佐もつけるので大丈夫です」
相槌を打ちながら話を聞くアリュード
「分かりました。無理を言ってるのは此方ですからありがとうございます。
ローザリンデ王女は[魔導師]にて魔法を4種類扱われる優秀な方とお聞きしています
詳しくは、後ほどお話しさせてください」
「分かりました。正式な場を秘密裏にですが用意させて頂きます……じゃ、飲み会の続きをしましょー!」
王妃から酒飲みの顔に瞬時に切り替わると
「あ〜その……話を聞いて関係しそうな事を言いたかったんだけどさ。帝城にいるユイナちゃん達のクラスメイトについてなど……大丈夫?」
「俺たちでは見れない所を話してくれるのならありがたいが……」
シンヤはそこでユイナ達を見る
「私は聞きます。皆さんの事も知る必要があります」
「私も聞きます。ユイナちゃんと同じくです」
「分かったよ。2人には辛い事も話すけど聞きたくない事があったら言うんよ」
そして、女神が視えた範囲を話した。ユイナは表情は変わらないが、少し顔が青なり無意識の内に隣に座ってるアリュードの裾を軽く掴んでいた
ヒカリは表情に出ていたがジャスティーネが手を優しく握った。
驚いた表情になるヒカリだが、優しい微笑みを浮かべるジャスティーネの顔を見て少し落ち着いた。
ジャスティーネは一瞬 シンヤにウインクすると軽く頷くシンヤ
話を聞いてまずシンヤが
「【魔力伝達】と【解析】は賢者に必須な【魔導】を覚えてから身につくんだが、阿仁間君だったな
彼はすぐにでも【魔導】を身に付けられるな
そうなると、後は、聖女の【治癒】と武道家の【武動】だけど、多立さんはきっかけがあれば身に付ける事が出来ると思う。
残る【武動】だが……うむ」
「多立さんと一緒にいる波瀬さんは身に付けられないんですか?」
【武動】の所で言い淀むシンヤにアリュードが訊いた
「そこは、分からないな。聞いてる限りの実力では今の所はっきり言い難い……もしかしたら残りのクラスメイトの中に居るかも知れないよ
女神も残りのクラスメイトははっきり視えてないからね」
「そうなんですね。所で、魔王を倒す勇者パーティーに必須なのが、何故そのスキル何でしょうか?
そこは俺も知らなくて……」
「それは、女神の力がこの世界に具現化した姿と言うべきかな? それがこの4つのスキルなんだ
そのスキルのお陰で魔王と対峙してもまともに動けて戦えるんだ
そのスキルが無いと魔王の魔力に恐怖で動けない。錯乱して最悪は死に至る」
シンヤの話を聞いて女神以外が驚いた
「ちょ、ちょっと待って下さい! えっ? シンヤさんはそのスキルを身につけて無いんですよね?!
どうやって戦ったんですか?! えぇ?!」
「うん、少し落ち着こうかヒカリさん。
俺は修行と着ている袴に右手にある刀を使ってスキルに匹敵する力を身に付けたんだ」
「身に付けたんだって……そんな身につくものなんですか? って身に付いてますよね」
アリュードも驚いておかしな事を聞いていた
「驚くのも無理はない。身に付けるのにかなり苦労したからね。異世界人でないと身につかないし
その力を発動した状態を【武神化】と言って俺が[武神]と言われる所以にもなったんだ」
「うんうん、靱君はすんごい修行してたしょ
何回か死んだかと思うぐらいにね〜 送った私も申し訳なくなるぐらいにさ〜」
「そう思うならもう1回送るなよ……」
若干、呆れた声色になるシンヤに苦笑いを浮かべる女神
「今は怒ってないし後悔も恨みもない。むしろ俺を送って無かったら色々とやばかったからな」
「そうですね。シンヤさんが居なかったら私もヒカリさんもここに居ませんでした。と、言うより死んでました」
ユイナの言葉に頷くヒカリ
「それと、俺の事はもう平木 靱平と呼んでくれて構わない。呼び方は任せる
君達はまだ偽名の方が言いだろうな。魔王復活の生贄に相手が考えてる以上はね」
「はーい、分かりました。なら、私は靱平さんとお呼びします」
手を上げて言うヒカリ
「でしたら私は平木さんでお呼びします」
「では、俺も靱平さんと呼ばせて貰います」
「ついでに私も〜公私で変えると間違えたらいけないので、私は今まで通り平木様で呼びますね」
そこから皆で何故か
そして盛り上がりが落ち着くと、女神が皆を呼んだ中で特にアリュードとユイナに関することを話すのだった
*ここからシンヤは本来の平木 靱平で書いていきます
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます