第92話 こちらの親子は
ダーネルが窓から出たのを見送ったジャスティーネ達の部屋に、勢い良く入って来た人影が1つ
咄嗟にローザリンデを庇うジャスティーネだが
「あなた?」
転がりながら入って来たのはブァランタンであった。思わず陛下ではなく何時もの呼び方で呼んだジャスティーネ
「よ、良かった……無事だったか」
「ええ、お陰さまで大丈夫よ」
何時も身につけている装飾品は一切つけておらず簡素で動きやい服装を着ていた
慌てて駆けつけたのか息が乱れており四つん這いに倒れている所を、ジャスティーネが手を差し伸べて立たせてあげた
ブァランタンの顔とお腹を見たローザリンデが
「お父様がここに来られたという事はあちらは解決しましたか?」
「そうだよ、ローちゃ……ぶし?!」
ブァランタンは両手を広げてローザリンデを抱きしめようとしたが扇子で顔面を叩かれた
「今は抱擁をしてる時ではありません。それに、解決したのならお腹のそれは外しても構いませんよね。だから息が切れたと思います」
「相変わらず冷静なツッコミ! 確かにそうだな、ライアン会長の所も無事だから一安心だよ」
服の上から魔力を流して動かすと、お腹から外れる音がして右手にお腹の形をしたベルトが握られている
「あなた、セヴェーラ様はお認めになられたのですか?」
「ああ、第一王子を托卵してバレそうになって殺害。グルンテを王位につかすために今回の事を起こしたよ。
ブルーナ公爵と魔王幹部の部下の魔族を使い僕を殺そうとした。君達は暗部のゲオルグを使ってね
僕の方は平木さんが、駆け付けてくれて魔族を文字通り瞬殺したよ。」
若干青白い顔になり話すブァランタン
「ても、セヴェーラ様が素直にお話されるなんて驚きです」
「ローち……ローザリンデの言う事はわかるよ。2人を殺さないかわりに聞き出した
奴隷紋を応用した念書も書いたから極刑は免れたよ」
ローちゃんと言おうとして軽く睨まれたのでやめるブァランタン
「それは、仕方ないわ。でも、峠は超えたのね。これで、反発していた貴族も賛成しますね」
「本当だよ。僕は王様なんてなりたく無かったのに、長男は病死、次男は経験を積むため魔物と戦ってる時に魔物に殺される
絶対に僕を王様にする為だったよね。ビビリで小心者で怖がりなんだよ。本を読んでいたいだけなのに……せめて威厳をと思って着飾ったら見栄や虚栄心の塊とか言われるし、もう嫌」
ガックリ肩を落とすブァランタン
「そうですね。私も相手を油断させる為に、お父様は見栄と虚栄心は人並以上の小心者にヘタレと触れ回りました。因みに、平木様にもそれとなくガッツリお伝えしています」
「だから、最初は変な目で見られたのか……って、そこは平木さんに言わなくてもいいんじゃないの?
いっそ彼が国王になってくれたらいいのにね」
「はい、それは私も平木様とお会いして思いました。あの方が国王ならこんな事も起きなかったし、国は良くなっていたと感じました」
ローザリンデに言われて”ウグッ“ と言葉をつまらしたブァランタン
「ローザリンデ、そこまでにしておきなさい。この人のメンタルは限界です。
あなたはお疲れ様でした。後は引き継ぎます。でも、裏方のサポートはお願いしますね」
「うんうん! ありがとうジャスティーネ、僕も裏から頑張るからね。見捨てないでね!」
ジャスティーネ王妃の胸に抱きつくブァランタン国王。身長はジャスティーネが高いので胸に抱きつく格好になった
ジャスティーネによしよしと頭を撫でられる50代のおっさん国王である
「私も内外に色々と言いましたが、お父様とお母様の娘に生まれて幸せです
お父様に人を見る目があってお母様に一目惚れしてビビリだから政略結婚してくれたおかげですね。あと、私の事はローちゃんと呼ばないで下さいね」
「ローザリンデは僕に対してちょいちょい言葉に棘があるよね。僕も2人に会えてすっごい幸せだよ……まだ、忙しい日々が続くけど、これからも宜しくお願いします」
2人に頭を下げるブァランタン。ジャスティーネとローザリンデは同じ微笑みをして頷いたのだった
「人の体に憑依できるのか……前回は出来なかった事だな。ザンバーガもゴブリンに憑依していたから、ここ千年の間に身に着けた技術か。
死体にしか憑依出来ないから、生きてる者には憑けない。それでも、憑依されていた貴族は爵位が高く、ジャスティーネ王妃側だから殺され使われたのか
死んだザンバーガの魂と繋がる魂のみが、憑依出来ると言っていた。恐らく前の戦いでザンバーガと共に戦って亡くなった者達の魂だな
見覚えのある魔族だったし……」
(……なんか今回は俺の出番あまり無かったな。まぁ、いいか。ここら辺は大丈夫だしブァランタン国王家族に会いに行くか)
そしてブァランタン達に会いに行くのだった
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