第90話 お食事の後は……
ロベリアとの打ち合わせや色々な確認をしている内に夜となり、ジャスティーネ達の所に向かうライアン
ロベリアの案内で部屋に入ると驚くライアン。
正妃であるジャスティーネ親子が食事を取る場所にしては、こじんまりしているなと思うライアン
実際、机と椅子しかなく机も5人が座れば一杯になる大きさであった
既に待っていたジャスティーネが
「余りにも殺風景な部屋で驚きましたか? 正式にお招きした晩餐会なら食堂やホールを使いますが、普段 私達親子はここで食事を取っています。
食事ぐらいはゆっくり頂きたいですからね。
お好きな所にお座りください」
「そうでしたか。では、失礼して座らせてもらいます」
ローザリンデの反対側に座るライアン
「ライアン会長、この度は私の我が儘をお聞き下さりありがとうございます」
「ローザリンデ様。お気になさらないで下さい。ピンチをチャンスに変える……不謹慎ながら少しワクワクしてます。
今は、食事を楽しみましょうか」
聞いたジャスティーネとローザリンデは一瞬だけ顔を見合わせると、ジャスティーネが合図を出して食事が並べられる
「見た目は質素ですけど、味は保証出来ますよ。体に良いものを中心にした料理です」
「なるほど。では、頂きましょう」
ワーウルフの肉で出来たステーキを一口食べるライアン。驚きで目を見開く
「これは……ワーウルフの肉ですね。独特の臭みが全く無い、いや臭みが香りに変わっている。
それに……これは……うまいですな」
「料理長から皆で考案して作り出した料理です。
材料は一般国民でも、手に入る物で作っておりますのよ
さあ、他の料理も食べて下さい」
ライアンにすすめて自分も食べるジャスティーネ。ローザリンデは何も言わずに、もくもくと食べている。
ライアンは頷いて他の料理も一口食べると、ステーキと同じ反応をしていた。
その後は、皆一言も話さずにモクモクと食べた
食後のデザートでリンゴを出されたが
「もしかして、ジャスティーネ様とローザリンデ様がリンゴの皮剥きをされるのですか?」
「ええ、そうですよ。皮を切れる事なく剥く。
手先の器用さを身に付ける練習にもなるかと思います……なんて、1番の理由は嫁いで来た頃に陛下が、私の手料理を食べたいと、申されたのが始まりです。
最近はそれはなくなりましたね」
「はい、どうぞライアン会長。綺麗に剥けたと思います。どうぞお召し上がり下さい」
ローザリンデがリンゴを差し出した
(ここで、遠慮するのは失礼に当たるな)
「ありがとうございます。まさかローザリンデ様にリンゴを剝いいただけるとは、思いませんでした
いただきます」
一切れ食べると、爽やかな酸味の後に甘味が口の中に広がっていく
「凄く美味しいです。それにしても、お上手なんですね。かなり練習されたのですか?」
「それは良かったです。ええ、何度もしましたわ。最初は指を切ることもありましたが、今はお手の物です。淑女の嗜みですから」
”なるほど“ と話を聞きながらリンゴの皮剥きは淑女の嗜み? と考えるライアンである
ローザリンデとライアンが話しながらリンゴを食べている横で、リンゴを使って薔薇の花を作り出したジャスティーネ
切り落とした部分も使い綺麗に皿の上に飾ったのを見て
「この短時間でここまで出来るとは……これは1流の料理人にも引けを取りませんな」
驚きの表情でリンゴを見ながら言うライアンに”ありがとうございます“ と言いながらも食べる為に、躊躇なくリンゴを切って行くジャスティーネであった
躊躇のなさにも少し驚いたライアン。
デザートのリンゴも食べ終わり少し話をして部屋に戻った3人である
部屋に戻り深夜になるのを待つライアン。辺りを静寂と暗闇が支配する中、ソファーに座るライアンを守る様に立つロベリア
「……来たか」
天井から1つの影がライアンの頭を目掛けて襲い掛かった
攻撃が届く前にロベリアの放った針が、鋼で守っている首と額に突き刺さり絶命した
次の瞬間に反対の壁際に6人の暗部の人間が表れた
「思ったよりも人数が少ないな。それに魔族の姿も見えて無いけど、これは第1波で良いのかな?」
「はい闇に蠢いている気配はありますので、そうだと思われます。全て倒せば問題ありません」
ライアンと暗部の間に立ち針を構えるロベリア。暗部の者達は何も言わずにそれぞれ武器を構えた
「今日はたくさん針を用意したので、幾らでも針山に刺してあげれます。行きましょうか」
ロベリアと暗部の人間は同時に床を蹴った
ライアンが奇襲を受けている頃、念の為にとジャスティーネと同じ部屋に居たローザリンデの所に、ブルーナ公爵と執事長が姿を表した
「ローザリンデにジャスティーネ! お前らのせいで私の計画はむちゃくちゃだ! 動償うつもりだぁ?!」
「ブルーナ公爵、私と王女に対して無礼ですよ」
青筋立てて怒鳴りつけるブルーナ公爵にやんわりと言うジャスティーネ
「無礼なのはお前らの方だ! いずれ姉上が正妃となりお前らは処刑される運命だからな! 今のうちに俺に土下座し謝るんだな。
そうしたら楽に死ねるぞ?」
「はぁ愚かですね、ブルーナ公爵。そんな事ですから婚約話をきっぱり断ったのですよ?
もしかしてその逆恨みも入ってますか?」
「ふざけるな! 誰が逆恨みなんてするか。それに愚かなのはお前達だ。多少は魔法を使えるのは知っているが、このゲオルグには敵うまい!
暗部でNo1の実力を持っているからな、やれ!」
初老の執事長ゲオルグは、左手にナックルガードを装着して右手にスモールソードを持ち静かに構える。
すると部屋の中の温度が下がるのを感じたジャスティーネ達
防御壁の魔法を発動させたローザリンデに狙いを定めたゲオルグ
ローザリンデとジャスティーネに見えない速度で、斬り掛かり頭めがけてショートソードを振り下ろした。
ショートソードには魔法付与してあり、防御壁を切り裂き頭に当たる瞬間、火花と共に上に弾かれた
「キャッ?!」
いきなり頭上で火花が飛び散り、驚いて声を上げるローザリンデ。よろつきなからも踏ん張った
ゲオルグは後ろに飛んで距離を取りローザリンデの前にいる人物を鋭い目で見る
「王女様ってのはどうして皆、こうも無茶したがるのかねぇ〜」
「でしたら私もレティシアの事は言えませんね。助けて頂きありがとうございます」
ローザリンデを間一髪で守りその場に似つかわしくない声で話しをするダーネル
「リーヴェス……裏切者のお前が何故ここにいる?」
「ゲオルグのおっさん、久しぶりだな。何故って援軍の要請があったから冒険者として来たんだよ
にしてもあんた何やってんだ? 寄りによって王妃と王女を狙うとは打首だけじゃ済まんぜ?」
「全てはブルーナ公爵家の為だ。No2の実力を持ちながら公爵家への恩を仇で返して抜けたお前には分からぬ」
更に鋭い目線になって話すゲオルグ
「俺が恩を感じてるのは先代ブルーナ公爵だ。国の為に動き自分を律して俺達にも気遣ってくれる先代にだ。
自分の私利私欲の為に、好き勝手動き国を滅茶苦茶にするそこのクソガキじゃねぇんだよ
おっさんよ、恩がどうたら言うんだったら先代の意志を継いで、国を守るのが暗部の役目だろ
そんなガキに付いてどうするんだ……って、抜けた俺が偉そうに言える資格は無いけどな」
「……儂は先代と約束したのだ。お坊っちゃまであられた現ブルーナ公爵をお守りするとな
例え道を外れようとも最後まで付き従うのみ」
「先代を殺したかも知れないのにか?」
「黙れ、裏切り者がぁ! 俺は父親を殺してはいない! ゲオルグ裏切り者を殺せ!」
「一度も勝てた事がないお前に儂を倒せるのか?」
「いつの話をしてるんだよ。こちとら短い期間とは言え過去の怪物と現代の怪物2人を相手に手ほどきという名の地獄を味わったからな
取り敢えず、魔族を倒してバルボッサ商会の会長を守り切るまでは相手をしてもらうぜ」
両手に持ったククリナイフを逆手に構えてゲオルグと対じするダーネル
ジャスティーネとローザリンデは邪魔にならない様に部屋の隅に行き、防御壁を何重にも掛けるのだった
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