第86話 ザンバーガ思念体
カイルド帝城の地下 封印の間
〘概ね予定通りという事か〙
「はい、その通りで御座います」
部屋の真ん中に存在する陽炎でもあり影にも見える思念体として動くザンバーガ
その前で黒のローブを纏っている者が膝まついて話していた
〘
それに、あやつも含めた勇者と仲間の男の性欲はかなり強く良い贄になる。
特に異世界から来た勇者が欲に塗れる程、融合が強くなり魔王様は完全に復活出来る
ただ、想定外の事も起きておるな〙
「はい、【武神】平木 靱平が現れアリュード陣営についた事により、シクリーニ侯爵の計画の一部が崩されてロードス王国が解放されました」
ザンバーガの陽炎が上下に揺れながら
〘あそこは、毒により人間の苦しみ、痛みの負の感情を集める為に落としたたけだ。
元々微々たる力しか集まっておらなんだ。所詮は小国の故に解放しても戦力的にも問題ではない。
捨て置いて構わぬ〙
「畏まりました。その平木 靱平は放置で宜しいのですか?」
〘問題ない。あいつは、私が倒されてから約10年後の世界から来たと思える。
今の私は、かつて三大魔公爵と呼ばれた残り2人の力も受け継いでおる
如何にあいつが、修行しようと本気の私には到底及ばぬ。いらぬ心配だ〙
“申し訳ありません” と頭を下げる黑ローブの人物
構わないと陽炎を左右に揺らすザンバーガ
「それとエレアナが想定外の動きをしております。これは、如何いたしましょう」
〘あの小娘か。
あの聖女はとうにあやつの女になると思っておったが、上手く動かしておるな
地下牢に閉じ込めて居る賢者も、騎士共を逆に蹂躙しておるのに放置しておる
色々と探りを入れていた騎士を殺さずに、あの森に異世界人と共に向かわせたのも、何かあるのかも知れんな
普通は異世界人も含め魔物と殺し合い、復活の力にさせると考えるが、何かあるのか……〙
「探りを入れましょうか? 秘密裏に聖女を渡して賢者は消しますか?」
〘いや、必要ない。所詮は一切の力を与えず持っていない小娘が考える事だ、放っておいて構わぬ。
聖女に賢者も共に必須なスキルは持っていない上に、力も対した事は無い
それに、私と互角に戦うのに前勇者パーティーは10年掛かっておる。恐るるにたらん
どうであれ魔王様復活の力になるしかない〙
陽炎が一度、大きく揺れ動いた
〘私は、魔王様復活に全力を注ぐ為に、実体は復活させず思念体で動いておるが、どの道 魔王様復活は止められぬ。今更、女神が手を尽くそうとな。うむ、どうやらあやつが、来たようだな〙
「失礼します。カイルド帝王ボッケカス入ります」
隠し扉を開けて恭しく入室するボッケカス。
何回か思念体のザンバーガに叩き潰されてから、表向きは従者のように振る舞っている
〘来たか、何ようだ? ボッケカス〙
「はい、ザンバーガ様のご命令通り聖女は泳がし賢者は放置して邪魔な騎士は異世界人と共に森に追放しました」
〘そうか〙
(全てが、娘のエレアナの考えと気づかぬのか? それとも、認めたく無くて私の指示と思うようにしてるのか? まぁ、どちらでも良い)
膝をついて従者の姿勢をとるボッケカスに
〘して、話とはその報告だけか?〙
「我が愚息と老害の騎士共がヴァリアント砦で不穏な動きをしていますが、今のうちに叩き潰しますか?」
〘いや、放っておけ。所詮は小蝿にすぎん連中だ
何をしょうと痛くも痒くも無い。
例え、歯向かって来てもお前に、我らの力を与えておる。思う存分、蹴散らしてやれ
そうされば、お前の息子が抱えておる女エルフ共も好きに出来るぞ
それまでは、無闇に仕掛けて魔王様復活の邪魔をするでないぞ〙
女性を好きに出来ると聞いた瞬間残虐な笑みになるボッケカス。
「はっ! 畏まりました。このボッケカス必ずや愚息共を討ち滅ぼし魔王様とザンバーガ様に貢献いたしましょう!」
(ちっ! クソ魔族がぁ! 偉そうにしやがって! 魔王が復活し取り入ったら貴様に俺が味わった以上の屈辱を与え辛酸を舐めさせてやるからな!)
〘下がってよいぞ。引き続き魔王様の為に励むがよい〙
顔を下げるボッケカス。下げた時にバレないように憎々しげに睨み付けて部屋を出たボッケカス
「ザンバーガ様宜しいのですか? あの男全く自分の立場が分かって無いですよ。ご命令があれば何回か躾けますが如何いたしましょう」
〘構わん。あの憎しみの感情も魔王様復活に役に立つ。魔王様復活に召喚した異世界人が2人足らないからな。
その分は補えるからな。シクリーニ共々使い潰せば良い。分かったな〙
(先の平木 靱平との手合わせで、この時代の者達もそこそこ戦える事は分かったが所詮はその程度。
今の靱平の力もある程度は分かった、何ら問題は無い。後は、人間共の国がそれぞれ自滅するのみだな)
全て自分の手の中で動いていると、内心ほくそ笑むザンバーガであった
その日の夜、寧留達の部屋をノックする音がして扉を開くと
「げっ……何の用よ?……ですか? エレアナ……様……」
「嫌なら無理に敬語を使う必要はないわよ。単刀直入に貴女、私に回復魔法を掛けなさい」
外にエレアナが立っていて露骨に嫌そうな顔と声が出る寧留。
エレアナに気付き部屋の中では、敵意むき出しの美穂と寧留に助けられて完治した女の子が恐怖で引き攣った顔をしていた
「はぁ? 何言ってんの? なんでアタシが回復魔法を掛けないといけないのよ?」
「そう言う事を言いますの? へぇ〜そう……」
部屋の奥に意味ありげな視線を向けるエレアナ。
すると、舌打ちをしてエレアナに回復魔法を掛けた寧留。
一瞬だけ不思議そうな表情になるが、直ぐに戻り
「これで、いいっしょ! 終わったならさっさと帰れよ!」
「言葉遣いが無ってないけど……まぁいいわ。お礼言ってほしかったら、言ってあげるわよ?」
“要らねーし!” と言って扉を閉める寧留。特に表情は変えずにお腹を触り自分の部屋に戻るエレアナ
(想像以上に効きますのね……あの男は何時も以上に激しくして怒りを私にぶつけて来たからね
ザンバーガと何かあったのは明白だけど……全く
ポーションも余り使えないから、頼ったけど楽になったわね)
自分の部屋に入り辺を見回す。メントは既に部屋に戻っている
「私は生まれた時からずっと独り……今更どうこう思いません。
私の未来は打首か 火炙りか どのみち極刑以上は決まってます。
ならば、その責任を取るに相応しい生き方をしてみせますわ」
ベッドに仰向けで横になり顔の上に手を当てるエレアナだった
一方 寧留は扉の前で立ちすくんでいた
(なに……あれ? 最近は回復魔法掛けたら、何処が悪いか結構 感触で分かって来たけどさ……嫌みだと思って掛けたら、明らかに腰の奥に腹の内部がおかしかったし体の各所も……あれ、そう言う事よ……ね?
どゆこと? あれ姫さんよね……明らかに普通じゃない感じってゆうか行為してんの?
姫さんが? 何で? は? えっ? )
今まで散々な目に合わされ、特に紅茶を頭から掛けられた以降、苛立ちが溜まっていた寧留
けど、先程の回復魔法で苛立ちが吹き飛び、一気に混乱していた
「寧留ちゃん? 大丈夫なの、何かあった?」
「んっ? だぁいじょーぶ、大丈夫だって! 問題ないし〜明日も鍛えんだからね! 速く寝るよ!」
ニカッて笑い皆に寝ようと促す寧留。
寧留が助けた女の子は帝都に居た子で名はミーナ。家に帰る事は出来なくて、今は寧留達と共に生活している。
身の回りの世話と、心の壊れたクラスメイトの女の子の世話をしていた
無理はしなくていいと寧留は言ったが、体を動かしてる方が気が紛らわせると言われて任せている
そして、それぞれの夜が更けて行った
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