第79話 次へ
門を出て砦から離れて2人を担ぐシンヤ
左脇に抱えられたエヴィリーナは目をキラキラさせて、右肩に担がれたダーネルは何処か達観した表情をしている
「出発するからしっかり捉まっていてくれ」
それぞれシンヤにつかまると走り出した
「はやぁぁぁぁぁぁい! 気持ちいぃぃぃぃですねぇぇぇぇ! いぇぇぇぇぇぇい!」
目を輝かせ楽しそうな声を上げるエヴィリーナ
「楽しそうだなリーナ嬢ちゃん……何よりだわ」
(2人の反応が対照的だな。エヴィリーナさんは楽しそうで何よりか? そう言えばリディーナさんも、表面上は冷静でも楽しそうな気配が感じられたな。姉妹だな)
あっという間にロードス王国に入り野営地には行かずに王城の前で止まるシンヤ
突然表れたシンヤ達に一瞬警戒する門衛たが、直ぐに気付いた。城の中に入る3人は侍従に声を掛けると応接室に案内された
暫く待っていると、オクベルトとユリアネアが入って来てシンヤに頭を下げた
「平木様、国王のオクベルトと申します。
この度は我が王国を娘達を救っていただき感謝申し上げます。ありがとうございます。」
「妻のユリアネアです。平木様、誠にありがとうございます」
「初めまして平木 靱平です。お力に慣れて良かったです」
席を立ち話すシンヤ。それぞれ頭を下げる3人。
エヴィリーナが立ち上がり帽子を外した白い髪が揺れた。
目を見開くオクベルトとユリアネア
「まさか
「ああ…何と言うエリナーティア! 会いたかった」
2人同時にエリナーティアを抱きしめた
「お父様、お母様……ただいま戻りました。ご心配お掛けしました」
抱き返すエリナーティア。少しの間、抱きしめていたのだった
「平木様、申し訳ありません。お見苦しい所をお見せしました」
「そんな事はありませんよ。漸く親子で会えたのですから、当然ですよ。
それと、敬語はいりませんから好きに話して下さい」
「そう言って頂けると助かりますわ。それで、そちらの男性はどなた様ですか?」
緊張して少し強張っているダーネルに、ユリアネアが顔を向ける
「あっ……えっと初めまして。俺ではなく、私はダーネルと言います。エリナーティア王女の補佐で仲間として付いてきました。宜しくお願いします」
「君がダーネル君か。レティシアから話は聞いてるよ。エリナーティアが世話になったようだね。ありがとう」
座ったままダーネルに頭を下げるオクベルト。
国王に頭を下げられて慌てるダーネルに
「それで、ダーネル君。エリナーティアとは本当にただの仲間なのかね? もしや、体の関係になってるとか」
笑顔のままダーネルに詰め寄るオクベルト。妙な威圧感に冷や汗をだらだら流す
「オクト? エリナーティアを支えてくれてる人に何をしてるのですか?」
「えっ? あっそのユリアネア。私はただ聞いてるだけで……その、すまない。ダーネル君も申し訳ない」
目が笑ってない笑顔でユリアネアはオクベルトに詰め寄ると、オクベルトは小さくなり謝った
ユリアネアも “ごめんなさいね” とダーネルに謝る
エリナーティアもダーネルの隣に座り頭を下げている
「ぜ、全然大丈夫です。気にしてませんから……ハハハ」
(もうヤダ砦に帰りたい。この国王夫婦の威圧感がハンパねぇ〜!)
「オクベルト陛下、話の途中ですが魔王と魔王幹部の対策の為にヴァリアント砦に戻らせてもらいます。それとエリナーティア王女のあの件ですが、分かりますか?」
シンヤの話に頷いていたが、あの件と言われて真剣な表情になるオクベルト。ユリアネアは悲痛な面持ちになった
「ジャルド・シクリーニがしてたことですね。聞いています。平木様が解除できることもです」
「はい。それで、当分の間は忙しく解除出来なくなります。エリナーティア王女の考えと意志になりますが、するなら今したいと思います
如何でしょうか?」
エリナーティアは息を飲んで左右を見る
「そうですね。これは、私への罰と思いそのままにしていました。
でも、それでお父様にお母様やお姉様に皆さんに辛い思いをさせているのなら解除します。
私も綺麗な体になり再出発していきます」
「分かった。それで良いですか? 陛下」
「娘の気持ちを最優先で行きます。どうか、宜しくお願いします」
頷くシンヤ
「分かりました。やり方は、毒霧を消したのと似ています。俺の刀で奴隷紋の所だけを斬り飛ばします。今から初めようか、この部屋の広さなら、そこに立ってもらえたら出来るよ」
シンヤが壁際を指差すと、緊張した顔で頷いて立つエリナーティア
シンヤは少し離れた所で刀を構える。
エリナーティアの奴隷紋を感じ視て、そこから身体中に伸びる特殊な魔力と力を掴んでいく
「よし、行ける。怖かったら目を閉じてるんだ」
言われて目を閉じるエリナーティア。刀の7色の光が強くなると下段から振り上げた
7色の光がゆっくりとエリナーティアの体に入り込むと、一瞬だけ体を包み込んで直ぐに消えた
「これで、奴隷紋は消えたよ。確認して見てくれ」
言われて目を開くエリナーティア、体から奴隷紋の魔力が消えて居るのが分かったが
ユリアネアに声を掛けて、部屋の隅で太ももを確認すると
「消えています……完全に……信じられません。
シン……平木様、ありがとうございます」
涙を流して頭を下げるエリナーティア。ユリアネアとオクベルトも一緒に頭を下げていた。
「平木様、本当にありがとうございます。娘の体も綺麗にしてもらい感謝のしようもありません」
「ええ、本当に……私達に出来ることがありましたら、何でも仰って下さい」
「こちらこそ、ありがとうございます。でも、今は立て直しに力を入れて下さい
先を急ぐので俺は、お暇させて頂きます」
名残惜しそうにするエリナーティア親子だが、もう1度頭を下げて見送った
王都を出たシンヤは
「……と、言うわけで
後は、戻ってからだが帝城に向かうメンバーの選別などに打ち合わせだな」
『分かりました。暫くは親子水入らずですね。詳しくは戻られてからにしましょう』
返事をして電話板を終了したシンヤはヴァリアント砦に向かって走り出した
その頃パールド王国の城の一室で
「ぬぅぅぅわぁぁぁんで、襲撃が失敗してるんだよぉぉぉぉぉ?! 折角、
「申し訳ありませんグルンテ殿下。襲撃は例の男に防がれました。
物資は裏切り者とバルボッサ商会のせいですね」
赤髪、碧眼で女性を虜にする甘いマスクをしたパールド王国第2王子グルンテとブルーナ公爵が話をしていた
「今は、これ以上目立った動きは控えた方が宜しいかと思います。
特に第1王子の死を訝しんでいる者もいますからな。次の動きに向けて準備の時間が必要です」
「漸く邪魔者を消したのにぃぃぃぃ!
地団駄を踏むグルンテ
「……殿下の御心を鎮めて頂く為に、街中で見つけた娘を呼んであります。存分にお楽しみ下さい、おい」
扉の側に立っているブルーナ公爵の腹心の執事長に声を掛けると、一礼して扉をあける
20代前半の女性がおずおずと中に入って来た
女性の顔を見たグルンテは一瞬だけ厭らしい笑みを浮かべると、直ぐに女性の近づいた
爽やかで甘い笑みで見つめながら
「お嬢さん、婚約者が他の女の所に行くなんて辛かったですね。知ってると思うけど、僕も先日に尊敬し敬愛して止まない兄上を亡くしてね
大切な人が側を、離れる辛さは分かるんだ
良かったら少しの間、僕と楽しいことしないかい?」
女性の顎を優しく持ち上げて至近距離から見つめるグルンテ
女性は蕩けた表情になり頷いてグルンテにしなだれた
女性をお姫様抱っこして隣の寝室に入るグルンテ
「全く……女を落とす能力だけは一級品だな。
女とやる事しか頭にないから扱いやすくて助かるが……ランドールは例の男にレティシアも離れて今がチャンスだ
ランドールの支配権を手中に収める為にも、今度はぬかるなよ」
後ろに控える執事長に言うと、頭を下げて姿を消した執事長
そして、隣から女性の嬌声が聞こえて来たので、静かに部屋を出たブルーナ公爵だった
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