第78話 お届け
ロードス王国の王都ヘルミアの前に設置されていた野営地
ヘルミアの調査が終わり生活が戻るまでそのまま使用することになった
その野営地で作業していた住民の女性。テントを出ると、いきなり目の前に大きい馬車が表れた
「な、なななななななっ?!」
驚いて腰を抜かした女性に手を伸ばすシンヤ
「驚かしてすみません。大丈夫ですか」
「あっ……平木様? ありがとうございます。この馬車は一体? 」
「そうなんですね! すぐ皆に知らせてきます。
それと、野営地は暫くの間は設置したままですので自由に使って下さい」
頭を下げて野営地の中に入って行く女性。エルファル達に向き直るとまだ、呆然としていた
「一体……何が起こったの? ここは何処?」
「馬車が浮いたと思ったら、ビューンって飛んで着いた」
「もはや人間離れと言うか……人間ですか?」
「それは失礼だよ……失礼だよね」
「貴女達、落ち着きなさい。団長も現実に戻って下さい。荷物を降ろしますよ」
馬車を下りてエルファル含めて呆然としていると、後ろから手を叩いて皆を促すメーテル
シンヤに頭を下げて
「シンヤさんごめんなさい。初めての経験だったので皆驚いてしまって、後は、こちらでやります
なので、こちらは大丈夫です」
「ありがとう、後は任せたよ」
女性から声を描けられて集まった人達
その中に居た兵士に声を掛けてレティシアに伝言を頼んで側を、離れると電話板を取り出した
シンヤから連絡を受けたアリュードは
「では、ロードス王国は解放されたのですね。お父様とお母様に皆も無事だった……良かった……」
「話を聞いてるとすげーな。刀の一振りで王都を覆う毒霧消すわ。城を傷付けず外から中の犯人倒すわ……旦那1人居たら充分な気がするな」
「確かに、そう思えるぐらいは凄いけど、シンヤさんばかりに頼る訳にもいかないよ
流石に1人では限界もあるだろうし、俺達も力をつけないとな」
ユイナとエヴィリーナは頷いた。ダーネルは “まぁ、そうだな” と呟いた。
「シンヤさんがロードス王国から迎えに来て下さるのですね? 私とダーネルさんが一緒に行くので準備しないとですね」
「俺も行くのか……一応
「目は付けられるかもね」
「マジかよ殿下、勘弁しほしいわ」
頭を抑えて下を向くダーネル
「そこまで心配しなくても大丈夫よ、ダーネルさん。お父様もお母様もそんなに厳しい人ではないもの」
「だといいんだけどな……あのクランに入ったばかりに、面倒ごとに巻き込まれてる気がするな」
「聞こえてるよ~ダーネルさん? でも、世間知らずな私を、影からサポートしてくれてありがとうございます」
優しく微笑みながらお礼を言うエヴィリーナ。真正面から頭を下げられ、思わず顔を横に向けるダーネル。
僅かに見える頬が赤くなってるのが分かった
「先程の話を聞いてシンヤさんの移動速度が上がってると思います。なので、私達の予想より速く来るかも知れません」
「そうだな。今日の朝にランドール出発して昼過ぎに全て解決してるから……良く考え……無くても凄いな。もう来てたりするのかな」
「来てるよ」
「「ぶふうぅぅぅぅぅ?!」」
話してから紅茶を飲んでいたユイナは、バルコニーからシンヤの声が聞こえて、同じく飲んでいたエヴィリーナと同時に吹き出した
アリュードがユイナのダーネルがエヴィリーナの背中を擦ると、隣の部屋に居たクリエーナが音も無く表れて机の上を掃除している
アリュードはシンヤに向いて
「シンヤさん? さっき連絡貰った気がしますけど……ロードス王国に居ると言われた気がしますけど……あれ? しかも服装が違いますか?」
「連絡した瞬間はそうだけど、すぐ移動しながら連絡したから早く付いたんだ。この服装が本来の俺の姿だよ。
ロードス王国から着替えの時間が惜しくてずっとこのままだな」
「なーるほど、オーダーメイドってやつか。よく似合ってるなシンヤの旦那。こんなに早く来るとは思って無いから、悪いけど少し準備させてほしい
その間にリリィの嬢ちゃんに会ったらどうだ?」
ダーネルが言うと呼吸が落ち着いて来たエヴィリーナがこくこく頷くと、席を立ち準備の為に部屋を出た
「それなら、着いて直ぐに会いに行ったよ。アリュード殿下が伝えてくれたんだろう、ありがとう。
手軽に食べれる昼食を作り待って居てくれたんだ
少し話をしてからここに来た」
「はい、お伝えしましたが、リリィさん帰る時間が分かったのか? なんか凄いな……」
「所で、シンヤさん。エヴィリーナさん達をロードス王国に運んだらそのまま居るのですか?」
呼吸を完全に整えてから聞くユイナ
「いや、こちらに戻るつもりだ。皆の現在の腕もみたいしね。
後は少々手荒になるが、カイルド帝国の帝城にいるユイナさん達のクラスメイトも救出しようと思う。ザンバーガが動いてる以上速く助け出したい」
「分かりました。少しでも強くなるよう特訓続けます。救出は何時でも動ける様に整えておきます」
「そうですね。阿仁間君に他の皆も気になります……皮肉なものですね。襲われて逃げた私がまともに扱われ、残った殆どのクラスメイトが酷い扱いを受けるなんて……私も出来ることはやります」
(東城先生も居ますね……どうするのでしょうか? )
無表情は何時もと変わらないが考え込むユイナ。
「俺は、もう少しリリィさんに話があるから調理場行ってくるよ。
悪いがエヴィリーナさん達が来たら門の前で待つよう伝えて欲しい」
「分かりました。お任せください」
”宜しくね“と言って部屋を出る。因みにバルコニーから入ったからとらバルコニーから出るシンヤを見て
(衛兵を気にしたのかな? そこは、問題ないんだけどな)
見送りながら考えるアリュードだった
調理場では、一段落して休憩に入ろうとしたリリィに
「リリィちゃん! シンヤさんが呼んでるよ、これから休憩だろ? 行ってきなさい」
「えっ? 分かりました。ありがとうございます」
(何だろう? もしかしてお弁当に食べられない物が入ってたのかな?)
首を傾げてシンヤの所に行くリリィ
「リリィさん度々ごめん。まず、あの後本来の姿で砦に居て大丈夫?」
「はい、大丈夫です。皆さん変わらず接してくれます。問題無いです」
笑いながら答えるリリィ。嬉しそうに、尖った耳が上下にピコピコ動いている。シンヤの服は一度見ているので、驚きは無かった。
「それは、良かった。で、もう一つだけど魔界に入った時にリリィさんが居た村に寄ったんだ
その時に持って来れる物を回収したけど、いるかい?」
「えっ?! あっ……それは……すみません。まだ、完全に気持ちの整理が出来てないので……その」
「分かった。気持ちの整理がついて、見れる様になったら言って欲しい。それまで、大事に持っておくからね」
リリィは “すみません” と頭を下げた。同時に耳もシュンと下がる。
人間に変装していた時は動かなかったが、魔族の姿でいると頻繁に動く耳。少し下を向いていたリリィだったが、顔を上げて
「あの……また、お時間ある時で構いませんので、話を聞いて貰えませんか? その……回収して頂いた物にも関係するのです……無理にとは言いません」
「分かった。エヴィリーナさん達を送り届けたら砦に居るから、その時話を聞くよ」
明るい表情になり “ありがとうございます” と頭を下げるリリィ
一言二言話をして別れたシンヤは門に向かうとエヴィリーナ達は先に待っていた。
エヴィリーナは帽子を被り髪を完全に隠していた
「ごめん、待たせたかな」
「いえ、私達もさっき来たばかりなので大丈夫です。シンヤさん、宜しくお願いします」
「宜しくな、シンヤの旦那。俺は覚悟を決めたよ……多分」
頷くシンヤは、2人を伴って門の外に出た
因みに、シンヤは門をくぐらないで砦に入った。
その為、門衛は内から表れ更に服装が変わっているシンヤに2度驚いていた
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