第73話  突然の訪問



 夕方までにはランドールに着いたシンヤは、そのままギルドのリディーナに会いに行く

 また、戻る途中でニーナ達から連絡があった



『ニーナです。人間側に潜り込んでいる者達が分かりました。どの国に潜り込んてるかまでは分からなかったです』



 ニーナは名前と特徴を伝えると紙に書いていくシンヤ



「ありがとう。また何か分かったらお願いします。それと、力が必要になったら言ってくれ。手伝おう」



『はい、分かりました。その時になったらお願いするわ。ところで、ヒカリと変わる?』



「彼女は元気にしているかな?」



『ええ、元気そのものね。彼女のお陰でロイドも落ち着いてるわ。後、貴方の話を聞いたアリュード殿下からも連絡が来たわね。ユイナさんだっけ? その人とも話はしてたわ。ただその時は、まだ潜入は掴めてなかったから話してないけど、このあと連絡する予定。構わないわよね?』



 ニーナの確認を聞いて ”お願いする“ と話すシンヤ。ヒカリが元気なのも分かったので、連絡を終わったシンヤはランドールに向かった

 シンヤから話を聞いたリディーナは



「まさか、魔王幹部と戦いになるとは想像していませんでした。それと、本当に魔族のトップの方が協力してくださるとは……お陰で相手の目安がつきましたね」

 


「そうだな、情報を照らし合わせてロードス王国で毒をまき散らして国王たちの意識を封じている魔族は2人居るな。

 その2人を倒せば毒はなくなり目を覚ます。

 それと、此方側に潜伏している魔族は倒しても構わないから、気にしなくて良い」



「分かりました。ありがとうございます。毒は王国全土に撒いてるからか、それ程強く無はないです

 でも、完治が出来なくて徐々に疲弊してきています……お父様達も皆も助けに行かなくては!」



 お礼を言って頭を下げると、奥歯を噛み締めるリディーナ



「どれ程の毒か分からないが状況は一刻を争う。出発は明日の朝、出ようと思う。行けるか?」



「はい、大丈夫です。暫くは副ギルド長にお願いします。副ギルド長は先程、パールド王国の依頼で集団発生した魔物の討伐に行って帰って来ました。

 話したら当分ランドールにいるから大丈夫だそうです」



 頷くシンヤ

 


「この前の事もあったから確認だけど、信頼出来る人かな?」



「信頼出来ます。大丈夫です。」



「……そうか、分かった。じゃ、明日の朝出るとはしよう。今晩は、ここで泊まらせてもらうよ」



 ”分かりました“ と返事をするリディーナ。後は、そのまま解散となりギルドの宿泊施設に泊まったシンヤ

 

 次の日の朝、エリナがシンヤを呼びに来て執務室に行くシンヤ

 中から複数の気配を感じたシンヤは、扉をノックした

 リディーナの”どうぞ“ の声が聞こえて中に入った瞬間、右からロングソードを振るわれたシンヤ

 尤も入る前から気付いていたシンヤは、素手で軽く受け止めてロングソードを奪うと相手の首に突き付けた

 相手に【威圧】を叩き付けると全身から冷や汗を流して、体を小刻みに震えさせる女性

 黒目が恐怖に揺れていた。シンヤは顔だけリディーナに向けると、非常に申し訳無さそうな顔で此方を見ていた

 更に、視線をソファーに動かすと、1人の女性が座り優雅に紅茶を飲んでいた。後ろには護衛の女性騎士が2人立っている

 ウェーブの掛かった桃色の髪に少しツリ目のピンクサファイアの色をした女性は優雅に立ち上がり頭を下げてきた



「平木様、いきなり御無礼を働き申し訳ありませんでした

 私はパールド王国の第一王女 ローザリンデ・メイ・パールドと申します。

 以後、お見知りおきを。そして平木様に剣を振るった者ですが、パールド王国の者でランドールでクラン【パルティノス・ローズ】の長をしているエルファル・テラメードと言います

 本人が平木様の実力を知る為に、不意打ちの対応を見ようとして返り討ちにあいましたね」



 言い終わるとソファーに座り紅茶を飲むローザリンデ

 シンヤは、エルファルに向き直り【威圧】を解くとへたり込んだ彼女の横にロングソードを置いて扉を閉めた

 閉めると、そこに魔道士の格好をした女性が居た

 【威圧】に当てられてエルファルと同じく、全身冷や汗を流してへたり込んでいた



 シンヤはそのままローザリンデの反対のソファーに腰を掛けた。

 リディーナが紅茶を用意していると、手で制したのでリディーナは執務机の椅子に座る



「それで、パールド王国の王女様が俺に何の用かな?」



「先ず、私は平木様の敵では無いとお伝えする事と、パールド王国に入り込んだ魔族を探すのにお力をお借りしたいのです」



 シンヤの態度に、少し反応しかかった騎士だが直ぐに戻った

 そのシンヤは魔族の所でリディーナを見ると必死に何度も頭を下げていた



「申し訳ありません。私も一応王女ですが、パールド王国程の大国の王女が相手では……話しました」



「一国の王族がそう何度も頭を下げて情けない。

 もし一度頭を下げたら後は、毅然として尊大な態度でいなさい」



 ペコペコと下げるリディーナに指摘をするローザリンデ。すると、リディーナは

 



「尊大って……そんな横柄で傲慢な態度で居たら人心は離れるわよ。相手の事を見て常に寄り添うことが大事です」



「私の言う尊大は、決して横柄や傲慢な事を言ってるのではありません。

 常に毅然と構え動じずにいること。ちょっとした事ですぐ頭を下げる 相手の顔色を見て動く者に、誰が安心してついて行くと言うのですか?

 国民は国の為 自分の為に働き、為政者は国民の為により良い政をなし、他国とは対等に接して国を発展させていく……違いますか?」



 ローザリンデに突っ込まれたリディーナは ”うっ“ と言葉につまる



「そもそも貴女は人を見る目がありません。本質も分からず 見抜けずに、自分にとって大事な事を言ってくれる副ギルド長の話を、見た目と口の悪さで聞かなかった。

 それで、シクリーニ候爵家の見た目だけで頭うじ虫湧いてる男に引っ掛かり、私達が気づいた時にはエリナーティアエヴィリーナを奴隷にされたのですよ

 その裏で私達が候爵に気付かれない様に、こっそり色々としていた事にも気づいてないでしょうね

 バルボッサ商会に秘密裏に話を通したりなど……

 本当に貴女はバカ何ですか? アホですか?

 剣の腕を磨くのも大事ですが、もっと人を見る目と本質を見抜く目を養いなさい!」



「……はい……仰る通りです……ごめんなさい……ぐうの音もありません……もっと鍛えます」



 椅子の上で縮こまりしゅんとなるリディーナ



「あっ……話が逸れてしまいました。申し訳ありません、平木様」

 


「構わないよ。大事な事だからね。ローザリンデ王女はリデ……レティシア王女と仲が良いんですね」



「はい、レティシアの母と私の母が姉妹なんです。ロードス王国の王女で、妹である私の母がパールド王国に嫁いで来たのです。私とレティシアは親戚ですわ」



 頷くシンヤ。チラッとリディーナレティシアに視線を向けると、復活したエルファルが紅茶とお茶菓子を用意していた 

 

 

「ローザリンデ王女が知りたい魔族の情報だが、パールド王国に潜伏している魔族の姿や力は分かってますか?」



「はい、姿は分かります。力は多分全てでは無いですが、分かる範囲でお話します」



 ローザリンデから聞いた特徴から調べるシンヤ。

 結果、潜伏してる魔族5人の名前と能力が分かった



「そうですか、だからお父様に近づけたのね。宰相を更迭する前に、まずはこの魔族を消しましょう」



「大分、中枢まで入り込んでるな。カイルド帝国もそうだが、各国が危うい状態か……」



「はいレティシアに偉そうに言いましたが、私の国も気付くのが遅れたので、人の事は言えませんね

 お父様は小心者ですが、見栄や虚栄心だけは人並以上あります。

 今は、宰相など優秀な官僚の方々のお陰で何とかなってますが、彼らが失脚すると国は傾きます

 だから、お母様が王の座に着いて、女王として国を立て直そうと根回ししています

 尤も、魔族の影響で上手く行ってません

 更にお父様はロードス王国との国境を封鎖するは、兄様はブルーナ公爵によいしょされて、国を本気で乗っ取れると思い込んでいます

 お父様に甘やかされて種付けしか頭に無い頭スッカラカンだと言うのに!……度々、お見苦しい姿をお見せして申し訳ありません」



 座ったまま綺麗に頭を下げるローザリンデ



「俺の事は気にしなくて良い。話せる範囲で話してくれて構わない。溜まったものは、吐き出せる時に吐き出すに限る」

(色々と苦労してるんだろうな。ストレスもかなり溜まってるのだろう。話を聞いてあげたいがロードス王国の事もあるし……)



「お気遣いありがとうございます。今ので結構吐き出せました。

 魔族の正確な情報さえ手に入れば後は、こちらで、何とか出来ます

 それと、メーテル。 あまりレティシアを甘やかさないで下さい」



 魔道士の格好をした女性 メーテルがマジック袋からケーキを取り出しリディーナにあげていた

 視線を動かさずに言うローザリンデの言葉を聞いて、リディーナは喉にケーキを詰まらせる

 慌てて紅茶を飲むリディーナと背中をさするメリーナであった



 









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