第70話  当然やり返す



 同時に動いた2人はシンヤは下から、ザンバーガゴブリンは上から攻撃を仕掛けた


 上から暴風の渦を叩きつけるザンバーガに対して、シンヤの振り抜くと同時に気力を開放した一撃がぶつかった衝撃で辺りに風が吹き荒れた



「わわわ……飛ばされるよ」


「私に捉まってたら大丈夫だから2人共捉まって!」



「それはどういう……リリィ危な……い?」



 捉まる様に言ったリリィに瓦礫が飛んできたが、当たった瞬間粉々に砕け散った



「私はシンヤさんに強力なお守りを渡されてるの。ただ、強力な分発動までに時間が掛かってさっき効力が出始めたの」



「おお〜! ナイスタイミング……かな?」



 驚きながら首を撚るサリーナに



「そうね、ナイスタイミングね。私は魔法に集中してるからリリィが捉まってくれないかしら?」



「わかったわ。サリーナは反対側に捉まって」



「うん……って何か飛んで来た?! って……おお〜」



 言われてステラの左右に捉まる2人。

 すると何かの破片がサリーナにぶつかったが粉々になり驚きの声を上げた

 その声を聞きながら魔法を練り上げているステラは、シンヤが戦っている場所を見上げた


 シンヤの刀とぶつかり合っている暴風は徐々に威力を弱めていき、刀が斬り割いていく

 暴風を完全に切り裂いて無防備になった一瞬を突いて、ザンバーガは両手を組んでシンヤに振り下ろした



(ゲンゾーとの戦いでこの技の隙も分かっておる。貰った……?!)



 シンヤは振り抜いた刀を順手から逆手に持ち替え振り上げてカウンターを放った

 振り上げた刀はザンバーガゴブリンの両腕の肘を断ち切った

 その勢いのまま地面にめり込ませた右足を軸に、後ろ回し蹴りをザンバーガの腹の部分に叩き込み空中に蹴り上げた



〘ぐぅお?! くっ、油断したか〙



 そして、ステラの複合魔法も練り上がった。風槍の中心から火が渦巻き貫通力を上げた風火の槍



「これで、終わりよ!」



 ザンバーガゴブリンの魔力の塊に狙いをつけて解き放った

 真っ直ぐ魔力の塊に突き進む風火の槍

 それを、見たザンバーガは笑みを浮かべ魔力の塊の前に魔力を固めた防御壁を張った



〘小娘にしてはやるが、この程度ではこの体の結晶コアを壊せぬわ!〙



「どうかな?」



 シンヤが言うと訝しげな表情になるザンバーガ。


 すると、風の回りを渦巻いていた火が完全に風の槍と一体化して風炎となり、更にスピードを上げ魔力の防御壁を破り魔力の塊を貫いた



〘我が体では無いにしろ、我の魔力で防御力を上げた結晶コアを撃ち貫くとは……少々侮りすぎたか〙



「この時代に生きてる者達も決して弱くはないからな」



〘そのようだな……欲に塗れた腑抜けどもしか見ておらんかったようだな。今回は引くが、次は思うようには行かぬぞ。魔王様復活は止められぬ〙



 言うとザンバーガの気配が消えて地面に倒れたゴブリンは命の素が無くなり完全に崩れ落ちたのだった



 全ての様子を木の陰から見ていたピアスト



「クソ! ザンバーガめ! 人を切り捨てやがって……こうなったらパールド王国の第2王子に、ゲバァ?!」



 立ち去ろうとした瞬間、顔面を殴られたピアスト



「ふげぇ?! お前はぁ!」



 殴ったシンヤがゆっくりとピアストへ歩いて近づいていく

 無表情のシンヤにいも言われぬ恐怖を感じたピアストは背を向けて逃げ出そうとした



「んがぁ?! いがぁぁ!! 腕がぁ! 足がぁぁ!」



 逃げ出したピアストの両腕、両足を切断したシンヤ。血は出ない様に斬ったが、痛みは消える訳ではなく痛みでのたうち回るピアスト

  ピアストの襟首を掴みリリィ達の居る部屋に上から降りるシンヤ

 ピアストの状態を見て顔を青くする3人に



「皆、ご苦労様。悪いけど少しの間、後ろを向いて耳を塞いでいてくれ」



 こくこく頷く3人は、後ろを向いて耳を塞いだ



「な、何を……するつもりだ」



 痛みで顔を歪めながら聞くピアストに



「お前は今まで実験と称して多くの魔族の女性達をゴブリンの慰み物にしていたな」



「それがどうした……所詮奴らは、汚らわしい魔族ども……俺の役にたてたんだ……喜ぶべきだ」



 それに対して何も答えずピアストを引きずりながら、グレードソードで壁に縫い付けられたゴブリンの前に行くシンヤ

 


「何だ……これは?」



 驚きの顔で見るピアスト。ゴブリンの顔は布で隠されており、布の上に何かの袋が置かれていた



「千年以上前の時代にも、お前みたいなくだらん事を考える奴らは一定数居た。

 中にはゴブリンや他の魔物同士の交尾で新たな魔物を作ろうとした奴も居たんだ。

 その為にそいつは、どんな相手でも興奮する媚薬を作り出した。最初に見たやつに性も根も果てるまで行くやつをな」



 最初は何を言ってるか分からなかったピアストだが、意味が分かり顔を引きつらせた



「まさか……その袋が媚薬か……まて、巫山戯るな! 止めろぉぉ!!」



 ピアストの後ろ頭を掴みゴブリンの顔の前まで持って行き布と袋を取り外した

 ピアストと目があったゴブリンは、よだれを垂らしながらピアストに興奮し始めた

 ピアストを地面に放り投げゴブリンに刺さっていたグレードソードを引き抜いた

 


「おい止めろ! 俺を助けたら知ってる事は全て話すぞ! どうなんだ?!」



「ああ、砦の者達が来るまで時間があるからな。来たあとにでも聞かせてもらうさ」



 ゴブリンはピアストの左手太ももを掴んで引き寄せた。

 ゴブリンのある物を見たピアストは顔を真っ青に染めていた

 シンヤはリリィ達を後ろから抱えて “耳を塞いだままで” と言って外に出た

 その直後、ピアストの野太い悲鳴とも雄叫びとも取れる声が響き渡った


 




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