第66話 潜入捜査? いいえ子守です



 一夜明けたロイドの部屋にて



「その朝食は街で買って来たの?」



「そうだよ。流石に、ここで俺たちのご飯を用意してもらう訳には行かないからな」



 昨晩はこんこんと話をして今後の動きを纏めた3人。

 朝になりシンヤが一人で街に出かけて2人分の朝食を買って帰ると聞いてくるニーナ

 念の為に隠密ローブに隠れて4人で朝食を食べている

 ロイドは2人のお姉ちゃんに挟まれてニコニコで食べていた

 


「人払いはしているからわざわざ隠れる必要はないと思うけど? 念には念をかしら」



「外の護衛以外にこちらを視てる気配もあるからな。例の奴らか分からないが警戒をしてし足りない事はない。それに、なるべく俺達は見られない様にしたい。今後のためにもね」



 何回か頷きながら話を聞くニーナ。彼女にも思い当たる事があるのだろう

 朝食を食べ終わり、シンヤとヒカリは変装リングで魔族の姿になった

 その変わり様に驚くニーナとロイド



「これが古代の魔導具。ここまで魔族に変身出来るとは……これなら、たしかに私やロイドの付き人を出来ますね」



「ひよりおねえちゃんじゃないみたい〜このおすがたでいるの?」



 2人の前でゆっくり小さく回るヒカリ。シンヤが考えたの作戦は昨晩、ロイドはバルコニーに出られたので少し頑張って街に出かける。

 そこでヒカリ=ヒヨリひよりを見たロイドが気に入り自身の付き人にするものだった

 多少どころかかなり強引だが



「魔王権限で押し通しましょう。これぐらいなら多分大丈夫ですよ」



「これからひよりおねえちゃんといっしょだよね! わーいわーい!」



 ヒカリに抱きつくロイド。シンヤとヒカリに懇切丁寧に説明されて、昨日よりは軽く抱きついて来るので、抱き返す事が出来るヒカリ

 若干、面白くなさそうな顔をしているニーナに



「……色々と大丈夫か?」



「問題ありません。ただの姉弟の抱擁ですからね」



 表情を戻し “全然大丈夫です” と言うニーナだが、ロイドの次の発言で一変する



「きょうからひよりおねえちゃんと、いっしょにおやすみするの〜 おふろもいっしょにはいろうね」

 


「うぇぇ?! いや〜それは、ちょっと所でなく駄目かな〜」



「な、お、落ち着きなさい!……それは駄目よ! 一緒に寝るのもお風呂に入るのも姉の私の役目よ!!」



「貴女も落ち着け! いきなり何を言ってるんだ」



 目を見開き興奮気味に言うニーナに突っ込むシンヤ



「やーだ! ひよりおねえちゃんといっしょがいいの!」



「うっ?! う〜ん、そうだね~ 一緒におねんねするぐらいならいいのかな〜 兄妹だもんね」



「んなっ?! 駄目に決まってんでしょ! 何をしたり顔でこっち見てんのよ!」



 腰に抱きつきうるうるの目で見られて心が動くヒカリに、噛みつく様に言うニーナ



「2人とも一旦落ち着いてくれ。話が進まない」



「黙ってなさい! 家族の話に口を挟まないで!」



 文句を言ってくるニーナの前でロイドの頭を撫でるヒカリ

 そんな2人にため息をつくシンヤであった





「あ〜う〜 頭が〜い〜た〜い〜」



「うぅっ……まさか、この年でげんこつを入れられるとは思わなかったわ……」



 揃って頭を抑えるヒカリとニーナ。余りにも話が変な方向にヒートアップしたので、ロイドを眠らして(物理的ではなく) 2人にげんこつを入れたシンヤ。

 暫く痛みでのた打ち回っていたが、落ち着いて来た事を確認して治すシンヤ



「いきなり頭を殴ったのは申し訳ない。だが、時間が無いからね。ロイド君も起こさないといけないしサクッと行こう」



「はい、そうですね。ごめんなさい」



「えぇ、私もごめんなさい。そうしましょう」



 その後は、無事落ち着きを取り戻した2人。

 ヒカリの身を守る魔導具を渡し使い方を説明するシンヤ。



「この様な金属の板で連絡が取れるとは……実際、目の当たりにしても信じられません。

 しかもこの世界に元から居た者には使えないんですね」



「でも、これでシンヤさんとも連絡取れますね。」



「何かあったら何時でも連絡してほしい。で、本当に隠密ローブは要らないのか?」



 一通り説明を聞いて “電話板” の所で1番驚くニーナ。



「はい、私はロイド君の付き人ですから。それに、素人の私が隠密ローブで姿を消して調べてろくな事になりませんよ

 潜入捜査みたいな事は私に向きません。大人しく子守をしてロイド君の側にいます」



「貴女が側に居ると、魔導具でロイドの安全も守れるでしょうから、それは安心ですね。

 くれぐれも過度なスキンシップはしないで下さいね」



「3人仲良くしてくれよ」

(……残して本当に大丈夫か? しかし、ロイド君の説得にかける時間もないしな。まぁ、連絡がつく人がいるのは有り難いか……だが、ヒカリさんのあの態度は一体なんだ? 引っ張られた?……まさかな)



 その後、目を覚ましたロイドに話して街に行く2人。

 無事にヒカリひよりをスカウトして屋敷に戻ったロイド達


 その日の夜



「やだー ひよりおねえちゃんといっしょにおふろはいるのー」



「あのね、ロイド。添い寝するのは致し方なく……ほんっとぅぅに致し方なく認めたけど、一緒にお風呂に入るのは流石に……って、おい。

 何故、貴女はバスタオルに着替えてるのだ」



「背中を流してあげるぐらいはいいかなーって、思ったの。一緒に入ろうねロイド君」



 嬉しそうにするロイドに頭を撫でるヒカリ



「んなっ?!……なら私も入る! 入って背中を流すぞ! 直ぐに着替えるから待ってなさい!」



「待ってたら風邪を引いちゃいますよ。だから、先に入ってようね〜」



 ロイドの手を引いてお風呂に入るヒカリ。慌ててバスタオル姿になり後を追うニーナ

 結局3人でお風呂に入ることになるのだった

 

 お風呂を上がった後は、中身5歳児のロイド君は直ぐに眠りについた。左右からお姉ちゃんに挟まれて


  本当に大丈夫だろうかこの3人は…… 




 その頃、ヴァリアント砦に戻ったシンヤはアリュードの執務室に呼ばれて部屋に入ると


 アリュードと警邏隊長が同時にシンヤへ土下座したのだった


 







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