第63話 今の魔王は
日中の喧騒が鳴りを潜め静かになる夜
現魔王であるロイド・ヴァーミリオンはベッドの上で膝を抱えて小さくなっていた
「……お姉ちゃん ママ どこにいるの?」
ロイドに転生する前は、母親と姉の3人で暮らしていた。
ある日3人で公園に行って遊んでいたら、突如 空が青白く光ったと思ったら慌てて駆け寄る母親の姿を見たのが最後の記憶である
次に目覚めたときは見たことない女の人が抱きついて来た
灰色の肌に尖った耳をしている
涙を流しながら話しかけてくる言葉は分かるけど分からない状態
周りを見ても皆似たような姿に見たことない場所
そんな中でこの子が取った行動は
「う……うあぁぁぁぁぁぁぁん?!」
ひたすら泣きじゃくることだった。5歳児が転生していることを知らない姉のニーナは当然、いきなり泣かれたことに困惑した
しかも幼子が泣くような泣き方の為に余計に驚いていた
しかも “おねえちゃん” “ママー” と泣くので、ここにお姉ちゃんは居るよと自分を指して言っても “ちがうー!” と言われて地味に大ダメージを食らっていた
ロイドを色々と調べた結果瀕死の重傷を負った影響で幼児退行したと結論づけた魔族の官僚達
元々父親の補佐もしていた姉のニーナは、父親の死後はロイドの補佐について居たが、ロイドの幼児退行(転生)で代理として務めていた
ベッドの上で蹲るロイドの足元に1通の手紙が放り込まれた
乾いた音がして足に当たった手紙を拾って見ると日本語のひらがなで書かれた文字を見不思議そうにしていた
最初は気づかなかったが、この世界の言葉では無いひらがなだと分かったロイドは封筒から手紙を取り出して読み始めた
母親達とひらがなを勉強していたので、少しずつだがゆっくりと読んでいく
何回か読んで意味がわかったのかバルコニーを見ると窓を開けて外に出ると、突然何かに包まれた
驚いて横を見ると黒髪 黒目の女の子と目が合ったロイドは
「おねえちゃん!」
中身5歳児でも、外見はヒカリより背が高く体格も良いので飛びつかれた勢いで後ろに倒れそうになったが、背中を
「お姉ちゃん? まさか弟(転生) なのか?」
「えっ? はっ? いえ、私に弟は居ませんよ?! ねぇ誰かと間違えてるのかな?」
「ちがうもん! おねえちゃんだもん!」
言ってより強くヒカリの腰を抱きしめるロイド。肉体は15歳で、素で力がある魔族の男子に強い力で腰を絞められたヒカリは”ぐえっ“ とつぶれた声をあげた
見かねたシンヤが2人を引き離した。元の黒髪、黒目の姿に戻っているシンヤを不思議そうに見ながら
「……おじさんだぁれ?」
「おじさんは君のお姉ちゃんのお友達だよ。」
「ふぇ? えっ? えっ?」
君のお姉ちゃんと言われ驚くヒカリに小声で”合わせてほしい“ と言われて、少し間を置いてうなずいた
ヒカリの返事を確認して少しだけ目線をロイドに合わせて
「君のお姉ちゃんはね、頭を怪我してここに来る前のことがはっきりと分からなくなっちゃったんだよ」
「わからなくなっちゃった?」
「そうだね。君の事やお母さんのことが思い出せなくなって一時忘れてるんだよ。お姉ちゃんもお姉ちゃんの名前を忘れててるんだ」
ヒカリとロイドが同時に驚いた顔になった
「そんな?! ぼくのことわすれたの?」
「そうだね。つらいよね、さみしいね。それで、お姉ちゃんが思い出すために、お姉ちゃんのお名前と君のお名前を教えてくれるかな?」
泣きそうになったロイドだが、名前を教えてほしいと言われて滲んだ涙を拭いて
「おねえちゃんはひよりおねえちゃんで、ぼくは……ぼくは……あれ? おもいだせない……なんで?……うぅ〜」
「ひよりお姉ちゃんか……」
(自分の名前を思い出せないのは、低年齢の転生をした影響か?)
自分の名前を思い出せなくて、頭を抱えて蹲り泣きそうになるロイドにシンヤが手を伸ばすより先にヒカリが優しく抱きしめていた
「お名前が思い出せないんだね。つらいよね、お姉ちゃんも同じなんだ。だから、いろんなお話して、いっしょに思い出していこうか」
蹲るロイドを後ろから抱きしめて頭を撫でるヒカリ。少して顔を上げたロイドはこくこく頷く
それを見たシンヤはヒカリに耳打ちしてこの世界の事を話そうと言うとゆっくり頷くヒカリ
(本当ならもっと仲良くなって落ち着いた頃が良いんだろうな。時間が無いとは言え、こちらだけの都合で振り回すことで辛い事になるだろう……
幼子には難しい話になる。嫌がったら諦めて当初の予定の1つお姉さんの説得を2人でしないとな)
「ねぇ、ひよりお姉ちゃん達のお話を聞いてほしいんどけどいい?」
シンヤが考えている間にヒカリが聞くと頷くロイド
2人で話を始めた。最初はシンヤがメインで話していたが、ぐずりそうになるとヒカリがあやした
気づくとヒカリがメインで話してシンヤが補足していた
「……いまはママにはあえないの?」
「そうだね。今は、会えないけどいつか会えるようになるんだ。
お母さんに会えるときにお母さんを驚かしてあげよう。こんなに大人になったよってね」
(2人の転生か召喚出来ないか今度、女神に聞いてみるか)
「……おとな……うん、ぼくがんばる!」
気付いたら三角座りをしているロイドを抱きしめるヒカリと頭を撫でるシンヤ
ロイドはヒカリに抱き返していた
(あ〜可愛いなぁ〜 最初は驚いたけど、だんだん可愛くなってきたよ~
でも……力がつ・よ・いー! 痛いぃぃぃー!!
あっシンヤさんが離してくれた……力加減どう話そう?)
必死に痛みを堪えて笑いかけるヒカリにすぐ気付いたシンヤはロイドを少し離した
「君は……っと、名前が無いと呼びつらいな。名前を思い出すまでは、呼ばれていたロイドでも良いかな?」
「う〜ん……お姉ちゃんも呼びたい?」
いきなり振られたヒカリは自分に回復魔法かけていた所だったので驚いた
「ふにょ?!……うん、そうだね。お名前があると嬉しいな。ロイド君って呼んで良い?」
「うん! 良いよ! 僕は、ろいどだね」
満面の笑みを向けられたヒカリは、思わず抱きしめてしまいそして締め上げられた
若干だが青くなるヒカリを見て”力の加減どう教えようか考えながら2人を離した時
扉をノックする音が聞こえた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます