第55話 真相②
シンヤにお酒を注いで貰いご機嫌な女神は1口にぐぃっと飲んでシンヤに注ぐ
「さぁ~さぁ~グイッと飲んで~」
「夢で酔わない筈なのに、1口で酔ってないか?
飲むから話を頼む」
「こうゆうのは気分しょ~」
楽しそうにする女神。顔は笑顔のまま姿勢を正して
「んで、私が視えた事だけど
まず、ギルドを裏からこねくり回そうとして首ちょんぱされた
今度は、エルード商会とカイロス商会が手を組んで経済から引っかき回すつもりだよ~」
「ふむ……しかしそこまでしてランドールを抑えたいのは何故なんだ?」
首ちょんぱした本人は女神に酒を注ぎながらランドールを手に入れたがってる理由を考えると
「それは、今1番戦力があるのはギルドだからさ~
その総本山のランドールを押さえれば世界も取れるからでしょうね。
流石は、1000年以上前の勇者パーティー前線基地が土台だね
だからランドールは中立都市何だよ~
その為裏から腹の探り合いしてんだわ」
「それで、武力ではなく経済面を押さえようとしてるのか」
「そうそう~NO.1のバルボッサ商会を潰せばランドールを抑えれるけど~
今の所は上手く行ってないね。バルボッサ商会はランドールに本店構えてるから全ての国に支店があるよ~
でも、両商会はそれぞれの国に本店があるからランドール以外は余所に置けないんだわ」
日本酒を飲む女神。シンヤも1口飲んで
「ならランドールは帝王親子とシクリーニ侯爵家が協力して世界を取ろうとして、パールド王国は第2王子が主体で世界を取るためにそれぞれまず、ランドールを押さえようとしているのか?」
「ん~そこはちょっち違うよ~
シクリーニ侯爵家が帝国乗っ取ろうと無能の
帝王はエレアナのお陰で侯爵家の企みに気づけて逆に侯爵家を使い世界取ったれー! みたいにやっほやっほして手の上ころころされてるよー
ほんで、パールド王国の第2王子が隙をついて帝国取るために、“ランドール共闘乗ったふり作戦” で帝国の力を分散させきった所に攻め入ろうと虎視眈々と狙って表向きいい子ちゃんしてまーす」
日本酒飲んでぷはーをする女神。話を聞いて上に向いて顔を押さえるシンヤ
「……何を考えてるんだ。1000年近く小競り合いがあっても平和な世界のせいで人間同士の戦いになってるとは……いっその事、手段は選ばずに不安分子を全て潰した方がいい気がしてくるな
所で、アルフィーナさん本当に酔ってないよな? 話し方が何時もよりもおかしいと思うぞ」
「酔ってないって~酷いしょ~
手当たり次第潰すのは止めた方が良いよ。
それこそ思うつぼになるわね、
復活した魔王軍 三大公魔爵の1人ザンバーガのね」
飲んでた日本酒を吹いて思わず立ち上がるシンヤ
「ブハァ?!……ザンバーガ?! あいつは魔王を倒す前に完全に死んだはずだ! しかも魔王の次に強く頭も切れる……でも、おかしいぞ復活してるなら気配で分かる筈……だが……まさか」
「ええ、恐らく靱君の考えてる通りね。
ザンバーガはカイルド帝国の地下に居るの
表向きは魔王の側近の1人が地下に封印されている。
実際は魂のみ移して1000年の時をかけて体を再生していた。
本当ならあの時死んでたはずだったの。この頃からハゲのいらん事の影響が出ていたみたいで……
カイルド帝国は元神殿跡地に建てられた。靱君達も知らない地下室があってそこに転移してたのよ
ぬかったわ。魔王を倒したと私も完全に油断していた。封印された呈にすれば気配も隠せるもの
しかもクソハゲのせいで魔王を倒してから1000年以上、私も干渉出来なくて何とかこの時代に靱君を慌てて送ったの。
尤も異変に気付いたのは、集団召喚してくれたお陰だけどね」
シンヤはゆっくり座ると日本酒を一気にあおった
「……でも、あいつが裏で動いているなら合点が行くな。1000年前より慎重に動いてるだろう
アリュード殿下の事も母親が亡くなる前にトールベン殿達にお願いしたのも、母親が薄々気付いてたのかもな。
ザンバーガは恐らく今の所、様子見と言う事か
まてよ、なら彼奴は俺の事に気付いてるのか?」
「アリュード君の母親は生まれて素質が[勇者]と知って勘が働いたのね。
わざと無能の素質を帝王に伝えザンバーガの目を欺いたのは凄いわね
アリュード君が勇者と知ったのは砦に行った後だもの
靱君については気づいてないわ。ザンバーガの力が及ぶのは帝国の城下町辺りまででしょうね」
日本酒を同時に飲む2人
「あれ? 何で集団召喚させたんだ……女神の存在は知ってたのに、こんなことしてばれないと思ったのか?
まてよ……なぁ魔王に関して何かカラクリでもあるのか」
「……そうね、靱君は知る権利がある。お話します
この世界の魔王は本来この世界には居ない存在でした。
あらゆる世界の歪みに負の感情、即ち闇に関わる精神・物質が固まり変異して実体化して生まれたのが魔王です
魔王が隙をついてこの世界に来ました。自分の望む世界にするためにです
そこで、本来は戦いを好まない魔族に無理やり力を与えて操り世界を思うままにしようとしました
それは、戦いを好まない性格でも属性が近く操り易かったからでしょう
魔王は別世界から来た影響かこの世界の人達ではダメージすら与える事は出来なかった
そこで、魔王を倒せる力を秘めた靱君達を召喚してこの世界では倒して貰いました」
姿勢を正して真面目な状態で話をする女神
「この世界だと? その言い方だと別の所で生きてる……まさか?!」
「はい、生きてると言うのはおかしいかも知れません。
概念と言えば良いのかこの世界の外で存在しています。
余りにも根強く完全に消滅するのにとても長い時間が掛かるからです
恐らくザンバーガは魔王から聞いたと思われます。だから、魔王復活を目論んだのでしょう
その為に別世界の者が必要で強さは関係なく[勇者]の素質を持つ人間が必要なのです
秋多君が骨抜きにされてるのも、少しでも邪な存在にするためです。
他の召喚者は復活した魔王の力を取り戻す為の生け贄かなのかは分かりませんが」
話を聞いて考えるシンヤ
「迂闊に俺が近付いて彼奴にばれるのは避けたいが、時間を掛けると魔王が復活する……ん? 魔王は別世界に居るよな。其方でどうにか出来ないか?」
「迂闊に刺激を与えるとまた意思を持って動くので、下手に手が出せません。
それに、まだこの世界と1本の線が繫がっています。切ることが出来ない上に刺激を与えるとザンバーガに気付かれます
魔王復活を早められたら不完全ながらも脅威になります
聖剣も[神聖魔法]も持たない今のアリュード君では太刀打ち出来ません
前にも話しましたが、私達 神が直接 世界に手を出すと、世界そのものが力に耐えられなくて滅んでしまいます
それなのに……あのクソハゲがぁ!……コホン、失礼しました。ごめんなさい」
頭をガシガシ掻くシンヤ。酒瓶に残っている日本酒を一気にあおる
「やる事は山積みだが、1度は平和にした世界だからな。出来ることはしていきますよ。
それで、アリュード殿下以外に協力して貰える人は居ないのか?」
「そうね、1人はエルフの子ね。靱君達が助けたあの女の子よ」
「へっ? ちょっと待て、幾らエルフが長寿だとしても1000年以上生きてる訳がない。
せいぜい300~400年ぐらいだ」
驚くシンヤに新しい日本酒を出しながら
「普通はね。覚えてないかしら、あの子は魔王軍の実験の副作用で外見は年を取らなくなり普通のエルフの何倍も生きる事になったでしょ
今は代々のエルフの長について補佐をしているわよ」
「思い出した。確かに協力してくれそうだが、覚えているのか? 場所も遠いから時間を作って会いに行くか。それで、他に居るのか?」
「後、1人は魔界を治めている現魔王ね。
魔王とは言っても名ばかりよ、名称みたいなものかしらね
三大公で唯一穏健派で平和主義だった彼の派閥で生き残った魔族がずっと治めてるの
まあ、すこーし問題抱えてるから解決してあげたら協力してくれるわよ。
私が言えるのはその2人ね。後は靱君がこれは?! って人を味方にしてね」
そこで座ったままだが背筋を伸ばし頭を下げる女神
「本当に、私が不甲斐ないばかりに迷惑掛けてごめんなさい」
「頭を上げて欲しい、全てが貴女のせいではないでしょう
それに、魔王討伐を引き受けたときから覚悟は決めている、それは今も変わらない
あの時と俺も魔王側も状況が違うが、やれることをやっていくだけだ。任せろ」
「うんうん、それでこそ靱君しょ~頼りにしてるかんね。
この時間はここでリフレッシュしていくんよ」
何時もの調子に戻った女神と、気になる事などを話しながら目が覚めるまで日本酒を飲み明かす2人だった
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