第50話 一戦
ハルバードを構えたトールベンの前にある人物が颯爽と立ち塞がった
「お久し振りですね。トールベン様」
「おお、エヴィリーナ嬢か。無事、元に戻ったようで何よりじゃ」
マントをスカートの代わりにして微笑みながら綺麗なカーテシーをするエヴィリーナ
僅かに笑い構えを解くトールベン
「……はい、此方に居られますシンヤさんのご助力のおかげです。
私から1つお尋ねしたいのですがよろしいでしょうか?」
「ふむ、余り時間はないが何かの?」
エヴィリーナは“ありがとうございます”と頭を下げて
「私共はアリュード殿下に呼ばれてここに来ました。
何故この様な決闘を為さるのですか?」
「……すまぬが今はそれには答えられぬ。
全ては、シンヤ殿と一戦交えた後にお答えしよう」
微笑みから真顔に戻り一歩詰めようとしたエヴィリーナの肩を後ろから抑えるシンヤ
「これ以上は押し問答していてもしょうがない。手合わせすれば良いだろう」
「し、しかしあのトールベン様は最強の騎士に送られる“剣帝”の称号を持つ名実共にカイルド帝国最強の騎士です!」
シンヤに振り返り慌てる様に説明するエヴィリーナだが
「まぁ大丈夫だろう。それに戦わない事には先に進みそうにないしな。後は任せろ」
まだ何か言いたげなエヴィリーナを下げて刀を抜いてトールベンと向き合う
トールベンは1つ頷くと真剣な表情になりハルバードを構えた
「此方からお願いした一戦じゃからな。最初の一手はお譲りいたそう」
「では、行かせて貰いましょうか」
(カウンターの構え……それに……)
姿が消えたシンヤ。常人には捉えられない速さで廻りを囲んでいる騎士達からどよめきが起きる
ユイナ達はシンヤの勝ちを確信したが次の瞬間
刀とハルバードがぶつかり合う激しい金属音が辺りに響き渡った
トールベンは確実にハルバードでシンヤの攻撃を受け切ると、シンヤは元の場所に姿を表した
ユイナ達は今までシンヤが一撃で敵を倒しているので全ての攻撃を受け止められた事に呆然とし
騎士達はトールベンとここまでやり合うシンヤに唖然としていた
「よもやこれ程までに速いとは……一太刀も油断出来なんだ」
「其方こそハルバードの腕もそうだが、かなり優れた【空間把握】スキルの使い手だな。派生したスキルも持っているみたいだが」
スキルを言い当てられ驚きで目を見開くトールベン。それは、エヴィリーナとダーネルも同じで
「【空間把握】?! 自身の一定の空間の全ての動きを捉えてあらゆる攻撃を無効化するあの?!」
「そのスキル使える奴いねぇはずじゃなかったか?! いや、目の前に居るのか……」
「たった1回で見破られるとはのぅ」
(しかも、派生したと言ったかの【空間把握】だけではあらゆる攻撃を捉えるだけじゃ。
無効にするためのスキルも知っておるのか……)
それぞれ驚く3人だが、ユイナ達や騎士達は今だ驚きの余り声が出せないでいた
「【空間把握】のスキルも完璧じゃない。破る方法はある
同じ【空間把握】のスキルをぶつけるか把握出来ない速さで動くなど色々と方法はある
俺も【空間把握】のスキルは持っているからぶつけてもいいが……今の斬り合いでは使っていない」
シンヤのスキルを持っている発言で更に廻りが驚くが、シンヤはポケットから何かを取り出しトールベンに投げた
受け取ったトールベンは驚愕の表情になり完全に動きを止めた
シンヤが投げた物はトールベンが腰の後ろに付けていた短剣だった。
「……ククク……ハァハッハッハッハッ!! なるほどのぅ よくわかったわぃ」
「なら、これで終わりですか?」
突然、豪快に笑いだすトールベンにシンヤ以外が驚くが
「本来ならこれで終わりだが、是非最後までお付き合い願いたい! 久しぶりに本気で打ち合える相手に出会えた!」
「……ああ、なるほど」
(ずっと本気で打ち合える人間が居なかったのか……話だけ聞くと戦闘狂みたいだけど、この時代に飛ばされて何となく分からないでもないな)
嬉しそうにハルバードを構えるトールベンを見て一瞬苦笑いになるシンヤだが直ぐ顔を引き締めた
「次が最後にしましょう。それと、この距離だと皆が巻き添えを食らう可能性がある離れた方が良いでしょう。
と、言う訳でユイナさん達もかなり離れてくれ」
「おお、確かに。わしと為たことが、皆の者良いと言うまで離れい」
トールベンの指示で離れる騎士達とシンヤの指定した場所に離れるユイナ達
「では、次はトールベン殿からどうぞ」
「かたじけない。では、行くぞ!!」
(【空間把握(EX)】 【空間操作(大)】 【集中】 【断絶】 風魔法[
トールベンの廻りの空気が変化していきユイナ達が固唾を飲む中、ハルバードを上段に構えて
「 嵐空舞 」
ハルバードを振り下ろした瞬間、空気が震え 空間を切り裂きながら辺りに突風が吹き荒れた
思わず目を瞑り顔を背けるユイナ達
シンヤは刀で荒れ狂う見えない空間の刃を全て斬り落としながら、廻りに被害が出ないように突風から暴風になり掛かっていた風も全てを切り裂いて行く
全てが収まりユイナ達が目を開くと
シンヤの刀がトールベンの首筋に当てられていた
「参った、降参じゃ。 わしの完璧な負けだな」
「……はぁ、自分でも制御出来ない技を無闇に使うな。
俺がどうにかすると思ったのか知らないが、あんた騎士達のトップでしょうが」
何処か嬉しそうに負けを認めるトールベンにあきれ顔を見せながら刀を離すシンヤ
「う、うむ……初めて使った技でな。わしもまさかあそこまでなるとは思わなくてな……すまん、次からは気を付けるわい」
シンヤに若干、睨まれてしょぼんとした顔になるトールベン
そんな2人のやり取りを離れた位置で呆然と見るユイナ達と騎士達
そんな中、砦の門が突然開いて
「アッハッハッ! 凄いねぇ、トールベンをこうも簡単に倒しちゃうなんてねぇ! アッハッハッ!」
笑いながら表れたのは茶色に青色の瞳をした青年
両脇に際どい衣装を着た金髪のエルフ美女と、青色の髪をした人間の美女を侍らせて、それぞれの腰に手を回している
そして、トールベンを含め騎士達が臣下の礼を取った
「あっ僕、アリュードだよ~宜しくね!」
ニマニマした笑みを浮かべて挨拶をするアリュード・マイン・カイルド第1皇子であった
廻りの騎士に続いて臣下の礼を取るシンヤ達は
「お初にお目に掛かります。シンヤと申します。
後ろに居るのは仲間たちです」
うんうんと嬉しそうに頷くアリュード
因みに顔を伏せているのでアリュードからは見えないが、無表情だが “嫌だなこいつ” の雰囲気を出すユイナと凄い嫌そうな顔をしている ヒカリ リリィであった
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