第48話 野営
ランドールを出て魔徒の森に向かう途中
「そう言やぁ俺はあんたらの事をどう呼んだらいいんだ?」
シンヤ達4人に向けて聞くダーネル。全員が足を止める
「確かに、お互いの名前は知っているけど呼び方か。俺は好きに呼んで貰って良いけどな」
「そうですね。私の事はユイナで構いません。私は皆さんにさん付けで呼ばせて貰っています」
「私もリリィで呼んでください。」
「私もヒカリで良いですよ」
「りょーかい、俺の事もダーネルでいいから。好きに呼んでくれや。」
「私の事もエヴィリーナとお呼びくださいね。」
それぞれの呼び方を話して魔徒の森に向けて歩き出した。
歩きながらこう呼ぼうなどの話で盛り上がっていた
「所で、この中で最年長はシンヤの旦那か?」
「そうなるのかな。42歳だしな」
思わず足が止まるダーネルとエヴィリーナ
「「よんじゅうにぃぃぃ?!」」
同時にシンヤの顔を見て驚きの声を上げる2人
「えぇ~?! とてもそうは見えません?! わ、わか、若すぎません?!」
「いや、マジか……俺と同い年か少し上かと思ってたわ。因みに俺は22だから20も上か……」
「あっ、ごめんなさい。驚きの余り変な事を申しました。私は17歳です」
「確かに、シンヤさんの年齢を聞いたら驚きますよね。それと、私も17歳です」
「うんうん、シンヤさんの歳を知った時の衝撃はね~ 私はユイナちゃんと同じ年の生まれだけど、まだ誕生日来てないから16歳です」
「やっぱり、そうなるんですね。私は、18歳です」
そのままの流れで皆が年齢を話すと
「うん、まぁ、そう言う年齢だけどあんまり気にしないで接してくれ」
言われて頷くダーネルとエヴィリーナ
その後は、魔徒の森に入りヴァリアント砦に向けて進んでいた。
ヴァリアント砦に行く道はある程度整えられているので歩きやすい
先頭をシンヤが歩いて続いてユイナとエヴィリーナ
真ん中をヒカリとリリィ
殿をダーネルが務めている。そのダーネルに
「あの、ダーネルさん荷物は私が持ちますよ。私は荷物持ちも兼ねてますから」
「いんや、気にしなくて良いぞ。マジック袋に入ってんだから大したこともねぇからよ」
申し訳無さそうに言うリリィに右手を振りながら応えるダーネル
「1つ気になったんですが、後ろはエヴィリーナさんで前の方にダーネルさんが行かなくていいんですか?
盗賊なら敵発見とか罠発見とかしないんですか?」
気になり聞くヒカリにダーネルは苦笑いを浮かべながら
「まぁ、魔徒の森なら罠は気にしなくてもいいが、魔物を早めに見つけるのに本来ならそうなんだけどよ
シンヤの旦那の探知と言うか察知のスキルに能力がおかしな位すげぇから俺の出番はないのよ……いゃ、ほんとおかしくねぇか。なんで、あの距離から分かるんだよ」
ヒカリとリリィは顔を見合わせて何とも言えない顔になる
「だからユイナさんにエヴィリーナさんがついて実戦の経験を積むのね」
ユイナ達を見るリリィ。
シンヤがゴブリンの接近を2人に話して戦闘態勢に入っていた
「後、1分ぐらいで30m前の茂みからゴブリンが5体出てくる」
シンヤが言うと同時に前に出るユイナとエヴィリーナ
ユイナは本で『武器の基礎 取り扱いと種類』を読んで自分が使えるスキルを身に付けていた
その為、短剣は補助でメインとなる武器を背中から外して構える
構えた武器は 薙刀
スキル【薙刀基礎】 【薙刀向上(小)】 を身に付けていた
身に付けた時は “なんで薙刀?” となり慌てながらシンヤに確認していたユイナ
前に居た時代で薙刀の元になる武器は作っていたシンヤはユイナに説明をしてバルボッサ商会にユイナと共に買いに行った
尤も前の時から1000年以上経っていて当時でも余り使う人が居なかったので、この時代にあるか不安になっていたシンヤだったが
数は少ないが何本かありユイナにあう薙刀を選んで購入したシンヤだった
薙刀を構えて持った感触を確かめるユイナ
(何回か練習で持ちましたが、とてもしっくり来ます。これがスキルの力)
「来ますよ。ユイナさん」
エヴィリーナの声で前を見るユイナ。
5体のゴブリンが表れた。それぞれ短剣と棍棒を持っている
「すぅーーはぁーー 」
(大丈夫、落ち着いて……薙刀のスキル以外に【身体向上(小)】 【集中】 もある。
今は、4つのみそれでも、スキルが全く無かった頃とは違う。)
深呼吸をして中段の構えで薙刀を構える。自分でも驚くほどスムーズに動けていた
最初に動いたのはゴブリン達
3体のゴブリンが襲い掛かったが、ユイナは足に力を込めて前に駆け出した
そして薙刀を薙ぎ払いまずゴブリン2体の首を刎ねる
後ろに続いていたゴブリンの頭を突いて倒した
残り2体は左右に分かれて向かってきた
ユイナの右から来るゴブリンは棍棒を振り下ろしてきたが、下から石突をすくい上げて弾く
そして、柄の部分でゴブリンの体を右から叩き付けて、左から襲い掛かって来ているゴブリンにぶつけた
ぶつかりバランスを崩して倒れるゴブリン2体に薙刀を全力で振るい胴体を上下真っ二つした
「はっ、はっ、はっ、ふぅー……倒せた?」
息を整えて前を見てポツリと呟くユイナ。
後ろを振り返りエヴィリーナの顔を見ると微笑んで頷いた
「凄い! ユイナちゃんあっという間に5体も倒したなんて! 強くなったよね」
「確かに、スキルを覚えたのもあるけど俺が言った基礎の訓練も毎日欠かさず熟していた成果だな」
(まさか、この短期間でここまで向上するとは。
最初は2体倒すのに精一杯だったのが、1人で5体倒してもまだ余裕がありそうだな)
褒められて無表情でも頬が赤くなるユイナ。恥ずかしさを誤魔化す為か討伐部位を切り落としていた
その後は昼休憩を挟みローウルフに出くわしたが順調に進んだ
ローウルフは3体だったが、素速い動きに若干振り回されそうになるユイナだったが、エヴィリーナのサポートで難なく倒していた
その日の夜
道から少し外れて森の奥に入ると近くに川がある場所があり、そこで野営の準備をするシンヤ達
テントを張ったりその廻りに魔物を寄せ付けない魔導具を設置したりローウルフの解体など
ここに来るまでにかなり打ち解けた面々は和気藹々としていた
「この調理魔導具はほんと凄いですね! 」
嬉しそうに料理をするリリィ。
他の女性陣が手伝おうと為たが “これが私の役目だから” とテキパキする姿を見て “あっこれ邪魔になる” と感じて違う事をする3人であった
「ほんといた至れり尽くせりの用意をしてくれて逆に悪くなるな」
「ん~いいんじゃねぇの? 俺が言うのも何だけど、それだけの事をシンヤの旦那はしたんだからさ」
用意して貰った野営の道具の数々を見て言うシンヤとダーネル
「晩御飯の用意出来ましたよー」
リリィの掛け声で集まる5人。簡易の机と椅子が設置されている
机の上には
ローウルフのステーキとリンゴソース
香草に薬草や色々の乾燥野菜の入った野菜スープ
コッペパン デザートの果物類
が並んでいる
「……美味しそう」
生唾飲み込みながら言うヒカリ同時にお腹も鳴って顔が真っ赤になって下を向いた
シンヤが席に座るよう促して皆座った所で
「「「「「「いただきます」」」」」」
手を合わせたり合わせなかったりしながらも食べ始める
「このステーキにソース美味しいよ~」
「ステーキもですがスープも美味しいです」
ヒカリに頷きながら言うユイナ
「確かに……美味いけど野営で作れる美味さじゃねえな、これ……」
「野営でこれ程の料理が食べられるとは、ありがとうリリィさん
(俺が前の時代で作った時はゴブリンの生肉を食った方がましと言われたからな……凄いな)」
「途中で採取した薬草等も使ってますね。美味しいです」
「……私に出来るのはこれぐらいですので、喜んで貰えて良かったです」
皆から褒められて恥ずかしくも嬉しそうにするリリィであった
あっという間に食べ終えるシンヤ達
片付けは手伝おうと為たがリリィが断り全て片付けたのだった
その後は魔導具を使いお湯を沸かして体を拭いて綺麗にする6人
「魔導具で光は確保出来ているのと魔物除けの魔導具も強力だから見張りは大丈夫だろう。
そらそろテントで寝るか」
頷く5人。男と女で別れてテントに入った
「今日はユイナちゃんは腕を上げてて凄かったし、リリィさんの料理は凄く美味しかったね」
「私はシンヤさんのおかげですから。それに、そばでエヴィリーナさんが、見てくれていましたから」
「料理を気に入って貰えて良かったわ」
「私は殆ど戦いではそばに居ただけですので、全部ユイナさんの努力の賜物ですよ」
今日の戦闘の話から料理の話しまで色々と話している内にあっという間に夜が更けて行くのだった
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