第44話 壊滅


リディーナはダーネルを睨み付けて、ユイナ達3人はシンヤとダーネルの顔を交互に見ている



「彼は、元クランメンバーだが、彼奴らとは違う

 普通の冒険者。

 本人が実力を高めるのに偶々選んだのがあのクランだっただけだよ。

 それと、彼には手伝って貰うことがあるので強引に連れてきたんだ」



 シンヤの話を聞いて表情が和らぐリディーナと納得したような顔になるユイナ達3人

 ダーネルの猿轡を外すシンヤ



「俺は殺されないよな? な?! 出来ることは手伝うからさ頼む!」



 猿轡が、外れたら殺されないよう懇願するダーネル。

 その必死な姿に思わずリディーナ達がシンヤの顔を見た



「まあ、怖がらせないように一瞬で縛って連れて来たけど……冒険者と言えど普通に怖いよな」



「確かにいきなり連れ去られたのは驚いたけど、俺が怖ぇのはあんたの強さだよ!

 あんたが倒したAクラスの奴らの中にはS級に近いのも居たんだよ!

 其奴らをどう倒したかもわかんねぇ速さで、しかも一太刀で倒してよ

 そんな化け物に俺が勝てるわけねぇだろう!!」



 リディーナが“まぁ、確かに”と凄く納得してユイナ達3人はそれぞれ顔を見てエヴィリーナは控えめに全員の顔を見ていた



「そう……だな、うん。で、彼をここに連れてきた話の前にエヴィリーナさんだっけ? 調子はどうかな?」



 苦笑いになって話したシンヤは笑みが微笑みになりながらエヴィリーナに聞くと肩がビクッとなり顔を伏せる

 話そうとして顔を上げたり下げたりするエヴィリーナの右肩にそっと手を置くリディーナ

 顔を上げたエヴィリーナはリディーナの顔を見ると、リディーナは微笑みながら頷いた。

 

 エヴィリーナは席を立って思いっ切り頭を下げた



「あの……皆様、私の為に大変なご迷惑をお掛けしました。申し訳ありませんでした!

 それと、私の体は大丈夫です。ありがとうございます。私は大丈夫ですので、先にお話をして下さい」



 そしてシンヤの顔を見るエヴィリーナ。姉と同じ銀色の瞳をしたエヴィリーナの目が合い頷いたシンヤ



「【常世ヘブンズ闇牙ブラッティ】の事だが俺の手で壊滅させたのを知られたくない

 クランを名乗っているが犯罪者集団だからな。

 壊滅させたのは問題はないと思うが、俺は目立ちたくはない

 幸い俺達の姿は見られてないからどうとでもなる。そこで、彼……ダーネルに動いて貰おうと思う」



「……俺にギルドへ嘘の報告をしろって事だな」



 シンヤの意図をくみ取り言うダーネル。

 先程までの混乱は落ち着いて引き締めた顔をしているが、今だぐるぐる巻きにされて寝転がされている

 頷くシンヤに



「あの……本当にこの人を信用して大丈夫でしょうか? それに、リディーナさんとエヴィリーナさんも……私が言うのも何ですが……」



「リリィさんにも色々と思う事はあるだろう。

 完全に信用してくれと言えないし、貴女の思いが俺には全ては分かるとは言えない。

 思う事に気持ちは後で聞くよ

 だから、今は信じてほしい。お願いします」



 頭を下げるシンヤ。



「……ごめんなさい。大丈夫です。シンヤさんのお考えは分かりました。」



「リリィさんごめんなさい。私達は出来ることはさせて頂きます。今は、シンヤさんの話を聞きましょう」



「ありがとうございます。話は単純です。【常世ヘブンズ闇牙ブラッティ】は彼方此方から恨みを買って突然襲撃にあい拠点にいた連中は全滅

 そこへ、戻って来たダーネルさんがたまたま生き残っていたエヴィリーナさんを連れてギルドに報告

 ダーネルさんとエヴィリーナさんはリディーナさん預かりになるって所かな」



 シンヤの話を聞いてから



「だがよ、俺が裏切るとは思わないのか?」



「まあ、裏切ったら色々な所に話しがいくだけ出し……裏切るのか?」



 シンヤに笑いかけられて激しく首を横に振るダーネル。

 


「裏切らないから! それに、俺も安全に冒険者が続けられそうだしな! (これ、裏切ったら俺命なさそう……)」



「もう少しだけ細かく詰めようか」



 言いながらダーネルを縛っていたロープを切るシンヤ

 立ち上がったダーネルは肩を回して固まった体を解す

 そしてそれぞれが席に座りこれからについて話をした




 それから30分後中立都市ランドールを揺るがす事件が起こった



常世ヘブンズ闇牙ブラッティ】の壊滅



 S級クランでもあったため、壊滅は都市の住民は驚いたが、数多くの悪評が広まっていたので、殆どの意見が“こうなって当然”や“いつかなると思っていた”などだった

 ただ、裏で繫がっていた商会など1部の人間は証拠隠滅に躍起になっていた




 カイルド帝国のある場所にて



「……そうか、死んだか」



「はい、遺体は引き取りますか?」



「いや、必要ない。表向きは追放しているから我が侯爵家には関係ない事だ。迂闊に動く必要はない。

 どのみち繫がりとなるものは、あれ以外はないからな」



 執務室にて屋敷の主と執事らしき人間が話している



「畏まりました。その様に致します」



「しかし誰がやったのか……あの役にもたたんゴミでも一応古代の防御魔導具と腕の立つ暗殺者を多数つけていたが全滅させるとは

 ギルド長を意のままに操れる様になったと言うのに、暫し静観するしかないか」



 息子が死んだ事には、そこら辺のゴミがなくなった位の表情だったが、ギルドを操れなくなった事には苦虫をかみ潰した表情になる



「実は、壊滅する前に3人の女性冒険者を攫っていたそうです。

 ですが、ギルドの調査ではクランの者以外は居なかったそうです」



「……ほう」



 執事の報告を聞いて机の上に肘をつき何かを思案する男

 何か思い付いたのか執事に指示を出す男であった







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