第38話 おとり



 ギルドを出るといつものでなく、反対のに向けて歩くシンヤ

 ここランドールはカイルド帝国側を カイゼン地区 パールド王国側が ホールド地区 と呼ばれている


 ホールド地区もギルドから大通りが門まで通っており冒険者が主に住んでいる地区になる


 大通りを中程まで進んだ時シンヤを全ての道を塞ぐように冒険者が取り囲んだ



「(ふむ……23人ぐらいか。ギルドの話ではこれのクランは46人

 しかしまぁ堂々と来たな。配置から見て俺の逃げ道を塞いだつもりか?

 騒ぎを起こしても問題ないのか、もみ消せるのか……)」



 周りを見てそんな事を考えているとグレートソードを背負った一際 背が高く体格の良い男が前に出て来た

 シンヤを見下した目で見て



「貴様がシンヤだな」



「そうだが、お前は誰だ?」



頬が、一瞬ひくついた男は



「……俺は【常世ヘブンズ闇牙ブラッティ】副リーダーAランク冒険者ゴーランだ」



「それで、副リーダーが何の用だ。仲間がやられたから仕返しに来たのか? なら随分暇人なんだな」

 


「貴様は自分の立場が分かってないようだな。

 ゴブリンロードを倒したとほざいて居るが大方、横取りでもしたのだろう

 ただこちらのBランク冒険者を倒したらしいからわざわざ俺が出向いてやったのだ

 貴様の立場を分からせるためにな」



 シンヤの態度を見て更に顔を引き攣りそうになるゴーラン

 


「はぁ……くだらんな。来るならさっさと来い

 (俺がロード達を倒したと知っているのか。

 まぁ、俺が倒したと思ってなさそうだが

 あの中にBランク居たのか……)」



「クソゴミがぁ! 舐めた態度を俺に取ったこと後悔させてやる!」



 沸点が低いのか怒鳴り声を上げてグレートソードを構えるゴーラン


 周りのメンバーが「ゴーランさんやっちまぇ!」や「あいつ死んだな」等はやし立てる



「俺には速さを上げる【急速】と【視力向上(中)】がある。

 貴様がどんなに速くて……げぼぁ!!」



「前口上が長い、動きが遅い、隙だらけ……よくそれでAランクになれるな 

 (このクランは戦闘始まってもベラベラ話さないと気が済まないのか?)」



 を右手に持ち肩に担いでいるシンヤ

 壁に激突して白目を剝いてるゴーランを見ながら言うと


 「何が起きた?」「あいつゴーランさんのグレートソード持ってる?!」

 

 何が起きたか理解が追い着かず体が固まるメンバーと驚きの声を上げるメンバー

 メンバーの前から姿が消えたシンヤ



「「「「「「……はっ?」」」」」」



「「「「がっ?!」」」」



 声の方に向くとシンヤの後ろを塞ぐように立っていたメンバー8人の内4人が地面に倒れていた

 4人の後ろに立っているシンヤ

 残りのクランメンバーは得たいの知れない恐怖をシンヤに感じた



「一応全員生きている……で、次はどいつだ?」



 グレートソードを片手で軽々と振り抜き残りのメンバーを静かに見る



「ひ、ヒイィィィィィ! バケモンだー!」



 叫び声を皮切りに残りのメンバーは逃げ出した。

 倒れているメンバーはゴーラン含めて全て引き摺られていた

 見ていたシンヤは徐にグレートソードを投げつける

 すると、逃げるメンバーの目の前の地面に突き刺さった

 悲鳴を上げるメンバーは引き抜いて逃げて行った

 

 ある程度逃げるのを見届けてギルドに向け走り出すシンヤ


 

「(……俺達の事を色々と知っていた。狙いは俺を潰すのと彼女たちか)」



 ギルドに着くと中に入り資料室の扉を開けた

 だが、誰一人居なかった。

 あるのは読みかけの本と下に落ちていた数冊の本


 部屋を出たシンヤはエリナに声を掛けた



「あら、シンヤさんお帰りなさい」



「ただいまエリナさん。リディーナさんに会いたいんだけど会えますか?」



 笑顔のエリナに何時もの表情で話すシンヤ



「リディーナさんですか? 今は執務室に居ますけど、忙しいそうで夜まで手が離せないそうです」



「そうですか、分かりました。ありがとうございます」



 お礼を言って資料室に戻るシンヤ



「(彼女たちの場所はだいたい分かっている。

 念の為に“御守り”も身に付けているから今すぐ危害は加えられない

 助けに行く前に会いに行く必要があるな

 この短時間で連れ去るには表からでは目立つ……なら隠し通路みたいな物があるはず)」



 考えてスキル【索敵(EX)】【探索(EX)】を発動させる

 そして、奥の壁の真ん中に置いてある本棚の前に立つと



「……此方からは動かせないか。緊急事態だ、後で弁償するか」



 本棚の横を持つと【消音】のスキルを発動させて力任せに壁から引き剥がすと下に降りる階段が姿を表した。

 


「さて、何処に繫がっているのか」



 階段を降りるシンヤである




 その頃、ギルド長執務室で書類を書いているリディーナ


 突然、壁に立っている本棚が静かに横に動いた。

 驚いて椅子から立ち上がり穴が空いた壁をみるリディーナ



「ここにも繫がっていたんだな」



 穴の奥から聞こえた声に思わず肩がビクッと震えるリディーナ



「余り時間はないが、色々と聞かせて貰おうか。リディーナギルド長」



 刀を右手に持ったシンヤが穴から出て来たのを見て緊張した面持ちになるリディーナであった







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