第36話 スキル基礎



 リディーナとエリナが戻って来るのを待ってる間



「ランク上げと報酬振り分けが終わったら昼食にしようと思うけど良いかな?」



 3人に聞くシンヤ。少し3人で話して



「はい、大丈夫です。ご飯を食べに行きましょう。

 行くのはギルド内にある食堂ですか?」



「そのつもりだよ。

 食堂には、朝絡んで来た連中は気配はないね。

 でも、余り良い気配は感じないからね

 食べに行こうと言ったけど、可能なら俺が買いに行って持ち帰り出来たらそうしたいな」



 ユイナが3人で話した内容を伝えた。

 聞いたシンヤは頷きながら話すと3人はお互いの顔を見た



「先ずは資料室で飲食して良いのか聞かないとね。

 駄目なら落ち着いて食べれるか確認して、無理なら外かな?」



「分かりました。それで行きましょう」



 リリィが答えるとノックの音が聞こえて扉が開いた。リディーナとエリナが入ってくる



「お待たせしました。プレートお返しします。

 確認をお願いします。今日は引き続き調べ物をするのですか?」



 それぞれプレートを受け取ると裏を確認する4人

 ランクはシンヤがCランク 3人がDランクとなっている

 振り分けられた報酬金も記載されている



「はい、そうです。昼食を取ってから調べたいと思います。

 資料室は引き続き使っても良いですか?」



「構いませんよ。昼食ならギルド2階に食堂があります。それと、全部ではありませんが、持ち帰りも出来ます。

 資料室は使う人が居ないのでそこで、食べて頂いても大丈夫ですよ」



 聞きたい事を教えて貰い頷くシンヤ。持ち帰り出来るメニューを聞くとリディーナに代わりエリナが教えた。

 受付嬢として受付から離れられない時があるので詳しいのか色々と教えて貰うシンヤ達

 注文するメニューが決まりシンヤは2階に、3人は資料室に戻る事に

 シンヤが2階に行く途中でリディーナが



「シンヤさん貴方なら大丈夫と思うが、2階には最近 昼間から【常世ヘブンズ闇牙ブラッティ】の連中がよくたむろしています。

 気を付けて下さい」


 

「分かりました。ありがとうございます」



 お礼を言って2階に上がるシンヤ。

 2階に、ある食堂兼居酒屋は大部分を占めているのでかなりの広さがある

隅と真ん中辺りに何グループに分かれて食事を取ったり酒を飲んでいた

 注文をするため受付の男性店員に声を掛ける



「……何する?」



「持ち帰りでお願いします。注文は……」



 40代ぐらいのがっちりとした体格のおっさんが無愛想に声を掛けてきた


 シンヤは特に気にした様子も無く注文をしていく

 店員の態度よりも席の真ん中で此方を見ているグループの視線と気配の方が気になっていた

 注文が終わり引き換えの札を貰い人の居ない席に座るシンヤ


 そこに酒を飲んで居たのか顔が赤く酒臭い息を吐きニヤニヤしながら剣士と思える男が近付いて来た。



「お前は1人か? 」



「そうだが、何かようか?」



「見かけない面だな。 余所から来たのか? それとも新参者かぁ?」



「言う必要はあるまい」



 ニヤニヤしていた顔がイラッとした表情になり


 

「おい、貴様は知らねぇだろうが俺達はS級クラン【常世ヘブンズ闇牙ブラッティ】の一員だ。

 俺達に逆らうとこの町で生きていけなくなるぞ

 それが嫌なら……」



「はぁ、知らんな。そんなクランなんぞ」



「てめぇ! ふざ……っ?!」



 呆れた顔になったシンヤにキレた男は腰の剣を抜こうとして固まった。

 シンヤが隣にあったイスの前脚を左手で摑んで、背もたれの角の所で剣の柄頭を抑えていた

 そして、静かに相手の目を見るシンヤ



(な……何だ か、体が動かねぇ……ど、ど、ど……)



 シンヤは“気力”にスキル【威圧】を載せて相手の目を見て動きを封じていた

 ある程度の実力者なら抜け出せるが、目の前の冷や汗をかき続ける男には出来なかった


 摑んでいるイスで剣ごと男を押すと後ろに倒れる男

 


「失せろ」



「ちっ……くそが!」



 言葉を吐き捨てて逃げるように自分の席に戻った男。

 最初は男と同じくニヤニヤして見ていた仲間達が、男が戻る頃には怪訝な顔をしていた



(1人で来て正解だったな。【常世ヘブンズ闇牙ブラッティ】何処にでも居るのか?

 しかし、これ位の小競り合いなら食堂もギルドも動かないか)



 など考えながら待って居た

 暫く待つと札の番号を呼ばれたので取りに行く

 店員に言われて冒険者プレートを見せると、料理の金額が書かれた紙を渡される

 不思議そうな顔になるシンヤに



「……1階の受付でプレートと紙を見せたら預け金から引かれる……やるな、兄ちゃん」



 言うと料理をシンヤに押し付けて俯く店員



「ありがとうございます」


  (彼も冒険者だな。それか元か……絡んで来た男より遙かに強いな

 そうでないとギルドの食堂 店員はやれないか)



 頭を下げて食堂を出て行くシンヤ

 その後から先ほど剣士の男が仲間の盗賊に声を掛けると盗賊はシンヤの後に付いて行った



(くそ野郎が! 何したか知らねぇが巫山戯た真似しやがって!

 ダーネルは俺と同じBランクの冒険者、あの野郎の後を付いて仲間に女を見つけたらクククッ

 色々と楽しんでやるよ)



 卑猥な笑いをする剣士の男。

 残った仲間は男が何を考えて居るのか分かったのかニタニタした笑みを浮かべた


 一方シンヤの後を付いて行ったダーネルは



(はぁ、めんどくさ……何でこんな事を……へっ?)



 階段を下りるシンヤにばれないように付いて行ったが、突然目の前が真っ暗になった思った瞬間に気を失った

 シンヤが顔を摑み意識を刈り取っていた



「……ばればれだな」

 


 ゆっくり下ろすとユイナ達が待つ資料室に向かうシンヤ

 資料室の扉をノックしてヒカリの声が聞こえたので中に入る



「待たせたね。少し時間が掛かってしまって」


 

 それぞれ注文した料理を置くシンヤ

 すると、ユイナは無表情ながらシンヤに聞きたそうな雰囲気をしていたので



「どうかしたの、ユイナさん?」



「その……本を読んでると書いてる事が最後まで読まなくても途中で分かったような感覚になりました。

 体にすっと入ると言いますか、そんな感じです」



 今までにない感覚で戸惑うユイナ。これがシンヤの言ってた事か分かって無かった



「それは、ほぼ間違いないね。スキルプレートを出して見れば分かるよ。

 確か、覚えたのと使えるので分かれて出るだろう」 



 頷いてスキルプレートを見るユイナ。

 目が少し開いて



「……スキル覚えました」



「本当に?! 良かったねユイナちゃん!」



 自分の事の様に驚いて笑うヒカリ

 リリィも料理から顔を上げて“おめでとう”と言っていた

 





リリィのプレートには


・学者


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 スキル(覚)       スキル(使)


 スキル基礎       スキル基礎


 集中          集中


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 と書いてあった

 本人のユイナは



(えっ? 本にはスキル基礎しか書いてなかったのに……何で、集中のスキルまで覚えたの?

 えっ?……は?……えっ?)



 プチ混乱中だった










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