第31話 絡まれた



 女神との会合があった翌日の朝、リリィがベッドの上で靱平シンヤに頭を下げていた



「シンヤさん、ごめんなさい。ベッドを独占してしまって。ご迷惑おかけしました」



 昨晩、シンヤに手を握って貰っていると安心出来たのか、そのままシンヤのベッドで寝てしまったリリィ

 シンヤは手を握ったままベッドに腰掛けて寝ていた

 シンヤより早く目を覚ましたリリィは、手の感触と目の前で座って寝ているシンヤの姿を見て、昨夜の事を思い出した。

 慌てて起き上がって手を離したリリィ。

 手が離れ目を覚ましたシンヤと、視線があって頭を下げた

 

 

「気にしなくて良いよ。眠れたのなら良かった。

 旅で良く座って寝ているので俺は問題ないよ」



「……はい、ありがとうございます。すみません、服を着替えて来ます」



 顔を赤く染めて頭を下げたまま部屋を出たリリィ。

 


「顔色は昨日より良かったな。少しは元気になったのならいいが……救出の協力者にヴァリアント砦のアリュード第1皇子か」

 (ジェイドへ報告行くとき、その時に会えないか聞いてみるか。

 もしかしたらアリュード第1皇子に話をするかも知れないな)

 


 女神の話を思い出しこれからの事を考えていると、外が騒がしい事に気付いた

 外から感じる気配によって【聴覚(EX)】のスキルで話を聞いたシンヤは外に出た



「あの……ですから、私には仲間が居ます。これから出ないと行けないので無理です」



「はっ! ここで泊まってるって事は金がねぇんだろ。

 その仲間が女なら一緒に可愛がってやるよ。男なら痛め見てもらうがな」



 リリィが複数の男達に囲まれていた。

 男達はニヤニヤ笑って居るが、リリィは顔を青くして必死に離れようとする。

 声を掛けている男が手を伸ばして摑もうとした

 


「久しぶりだな。彼女は俺達の仲間だが何かようか?」



「お、おまえぇ?! はっ? 仲間?! この女がお前の連れかぁ?!」



 リリィを囲んでいたのは昨日シンヤが倒した男達だった。

 シンヤの姿を見て顔が引き攣る男達

 リーダー格の斥候の男が



「ちっ、昨日たまたま俺達に勝ったからと言って、調子に乗るなよ」



「たまたまかどうか確認するのに、もう一度やり合うか?」

 (……そろそろか?)



 男達を睨み“気力”の圧を高めぶつけたシンヤ。

 目に見えない圧が男達に掛かり更に顔を引き攣らせるも、斥候の男が何か言おうとして



「お前達! 何をしている!」



「お、お前は……」



 そこに表れたのはギルド長リディーナである。

 主に男達を睨み付けていた。



「リディーナギルド長。彼等が俺達の仲間に執拗に絡んで居たので止めて貰うよう声を掛けていたんです」



「はぁ、お前達あれほどギルド内でも面倒ごとを起こすなと注意為たはずだ。

 幾ら【常世ヘブンズ闇牙ブラッティ】のクランと言えど限度があるぞ」



 リディーナとシンヤの両名に睨まれた男達は忌々しげに顔を歪めその場を離れた。



「ちっ、女のくせに」



 離れて階段に向かうとき斥候の男が忌々しくこぼした

 リディーナの耳にも聞こえたが、特に反応を示す事は無かったのでシンヤも黙っていた



「あの……ありがとうございました。シンヤさん、リディーナさん、迷惑ばかり掛けてごめんなさい」



「いや、気にしなくて良いよ。俺も、注意が足りなかった」

 (気配で男部屋に泊まって居るのは分かっていた。もっと注意をするべきだったな)



「シンヤさんの言う通りです。気にしないで下さい。昨日、注意するようお伝えするべきでした」



 少し顔が強張っているリリィが頭を下げると、笑顔を見せるシンヤと微笑むリディーナ

 すぐ真顔に戻るリディーナが



「彼等が所属するクラン【常世ヘブンズ闇牙ブラッティ】は最近Sランクになったクランです。

 ただ中身は、他で問題を起こした者やこのランドールのよく言って荒くれ者の集まりです」



「そんな……何でそんな人達がクランを出来るんですか?」



「それは……少し長くなりますが、話した方が良いですね。時間は大丈夫ですか?」


 

 聞かれてシンヤの顔を見るリリィ。

 シンヤは頷いて



「大丈夫です。今日は調べ物と買い物をする予定です。それよりリディーナさんは時間大丈夫ですか?」



「私も大丈夫です。でしたらユイナ結衣さんとヒカリ陽菜さんに戻るときに声を掛けて来ます」



 シンヤとリリィの話を聞いて頷いたリディーナは



「ありがとうございます、私も午前中は大丈夫です。では、ご用意が出来たら1階の受け付けに居るエリナに声を掛けて下さい。

 昨日、使った〔小会議室〕で話をしましょう

 でも、皆さん朝食は食べましたか?」



「俺は、お腹は減ってないので大丈夫ですね。」



「私も特にはお腹は空いてないです。ユイナさんとヒカリさんにも聞いておきますね」



 頷くシンヤとリディーナ。

 リディーナは下に降りて行くのを見届ける。

 そして、準備が出来たら階段の横にあるソファーに集合と話して、それぞれ部屋に戻った2人であった


 部屋に戻ったシンヤは軽くシャワーを浴びて身仕度を整えてソファーに行ったが、まだ来ていなかったので座って待つことにした


 その頃、リリィから話を聞いたユイナとヒカリは



「そんな事があったんですね。リリィさん大丈夫でしたか?」



「はい、直ぐにシンヤさんとリディーナさんに助けて頂きました。 心配かけてごめんなさい」

 (シンヤさんと手を繋いで寝たことは……1人で寝れなかったと思われるのも、恥ずかしく感じて来たので黙っててもいいよね)



「何とも無いのが1番です。無事で良かったです」



 ユイナとヒカリにシンヤと一緒に手を繋いで寝たことは、何だか恥ずかしさがこみ上げて来たので黙っていた



「それと、朝食ですね。そこまでお腹空いていませんし、お待たせするのも申し訳ありません。

 私は大丈夫ですね」



「うん、そうだね。早く準備して行かないとね 」    

 (どうしよう……お腹空いた何て言えないよ。後でご飯食べれるよね……)



「はい、分かりました。私も部屋に戻って用意してきますね」



 部屋に戻ったリリィ。

 

 ユイナとヒカリで話してシャワーだけでも浴びる話になった

 先にシャワー室に入るユイナ

 その間に服の着替えを用意して荷物を纏めながら“お腹空いたなー”と呟くヒカリであった






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